これまでのあらすじ
信一郎と理香は小学生と0歳児の子どもを持つ夫婦。第二子の長女誕生と、長男の中学進学問題で、教育費の負担が気になり始め、毎週金曜夜にマネー会議をすることになった二人。息子の進学に合うベストな物件を見つけ、夫婦は住宅ローンを選び、ライフプランを再構築する…

「ところで、投資って、何歳まで続けるべきなんでしょうか?」
信一郎がグラフを見ながら考え込む。
投資が資産の背骨を作ってくれているのは分かるが、このグラフを見ていると、投資をしていなければ、赤字が軽減する可能性もある。
「投資に年齢制限はありませんから、いつまで続けるのか、いつ辞めるのか、本当にひとそれぞれです。この先の人生で、投資の辞め時に迷われた時は、なぜ投資を始めたのか、目的に立ち返ってみてはいかがですか?」
「投資の目的…。私たちは、子供の教育費が必要だっていうところが起点でした」と理香は、思いを巡らせながら言う。
「教育費を考えているうちに、老後の資金が不安になったっていうのもあります」と信一郎が続ける。
なるほど、とFP氏はうなずいた。
「それならば、教育費を支払い終わり、資産を確保して老後生活に突入したら、投資をする目的はなくなるということですね」
そうね、と理香は先ほど作ってもらったグラフに目をやる。

美咲が大学を卒業し、理香が定年退職した後は、特に「増やす」ことを目的とした、ガツガツした投資は必要ない、ということになる。それよりは、退職金やそれまで築いてきた資産を、足りなくならないように「守りながら」取り崩していくのが現実的だろう。
「判断の一つの基準としては、やはり介護や認知症などの問題が出てきます。入退院を繰り返したり、認知症で判断力が衰えてきたりする前に、攻めの投資はクローズして、関係者の方々に自分の資産の共有をしておくことをお勧めします」
遺産として残す必要はないが、どこにどれだけの資産があるのか、という情報は、家族で共有しておかないと、死亡した方の名義のままで、口座が凍結された状態になってしまう。10年間経過してしまった場合には休眠預金となり、民間公益活動に活用されるそうだ。
「ネット証券は、特に注意が必要です。昨今は対面証券も通知がメールなどで電子化されているので、故人のメールアドレスにさまざまな通知が届いても分からない場合があります。投資をクローズする、と決めたら、必要な情報をとりまとめて、遺言書やエンディングノートに遺しておくといいでしょう」
「まぁ、70歳から75歳くらいが上限だろうね。バフェット先生は90代で現役だけど、僕たちはあんな超人じゃない」
ウォーレン・バフェット氏は、世界最大の投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイの筆頭株主であり、同社の会長兼CEOを務める現役の投資家だ。「投資の神様」と称され、90歳にして、資産総額が1,000億ドルを超えたといわれている。
「90歳なんて無理無理。投資を辞めるか続けるか、定年のタイミングでまず1回、70歳くらいでも1回、いや、気になるコトが出てきたら、何度でもマネー会議をしましょう」と理香が言うと、信一郎も大きくうなずいた。そんな二人をFP氏は温かい目で見つめている。
「定期的にお金や生活の方向性を話し合う機会を作るのは大賛成です。その時点ごとに、こうしてマネー&ライフプランを立て直しながら、先へ進んでいきましょう」
「はい!」声をそろえて二人は元気よく返事をし、顔を見合わせて笑った。

教育問題でも、家族間の教育方針をすり合わせることに成功したが、今回の住宅問題でも、二人はお互いの人生観を以前より深く理解しあえたと感じていた。
人生を通じて、二人が向かうべきベクトルも一致した。加えて、照れくさくて口にはできないが、お互いの「大切さ」や「頼りがい」にも気付くことができたのは大きな収穫だ。
「住宅ローンを選択することで、改めて生活周りの見直しができたね」
「うん。仕事のモチベーションの一つになったわ」
住宅ローンを選択する、という気が重いはずの作業だったが、知識が増えて視界が広がった。
子供が生まれたときも、責任感が増して夫婦の絆が深まったのだが、育児や仕事など、毎日のタスクに追われるうちに、何のために毎日がんばっているのかを見失いかけていた気がする。
自分が毎日仕事をがんばり、育児や家事に時間を割くのは、自分も含めて、家族全員が幸せに生きるためなのだ、と二人は改めて再認識していた。そのための頼れる相棒が、夫であり、妻なのだ。
「なによりも、健康でいなくちゃだよな」
「それよ。私、雨の日以外は、一駅前で降りて歩くことにする」
将来の、万一の保障も大事だが、明日の健康のほうが重要だ。二人はさっそく、隣の駅まで歩くことにし、足取りも軽く、街を歩き始めた。
▼住宅ローン審査に必要な書類一覧
源泉徴収票 住民税決定通知書(または住民税課税証明書) ■個人事業主および確定申告をしている人の場合 確定申告書 申告所得税の納税証明書 ■法人代表者の場合 法人の決算報告書 |

弊社のお客様からよくいただく質問に「いつから投資をスタートするのが良いですか?」という質問があります。やや古い言い回しですが(笑)「今でしょう!」といつも答えています。
時間というのはどんなお金持ちでも買えないものであり、自分が30歳であっても40歳であっても、今から投資を開始して、基本的には一生、投資を続けていただきたいと思っています。
そして、「今すぐ始めてほしい」と考えるもう一つの重要な理由が「複利効果」です。例えば毎月5万円の積み立て投資を30年間続け、7%の利回りで運用できたとすると、投資金額1,800万円が6,000万円になります。10年目ではまだ約1,000万円にしかなっていないため、1年で7%増えても70万円ですが、29年目には運用資産が5,600万円になっていますので、その7%は約400万円と加速度的に増えていきます。つまり、早く始めれば始めるほど複利効果で資産づくりのパワーが増すのです。
また夫婦で共働きのかたはエンジンが2つあるため、二人で5万円など、役割分担を自覚して臨めば、より長く投資を継続することができます。
例えば今40歳の人が30年間積み立てて70歳の時に6,000万円の運用資産を持っていると、安定的に4%で運用し年間240万円使うことができます。まだ給与収入があるうちは積み立て投資と複利の力を使って増やし、リタイアした後は、その資産から生み出す利益で人生を思いっきりエンジョイする。それは誰にでも可能な、未来予想図です。早く投資を始めること、家庭内で協力してパワフルに資産づくりをすること、長く投資を続けること。この3つで、自分の夢も家族の夢も叶えられるよう、心から応援しています。
40歳から「介護保険料」が給与天引きされるって知ってた?<8-1>夫婦、人生を考える