1月雇用統計の予想と注目ポイント

 BLS(米労働省労働統計局)が2月7日に発表する2025年1月の雇用統計では、NFP(米国非農業部門雇用者数)は、15.0万人の増加が予想されています。失業率は前月と変わらず4.1%で推移する見込みです。また平均労働賃金は、前月比0.3%増(前月0.3%増)、前年比3.8%増(前月3.9%増)の予想となっています。

非農業部門雇用者数と失業率の推移

 前回12月の雇用統計では、サービス業や小売業を中心に就業者が25.6万人増え、3カ月平均でも16.8万人増となりました。この水準は米国の成長トレンドに見合うとされる約15.0万人増より多い状態です。雇用市場はまだ過熱状態が継続中ということになります。

 今回の雇用統計は、FRB(米連邦準備制度理事会)の次の利下げ時期を予想するための重要なデータとなります。FOMC(米連邦公開市場委員会)参加メンバーの政策金利の見通しを示すドットチャートによると、2025年の利下げ回数は2回です。1月の会合では政策金利を据え置きとなりました。マーケットは次回3月の会合も見送り、5月は五分五分という予想をしています。

 また同時に発表される、BLSによる雇用統計の年次ベンチマーク改定も注目されています。昨年8月の改定では就業者数81.8万人の下方修正になりました。今回は約70.0万人の修正となりそうです。これは、米国の雇用市場が発表されている数字以上に減速している可能性を示すもので、FRBにとっては、利下げ再開の根拠のひとつになりそうです。

平均労働賃金の推移(%前年比)

ドル/円は8年前の韻を踏むのか?

 2016年の米大統領選挙ではドナルド・トランプ氏が、ヒラリー・クリントン氏の圧倒的有利とする多くの世論調査を覆して勝利しました。これが世界中に大きな衝撃を与えた「トランプショック」です。トランプ氏の敗北を予想し続けた旧来メディアの影響力は弱まり、米大統領選の「最大の敗者」とまでいわれました。

 トランプショックは、政治的な衝撃だけではなく、世界の金融市場にも混乱を引き起こしました。トランプ氏の過激な発言や政策への不安から、米大統領選後のドル/円相場は、一時100円台近くまで下落したものの、一転して急激なドル高が始まると、2016年末までのわずか1カ月半で18円も上昇しました。

 もっとも、ドル高熱狂相場は続きませんでした。2017年のドル/円は、年明け1月3日につけた118.61円が高値で、トランプ大統領就任式までに4円も下落していたのです。これは、トランプ氏が大統領に就任した時に発表した経済政策が、これまで語った以上の目新しい内容が出ず、マーケットの熱狂が冷めたせいだといわれています。

 その後ドル/円は4月には110円を割り、9月には107.30円まで下げました。1月の高値から比べると約9.5%ものドル安です。

2017年と2025年のドル/円の推移

 2025年のドル/円の高値は、現時点では1月10日の158.87円。大統領就任式には155.41円までドル安になっています。ドル/円が8年前と同じような軌道をたどるとするならば、1月の158.87円が2025年の高値で、今年後半には140円台までドル安/円高が進むかもしれません。

 もっとも、ドル/円の年間の値幅は2017年当時よりも大きく、ここ数年は平均して20円以上動いていることを考えると、130円台までのドル安もありえるでしょう。

NFP・米失業率・平均労働賃金(前月比/前年比)の表