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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「米国株市場はこのまま調整入りするのか?~相場環境と株式市場との「歪み」に注意~」
日経平均の2025年スタートは4万円台が意識されるも要注意?
2025年相場がスタートした今週の国内株式市場ですが、これまでのところ、少し値動きが荒い展開となっています。日経平均株価の推移でもう少し細かく見ていくと、大発会の6日(月)は前営業日比で587円安、翌7日(火)は776円高、続く8日(水)は102円安、そして9日(木)は375円安となり、節目の4万円台を挟んで株価が上下する展開となっています。
<図1>日経平均(日足)の動き(2025年1月9日時点)
日経平均は昨年10月より、3万8,000円から4万円のレンジ相場が続いていましたが、ようやく、このレンジを上方向に抜けつつあるような動きを見せたことで、株式市場の基調自体は悪くないような印象です。ただし、株価動向の背景を探って行くと、過度な楽観は禁物かもしれません。
株式市場の重荷として、米金利の高止まりが目立ってきた
まず、大発会の株価下落ですが、年末年始の米国株市場が軟調気味に推移していたことが影響しました。米国市場では、米10年債利回りが昨年末あたりから4.5%台から上の水準で高止まりしており、さらに今週に入ってからもジワリと再上昇してきています(下の図2)。
<図2>米10年債利回り(日足)の動き(2025年1月9日時点)
米国の堅調な景況感を示す経済指標が相次いでいることや、1月20日から正式に発足する米トランプ次期政権が実施する政策の影響でインフレが再燃するのではという警戒感が米金利高の背景にあります。
とりわけ、8日(水)の取引時間中には米10年債利回りが4.7%台まで上昇する場面がありました。「トランプ次期大統領が全世界一律の輸入関税の導入に向けて、就任後に緊急事態宣言を出すことを検討している」と米CNNが報じたことがきっかけとなりました。
この他、「トランプ政権がもたらすかもしれない」インフレは、景気を刺激し過ぎることによるインフレをはじめ、関税強化や移民政策強化によるコスト増がもたらすインフレ、そして、政策を実施する上での財政悪化によるインフレなど、複数の経路が考えられるだけに、「どの政策がどう影響して行くのか?」といった見通しやシナリオを立てるのは現時点では難しい状況です。
また、一般的に金利上昇は株式市場にとって重しとなるのがセオリーです。高金利によって、企業が資金調達を行うのが難しくなり、経済活動が抑制的になってしまう懸念があるほか、株式の益回りと国債の利回り格差が縮まることによって、リスク資産である株式の割高感が強まり、安全資産の債券に資金が向かいやすくなるという理屈です。
実際に、米S&P500種指数の日足チャートを見てみると、図2において、米10年債利回りがピークを迎えた昨年(2024年)4月や、2023年10月の時期の株価は下値を探っている状況でした(下の図3)。