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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
米国の歳出削減に大鉈を振るう「DOGE(政府効率化省)」~減税政策に向けた本気度の表れか?~

 今週の日本株式市場は、こちらのレポートでも触れたように、「日米の企業決算」「トランプ関税の動向」「米国の経済指標」の三つをポイントに推移する展開となっています。

 そのうち、米国の経済指標については、12日(水)に米1月CPI(消費者物価指数)が発表され、その結果は足元でインフレが加速しつつあることをにおわせる結果となりました。

<図1>米CPI(消費者物価指数)の推移

米CPI(消費者物価指数)の推移
出所:米国労働省およびBloombergデータを元に作成

 上の図1は、米CPIの総合とコアの推移をそれぞれ、前年比と前月比で表したものです。

 一般的に、前年比は中期的な傾向、前月比は瞬間風速といったイメージで見ていくのですが、図の線の傾きを見ても分かるように、両者とも足元で上向きになっています。さらに、今回の結果が市場予想も上回っているため、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ見通しを後退させるものとなりました。

米国市場の下落が限定的だった理由

 米CPIを受けた米国市場は、米10年債利回りが上昇し、米株市場では、NYダウ(ダウ工業株30種平均)とS&P500種指数が下落する一方で、ナスダック総合指数は反発するという初期反応となりましたが、いずれも値動きはさほど大きくはなりませんでした。

<図2>2025年2月12日の米NYダウの1分足

2025年2月12日の米NYダウの1分足
出所:MARKETSPEED

 実際に上の図2で、この日のNYダウの値動きを確認すると、確かに、米CPIの結果を受けて取引が始まった直後は大きく下落したものの、その後は下げ幅を拡大することなく、持ち直している様子がうかがえます。

 このように、米国市場の反応が限定的だったのは、まだ、米1月PPI(生産者物価指数)や米1月小売売上高の公表待ちであることや、今週10日(月)に台湾の半導体受託製造大手のTSMCが発表した1月の売上高が好調だったことで、一部のテック株への買いが続いていたことなどが理由として挙げられます。

 それ以外にも、トランプ関税を巡る動きの様子見も影響していると思われます。

 足元では、「鉄鋼・アルミ製品への25%関税」と「相互関税の内容」が焦点となっていますが、前者については、関税の実施が表明されたものの、関税が発動される3月12日までに時間があり、米国と相手国との交渉次第では状況が変化するかもしれないこと、後者についても、13日(木)の夕方時点で詳細は明らかになっていませんが、自動車や薬品などで例外措置を検討しているとも報じられており、関税を材料に積極的に下値をトライできる状況ではないと考えられます。

 いずれにしても、足元の株式市場の堅調さは、先行き不透明感によって、「売りにも買いにも傾けられない」という相場地合いが反映されている面が強いと思われるため、目先の材料に反応して株価は上げ下げするものの、方向感は出ない展開がしばらく続くかもしれません。