解散価値といわれるPBR1倍を大きく割り込む銘柄が増えている

 不動産セクターには、業績が堅調で、巨額の含み益を有しているにもかかわらず、株価が上がらないため、株価が、解散価値といわれるPBR(株価純資産倍率)1倍を割れる銘柄が多数あります。

 賃貸不動産に大きな含み益があるのは、不動産会社ばかりではありません。電鉄、倉庫など、さまざまな業種に「含み資産株」があります。

 直近の決算期末で、賃貸不動産の含み益が2,000億円を超えている25社は以下の通りです。

賃貸不動産に含み益2,000億円以上を有する25社

  コード 銘柄名 不動産 含み益(億円)
1 8802 三菱地所 不動産 4兆8,500
2 8830 住友不動産 不動産 3兆9,949
3 8801 三井不動産 不動産 3兆3,589
4 9020 JR東日本 電鉄 1兆6,232
5 9432 NTT 情報通信 1兆3,250
6 9005 東急 電鉄 6,370
7 9042 阪急阪神HD 電鉄 5,711
8 8804 東京建物 不動産 5,264
9 8267 イオン 小売 5,231
10 9021 JR西日本 電鉄 4,662
11 9531 東京ガス ガス 4,475
12 3289 東急不動産HD 不動産 4,084
13 9602 東宝 サービス 4,046
14 8905 イオンモール 不動産 3,873
15 3003 ヒューリック 不動産 3,849
16 9301 三菱倉庫 倉庫 2,724
17 3231 野村不動産HD 不動産 2,668
18 9706 日本空港ビルデング 不動産 2,646
19 9104 商船三井 海運 2,584
20 1812 鹿島建設 建設 2,517
21 9401 TBSHD 情報通信 2,447
22 9006 京浜急行電鉄 電鉄 2,435
23 1802 大林組 建設 2,306
24 8233 高島屋 小売 2,101
25 7013 IHI 機械 2,072
出所:各社、開示されている最新の期末有価証券報告書より、楽天証券経済研究所が作成。東京建物、ヒューリックは2023年12月期、イオン、東宝、イオンモール、高島屋は2024年2月期、その他は2024年3月期

 このような含み資産株には、含み益を考慮した実質PBRが1倍を大きく割れる銘柄が多数あります。実質PBRについては、後段で説明します。まずは、銘柄データをご覧ください。

実質PBRが0.6倍以下、含み益が600億円以上の12銘柄:実質PBRが低い順に配置

  コード 銘柄名 不動産 含み益
(億円)
連結PBR
(2月3日)
実質PBR
(2月3日)
1 8841 テーオーシー 不動産 1,271 0.59 0.32
2 9304 澁澤倉庫 倉庫 628 0.70 0.44
3 8802 三菱地所 不動産 4兆8,500 1.12 0.48
4 3001 片倉工業 繊維 980 0.85 0.50
5 8830 住友不動産 不動産 3兆9,949 1.17 0.53
6 9401 TBSHD 情報通信 2,447 0.66 0.53
7 5901 東洋製缶グループHD 金属製品 1,243 0.55 0.54
8 8818 京阪神ビルディング 不動産 834 0.95 0.55
9 9119 飯野海運 海運 1,084 0.84 0.57
10 4676 フジ゙・メディアHD 情報通信 688 0.60 0.57
11 8804 東京建物 不動産 5,264 0.94 0.58
12 8905 イオンモール 不動産 3,873 0.87 0.60
出所:各社、直近決算期の有価証券報告書より楽天証券経済研究所が作成。実質PBRは、2月3日の時価総額を実質純資産で割って計算。実質純資産は、各社の純資産に不動産含み益の7割を加えたもの

 これまで不人気の「含み資産」株ですが、実質PBRが低すぎる銘柄は、いつか見直されることを期待して、少し買ってみてもよいと思っています。三菱地所(8802)住友不動産(8830)TBSホールディングス(9401)飯野海運(9119)東京建物(8804)イオンモール(8905)などに注目しています。

 ただし、上記リストに入っているフジ・メディア・ホールディングス(4676)は、業績不振にもかかわらず、不動産含み益や経営刷新の思惑で買われている所なので、今、投資するのは避けた方がよいと思います。同社株は3日、日経平均が1,052円安と急落する中で14%高に買われています。

フジ・メディアHD株の推移:2024年1月4日~2025年2月3日

フジ・メディアHD株の推移:2024年1月4日~2025年2月3日
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成