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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
米「トランプ関税」政策がもたらすもの~風向きの変化の早さと米中関係への不安~

 2月相場入りとなった今週の株式市場で、3日(月)の日経平均株価は一時1,000円を超える下げ幅となり、取引時間中には3万8,500円を下回る場面も見せるなど、いきなり波乱含みのスタートとなりました。その後は3万9,000円の株価水準を挟んだ展開が続いています。

 こうした値動きの背景には、トランプ政権による関税政策がにわかに動き出したことが影響しています。つい2週間前の政権発足時には後退していた警戒感が再燃する格好になったほか、先週には、中国企業発の「DeepSeek(ディープシーク)ショック」が市場にインパクトを与えるなど、ここ最近の相場を取り巻く環境は、その変化のスピード感が際立っています。

 このレポートを提出したのは6日(木)の夜ですが、掲載される7日(金)の朝までに状況が一変してもおかしくない状況は、かなりスリリングです。

 あまりにも状況の変化が早いと、心理的に浮足立ってしまいがちですが、今回のレポートでは、いったん冷静になって、ここ2週間の相場の動きを確認しつつ、今回のトランプ関税政策をめぐる動きのポイントなどについて考えていきたいと思います。

ここ2週間で日米中の株価指数はどう動いた?

<図1>日米中の主要株価指数のパフォーマンス(2024年末を100)(2025年2月5日時点)

日米中の主要株価指数のパフォーマンス(2024年末を100)(2025年2月5日時点)
出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを基に作成

 早速、ここ2週間近くの値動きをチェックしていきます。

 上の図1は、昨年末を100とした、日、米、中の株価指数のパフォーマンスを比較したものです。図では、DeepSeekショックとトランプ関税が材料視された、1月27日と2月3日に縦線を描いています。

 まずは日本株です。日経平均は、1月27日と2月3日の両方で下落し、2段階で株価水準を切り下げています。図に記載されている株価指数の中でいちばん下げが目立っていますが、下値は3万8,000円台を維持しており、レンジ相場自体は継続中です。

 また、TOPIX(東証株価指数)については、1月27日に上昇で反応し、1月31日には昨年末比でプラスになる場面もありましたが、日経平均と同様、2月3日に大きく下落しました。

 続いては米国株です。ダウ工業株30種平均(NYダウ)は1月27日に上昇し、2月3日は下落したものの、その後は高値をトライするような動きとなっていて、むしろ堅調に推移している印象です。

 S&P500種指数とナスダック総合指数については、1月27日と2月3日の両方で下落したものの、両者の下落を比べると、2月3日の下値が切り上げっているほか、昨年末比でプラスを維持していることを踏まえると、トランプ関税による下落はDeepSeekショックほどではなかったと言えます。

 そして、最後に中国株を見ていきます。中国株市場は春節の休暇により、本土市場は1月28日から2月4日まで、香港市場は1月29日から31日まで休場となっていました。

 当然ながら、中国AI(人工知能)企業によるDeepSeekショックの影響はなかったのですが、中国株市場で注目されるのは、2月3日以降の値動きで、上海総合指数が下落する一方、香港ハンセン指数が上昇とまちまちの値動きとなっています。

 上海市場がトランプ関税の影響を警戒したのに対し、香港市場は、半導体関連銘柄の中芯国際集成電路製造(SMIC)など、テック企業が買われ、中国株にとってDeepSeekは追い風の材料になっているもようです。5日(水)時点での香港ハンセン指数のパフォーマンスは米S&P500やナスダック総合指数を上回っています。

 以上のように、日、米、中の株価指数のあいだに温度差があり、値動きも荒っぽいものの、突出して下げが加速するようなものはく、全体的には相場の基調に大きな変化はなかったと言えそうです。