米国の利下げペース鈍化を意識し2025年に入って日本株は軟化

 直近1カ月(2024年12月13日~2025年1月17日)の日経平均株価(225種)は終値ベースで2.6%の下落となりました。

 12月27日には、7月19日以来となる終値ベースでの4万円台乗せとなりましたが、2025年に入ると調整色が強まり、1月17日には一時3万8,000円近辺まで下落し、期間中の最安値をつけています。結局、2024年10月以降続く、3万8,000~4万円レンジでの株価推移からは脱却し切れない状況となっています。

 なお、この期間(2024年12月13日~2025年1月17日)のダウ工業株30種平均は0.8%の下落となっています。

 12月の中旬にかけてはいったん下落し、FOMC(米連邦公開市場委員会)で市場想定通りに0.25%の利下げが決定されたものの、2025年の利下げ回数見通しが引き下げられたことが弱材料視されました。ただ、直後に開催された金融政策決定会合を通過して、日本銀行のハト派姿勢が確認されたことが安心感につながり、その後日経平均は反転しています。

 為替相場での円安進行なども支援材料につながったとみられます。月後半の4万円台回復場面では、トヨタ自動車(7203)株の上昇、好決算発表のファーストリテイリング(9983)株の上昇などが指数の押し上げ要因となったほか、自動車業界の大型再編の動きなども期待材料となったようです。

 一方、年明け後は、米長期金利の上昇を受けて株価は調整に転じました。年末に4.5%台であった米10年債利回りは4.8%台にまで上昇し、雇用統計の市場予想大幅上振れなどで、利下げペースの鈍化が一層意識されることになりました。

 さらに、中旬以降は、日本銀行の1月利上げ実施観測も急速に台頭し、日本株のマイナス材料となりました。1月20日に米大統領就任式を控え、トランプ政権の政策に対する懸念も強まったようです。

 この期間、米長期金利の上昇を受けて、中小型グロース株の一角がさえない動きとなりました。マネーフォワード(3994)ペプチドリーム(4587)PKSHA Technology(3993)ラクス(3923)メルカリ(4385)ビジョナル(4194)などが10%以上の下落となっています。

 マネーフォワードは決算もネガティブ視されましたが、サイゼリヤ(7581)も決算発表後は出尽くし感が強まる展開になっています。KADOKAWA(9468)ソニーグループ(6758)との資本提携が発表されましたが、市場ではソニーによる買収期待もあったため、売り材料視される形になりました。

 半面、ホンダ(7267)との経営統合が伝わった日産自動車(7201)が大幅上昇し、統合への参加が想定されている三菱自動車(7211)も買われました。ホンダ(7267)に関しても、大規模な自社株買いを発表したことで急伸しています。

 ほか、野村マイクロ・サイエンス(6254)TOWA(6315)SCREENホールディングス(7735)など売り込まれてきた半導体関連のリバウンドも目立ちました。ニデック(6594)による買収が伝わった牧野フライス製作所(6135)も急伸しました。

米新政権の政策、日米金融政策、10-12月期決算など見極め材料が数多い

 1月20日には大統領就任式が行われ、第2次トランプ政権が発足しました。当面は新政権の打ち出す政策に対して一喜一憂の展開が見込まれます。規制緩和の推進やインフラ投資などの期待政策もありますが、短期的には、関税政策や移民政策など市場に対してネガティブとなりそうな政策がクローズアップされるとみられます。

 対中半導体規制などもバイデン政権時からの変更がなされる可能性がありそうです。自動車株や半導体株などは、当面神経質な展開を余儀なくされそうです。ただ、仮に就任直後にネガティブサプライズ的な政策が発せられ、株価が大きく下落する場合には、その後の政策緩和の可能性などを見越した押し目買いの機会になっていく公算があるでしょう。

 1月23~24日に開催される日銀金融政策決定会合、28~29日に開催される米FOMCなど日米の金融政策も目先の関心事となります。足元では急速に日銀の1月利上げ観測が強まっており、現段階では0.25%の利上げ実施で、あく抜け感が強まる余地はありそうです。年内の利上げ回数コンセンサスなどが切り上がるような状況にまでは至らないと考えられるためです。

 逆にFOMCでは追加利下げが見送られ、年内の利下げ回数見通しが1回程度に引き下がる可能性があります。この場合、米国株にとっては逆風ですが、日本株にとっては円高進行の抑制要因につながるプラス面も出てきそうです。ほか、1月28日からは中国が春節休暇となります。日本にとってはインバウンド需要の増大が期待されてくることになります。

 また、中国に関しては、トランプ政権による関税政策の発動が懸念されている一方、それに対応するための景気刺激策の一段の拡充期待は残るでしょう。

 今後1カ月は、10-12月期の決算発表も物色の大きな手掛かり材料となってきます。タイミング的には、2025年度の業績見通しが注目されやすくなるとみられ、企業側の先行き見通しによって個別銘柄や業界の選別の動きが強まる公算です。米新政権の政策に対する影響予測なども重視されてくるでしょう。

 ちなみに、最近の決算発表においては、大幅増配や自社株買いなど株主還元策が大きな株価材料とされてきましたが、発表企業がすでに増加してきている中、徐々にこうした動きや期待感などは後退していくことは考慮すべきでしょう。一方、足元ではM&A(企業の合併・買収)に対する関心が高まっています。

 とりわけ米国では、バイデン政権下でM&Aが抑制されてきたことから、政権交代に伴い一気に活況に転じる可能性も高いとみられます。2025年はM&Aが日本株の下支え材料になると考えていますが、今回の決算発表においても、M&Aが顕在化する余地は大きいとみます。

 ニデックの牧野フライスTOBにみられるような、国内企業同士での敵対的M&Aにまで、M&Aの範囲は広がりつつあります。