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著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「次の利上げに向けて前傾姿勢を強める日銀~「主な意見」のちょっとした違和感~」
利上げに前のめりな日銀の姿勢を織り込む債券市場
最近の日米長期金利を見ると(図表1)、米国の長期金利が低下傾向にあるにもかかわらず、日本の長期金利が高止まる結果、両者の連動性が崩れているのが分かります。もちろん、この程度の乖離(かいり)は過去にも見られたわけですが、今回の動きが気になるのは、背景に日本銀行の次回利上げに対する前のめりの姿勢があるからです。
<図表1 日米10年金利の推移>

1月30日に行われた氷見野良三副総裁の講演に対する債券市場の反応は、それを如実に表すものでした。
市場では、「見通しが実現していくとすれば金融緩和の度合いを調整していく」、「実質金利がマイナスの状態が続くのは普通の姿ではない」との発言が長期金利の上昇につながったとの解説が見られましたが(図表2)、同様の発言は1月14日の講演ですでに行っており、特に目新しいものではありませんでした。
<図表2 氷見野副総裁の講演(1月30日、一橋大学政策フォーラム)での発言>

それにもかかわらず長期金利が思いのほか上昇したのは、次の利上げが意外と早いかもしれないという思惑を背景とする、いわば売られやすいセンチメントがあったからだとみています。筆者も日々情報収集に努めていますが、確かに日銀周辺からはそうした追加利上げに前向きな雰囲気を感じています。
2月3日の東京市場でも、トランプ新政権によるカナダ、メキシコ、中国に対する関税引き上げを受けて、景気悪化を想定した買いとインフレ懸念をはやした売りが交錯しましたが、結局売りが優勢となり長期金利は上昇しました。これにも売られやすいセンチメントが作用したとみています。