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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「「含み資産株」見直し、合意なき買収増える?フジメディアHD急騰、なぜ?」
トランプ関税ショックで世界株安、日本株は押し目買い
トランプ大統領がメキシコ、カナダへ25%関税導入、中国へ10%の追加関税を決定したことを受けて、3日の日経平均株価は1,052円安の3万8,520円と急落しました。
ただ、その後、トランプ氏と、メキシコ、カナダとの対話により「メキシコ関税は1カ月の実施延期に合意」が表明され、カナダも「関税発動を1カ月延期することで米国と合意した」と明らかにしています。発動時期が少し遅延はしたものの、世界経済の分断はさらに深刻化していくことが予想されます。
日本株は割安で、下がったところは買い場と判断しています。時間分散しながら、少しずつ割安な日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。
グローバル経済に不安が生じることから、当面、内需株から買った方がよいと思います。株価指標でみて、割安度が際立つディープ・バリュー株もよいと思います。その候補として、今日は「含み資産株」をご紹介します。
今、日本の株式市場には、保有不動産に巨額の含み益があるにもかかわらず、株価が、純資産価値と比べて極めて割安な水準にとどまっている銘柄がたくさんあります。
2005年に大活躍したハゲタカファンド(買収ファンド)がいれば、まっさきに狙われそうな銘柄群です。ところが、2006年以降、ハゲタカファンドは日本からほとんど撤退しました。
ハゲタカ去り、割安な「含み資産株」に、合意なき買収をしかける買い手はなくなりました。純資産価値と比較して割安と分かっていても、買収をしかける投資家がいなくなりました。
ただ、最近、合意なき買収が増える兆しもあります。今日のレポートでは、そういう「含み資産株」に改めてスポットライトを当てます。
不動産ブームは終わり、都心の不動産需給は軟化
アベノミクスが始まった2013年以降、景気回復と異次元金融緩和の効果で、不動産需給が引き締まり、コロナショック前の2019年まで不動産ブームが続きました。2020年にコロナショックが起こり、在宅勤務が広く普及すると、都市部のオフィス需給は軟化し、一時不動産不況の様相を呈しました。
ところが、2023年以降、コロナからの経済再開が進むと、不動産市況は持ち直し、活況を呈しています。
都市部のタワーマンションは高人気で、東京23区の新築マンション販売価格は2024年12月時点で、平均1億822万円と、1億円を超えています。
そうしたブームを反映して、上場企業が所有する賃貸不動産の含み益【注】は拡大し続けています。
【注】含み益
時価と取得原価の差額。100億円で買った不動産が120億円まで値上がりしたとき、帳簿上100億円で計上している不動産に、20億円の含み益が存在することになる。
賃貸不動産の含み益上位4社の含み益推移:2013年3月~2024年3月

このように、上場不動産株の含み益は年々拡大し続けていますが、不動産株は、2013年に高値をつけて以降、上値が重くなっています。
東証不動産株価指数の動き:2004年1月~2025年2月(3日まで)

2023年にコロナからの経済再開を好感して上昇しましたが、2024年以降は、また日本の金利上昇を嫌気して下がってきています。
不動産業は市況産業です。過去に、不動産市況の上昇下落に対応して、ブームと不況を繰り返してきました。過去を振り返ると、1973年、1990年、2007年に市況のピークがありました。
1973年は列島改造論のブームの中で不動産市況が高騰しましたが、オイルショックが起こると崩落しました。1990年の不動産バブルは1990年代に崩壊しました。2007年の不動産ミニバブルは2008年のリーマンショックで崩壊しました。
このように、不動産市況が大きく変動することから、投資家は学習効果で、ブームでも不動産株への投資には慎重になっていると考えられます。
保有不動産の含み益が拡大しているのに、株価の上値が重いままであるため、買収価値(含み益を考慮した純資産価値)と比較して極めて低い評価になっていると判断しています。