※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
決算レポート:パランティア・テクノロジーズ(米軍向け、民間企業向けで重要な契約続く
決算レポート:ネットフリックス(広告事業を本格展開へ)
決算レポート:メタ・プラットフォームズ(AIアシスタント、AIエージェントに注力。今期設備投資は大幅増へ)

毎週月曜日午後掲載

本レポートに掲載した銘柄:パランティア・テクノロジーズ(PLTR、NASDAQ)ネットフリックス(NFLX、NASDAQ)メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ)

パランティア・テクノロジーズ

1.パランティア・テクノロジーズの2024年12月期4Qは、36.2%増収、83.3%営業減益

 パランティア・テクノロジーズ(以下パランティア)の2024年12月期4Q(2024年10-12月期、以下前4Q)は、売上高8.28億ドル(前年比36.2%増)、営業利益0.11億ドル(同83.3%減)となりました。大幅減益ですが、これは従業員に対するSAR(ストックアプリシエーションライト:インセンティブ報酬の一種で、権利を付与した時点での株価と権利行使時の株価の差額を、現金または株式で支給する)の付与にかかる費用1.31億ドルを前倒しで計上したためです。これがなければ営業利益は1.42億ドル(前年比2.15倍)、営業利益率は過去最高の17.1%で、前3Q比でも増収増益となっていたと試算されます。

 この結果、2024年12月期通期は、売上高28.66億ドル(同28.8%増)、営業利益3.10億ドル(同2.58倍)となりました。好業績でした。

表1 パランティア・テクノロジーズの業績

パランティア・テクノロジーズの業績
株価 110.85ドル(2025年2月7日)
時価総額 255,496百万ドル(2025年2月7日)
発行済株数 2,528.279百万株(完全希薄化後、Diluted)
発行済株数 2,304.883百万株(完全希薄化前、Basic)
単位:百万ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。
注3:会社予想は予想レンジの平均値。

2.前4Qは米軍向け、民間企業向けともに重要な契約が続いた

 売上高内訳を見ると、コマーシャル向け(民間企業向け)の中の米国向けが前3Q1.79億ドル(前年比54.3%増)から前4Q2.14億ドル(同63.4%増)へ順調に伸び、コマーシャル向けを牽引しました。

 また、政府向けの中で米国政府向けは前3Q3.20億ドル(同39.7%増)から前4Q3.43億ドル(同44.7%増)へ増加したほか、その他の政府向けも前3Q0.88億ドル(同11.4%増)から前4Q1.12億ドル(同28.7%増)へ増加しました。

 直近12カ月間の合計顧客数(TTM、Trailing Twelve Month)は前3Q末629件から前4Q末711件に増加しました。コマーシャル向けが大きく増加したほか、政府向けも堅調に増加しました。

 最も重要な顧客である米軍向けでは、前4Qに陸軍、空軍、宇宙軍で契約が続いているほか、宇宙軍、南軍、アフリカ軍、戦略軍の戦闘司令部と特殊作戦軍では契約の拡大がありました。政府向けの顧客当たり売上高は順調に増加しています。AIによるビッグデータ分析を使った意思決定支援システムが米軍向けの主力事業になっていると思われます。

 コマーシャル向けは顧客当たり売上高はまだ小さいですが、顧客と契約数が拡大しました。様々な業界の大手企業が顧客になっている模様です。決算電話会議で会社側から出てきた業種や会社名は、米国最大の薬局チェーンの一つ、米国の通信会社、世界有数の保険会社、パナソニック エナジー ノース アメリカ、Anduril、L3Harris、リオ・ティント、イギリスのNHS(National Health Service)関連の組織、トップクラスのエンジニアリング・建設会社などです。AIを使った意思決定支援システム、業務フローの改善、効率化に使うシステムなどを契約している模様です。

表2 パランティア・テクノロジーズ:売上高内訳

パランティア・テクノロジーズ:売上高内訳
単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成
注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

グラフ1 パランティア・テクノロジーズの顧客属性別売上高

パランティア・テクノロジーズの顧客属性別売上高
単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 パランティア・テクノロジーズ:直近12カ月間の顧客数

パランティア・テクノロジーズ:直近12カ月間の顧客数
単位:件、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ3 パランティア・テクノロジーズ:顧客当たり売上高

パランティア・テクノロジーズ:顧客当たり売上高
単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

3.楽天証券の2025年12月期、2026年12月期業績予想を下方修正するが、成長企業という評価は変えない

 今1Qの会社側売上高ガイダンスは、8.58~8.62億ドル、レンジ平均値8.60億ドル(前年比35.6%増)、2025年12月期通期売上高ガイダンスは、37.41~37.57億ドル、レンジ平均値37.49億ドル(同30.8%増)です。引き続き売上高の順調な伸びが予想されます。

 楽天証券では、2025年12月期を売上高38.00億ドル、営業利益6.90億ドル、2026年12月期を売上高53.00億ドル、営業利益14.00億ドルと予想します。いずれも下方修正しますが、売上高については前回予想が少し強気すぎたこと、営業利益については顧客数の増加と契約件数の増加に伴って、販売費、研究開発費が増加すると予想されること、会社の規模が大きくなるにしたがって、一般管理費も増加すると予想しました。

 また、参考値ですが、2027年12月期を売上高76.00億ドル、営業利益29.00億ドルと予想します。

 2025年12月期、2026年12月期の楽天証券業績予想は下方修正しますが、政府向け、コマーシャル向けともに優良顧客が増えていること、米軍でのパランティアのシステムに対する高い評価がコマーシャルに伝播し、これがコマーシャルの顧客と契約の増加に繋がっていると思われることを評価しました。

4.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の110ドルから160ドルに引き上げる

 パランティア・テクノロジーズの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の110ドルから160ドルに引き上げます。長期の視点で、2027年12月期の楽天証券予想EPS(1株当たり利益)1.03ドルに対して、楽天証券予想増益率107.1%、PEG=1.5倍と高い成長性に対するプレミアムを付けて想定PER(株価収益率)160倍前後で評価しました。

 パランティアのAIシステムに対する米軍での高い評価が今後も続くであろうこと、この高い評価が民間企業向け事業にも貢献すると思われることを評価しました。

 引き続き中長期で投資妙味を感じます。