日銀の利上げ前倒し観測で円キャリートレードに異変!?

 2月5日、日本の長期金利は約14年ぶりの高水準を更新した。日本銀行の利上げ前倒し観測が浮上しているためだ。こうした中、市場の一部で、「円キャリートレードの巻き戻しが静かに始まっている」といううわさが出ている。投機筋はレバレッジを減らし始めているのだろうか?

*円キャリートレード:「円キャリートレード」とは、低金利の円を借り入れて外貨に交換し、高金利国の資産(外国債券や外国株式、原油などの商品先物、海外不動産、ヘッジファンドなど)で運用して利益を得る取引

日本10年国債金利(日足)

日本10年国債金利(日足)
(赤:金利上昇トレンド・黄:金利低下トレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ドル/円(日足)

ドル/円(日足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 円のキャリートレードが借り換えを必要とするとき、より高い金利の影響が表面化し始める。その時点で、借り手が大幅に価値を失った資産に投資した場合、より高い金利で借り換えるか、多額の損失を計上する必要に迫られる。

 MBS、CMBS、CLO、プライベートエクイティファンド、および株式は全てこのカテゴリに分類される。そして、ナスダック100の上昇はおおむね円安と連動している。

ドル/円とナスダック100の推移

ドル/円とナスダック100の推移
出所:トレーディングビュー

 日本の低金利は世界のエブリシング・バブルを支えている。ドル/円の上昇(円安)はエブリシング・バブルの象徴である。円売りのゲームに参加しているのは日本の個人投資家だけではない。日銀が異常低金利を続けた結果、円は調達通貨となり、推定20兆ドルのキャリートレードが行われているという。

 投資資産が重大な信用リスクを伴い、満期時の円キャリートレードの価値が著しく損なわれ、回復率が元本損失を相殺しない場合、大規模な円キャリートレードの巻き戻しが起こる。昨年8月のドル/円と日経平均株価の急落は、その一部がフラッシュクラッシュ的に巻き戻されただけである。

 経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは、「中央銀行の刺激策で上昇したものは、インフレや弱気相場にかかわらず、必ず下落する。それは時間の問題であり、どれだけ(下落が)深刻なのかという問題である」と語った。