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著者の松田 康生が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
3,500万円へ本格上昇開始?~1月のビットコイン見通し~

12月のビットコインイベント

NEW! 12月5日 パウエル議長、ビットコインは金の様なもの
NEW! 12月5日 10万ドル突破、トランプ氏が祝辞
NEW! 12月17日 10.8万ドル、BTC ETFが金ETFの時価総額追い抜く

*2024年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た1月見通し

12月の振り返り

12月のビットコイン価格(円)とイベント

12月のビットコイン価格(円)とイベント
出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 12月のBTC相場は続伸。11月のトランプ再選後の勢いを受け、10万ドルを突破、史上最高値を10.8万ドルまで伸ばした後、失速。月末月初で見れば上に行って来いで若干のマイナスとなっているが、新年に入り切り返し、再び10万ドルに迫っている。

 BTCはトランプ再選により、反暗号資産政策の元凶ゲンスラーSEC(米証券取引委員会)委員長の更迭や米政府によるBTCの戦略保有構想などを好感し、連日史上最高値を更新した11月の勢いを受け、12月に入っても堅調に推移。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長のBTCをデジタルゴールドと認める発言を受け10万ドルを突破し、トランプ次期大統領が祝辞を送る場面も見られた。

 シリアのアサド政権が崩壊すると、同国軍の兵器が反政府派に渡ることを懸念したイスラエルが同国に侵入し、中東情勢がさらに混迷することを懸念して失速、またマイクロソフトの株主総会で株主から提案されたBTC保有案が否決されると9.4万ドル台に値を落とした。

 しかし、CPI(消費者物価指数)や米10年債入札を無事通過し、12月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げが確実視される中、BTCは10万ドル台に値を戻した。

 すると、トランプ氏はデビッド・サックス氏をAI暗号資産担当官に指名し、さらに戦略備蓄について問われると「I think so」と肯定した。また、就任日(1月20日)の大統領令で開始するとの思惑が浮上し、BTCは月初に付けた史上最高値10.4万ドルを更新したあと10.8万ドルまで上値を伸ばした。

 しかし、クリスマス休暇を前にしたポジション調整的な動きもありピークアウトすると、FOMCで利下げされたものの次回以降の利下げへ慎重姿勢を示した。さらに、トランプ氏が債務上限撤廃を求めたことで政府閉鎖懸念が浮上し、米株が今年最大の下げを見せる中、BTCは9.2万ドル台に値を下げた。

 結局、つなぎ予算が可決し、政府閉鎖は回避され、BTCは10万ドル近辺まで切り返したが、トランプ氏の共和党下院への影響力が不安視され、相場の重しの一つとなっていく。

 その後、何度か10万ドルをトライするもクリスマス前のポジション調整もあり上値の重い展開が続き、クリスマス明けも今度は決算期末を控えたポジション調整もあり30日には9.1万ドルに値を下げた。

 しかし、新年に入ると買戻しが優勢となり、3日にはETF(上場投資信託)に9億ドルの流入を記録し、BTCは10万ドル台に値を戻している。

BTC ETFフローとBTC/USD

BTC ETFフローとBTC/USD
Bloomberg・Farside Investorsより楽天ウォレット作成

需給面から見た1月のBTC相場

 結局、12月のBTCは10.8万ドルでピークを付けた後、9.1万ドルまで15%の調整を見せたが、その過程で今回の上昇相場がピークを迎えたのか、まだ上昇局面にあるのかといった議論も一部で聞かれた。ただ過去の本格上昇局面でも3割程度の調整は頻繁に起こっており、この程度の下げでピークアウトを懸念するのはやや腰が据わっていない印象を受ける。

BTC/USD 2021年本格上昇期の調整率

BTC/USD 2021年本格上昇期の調整率
Bloombergより楽天ウォレット作成

 では、この下げの正体は何だったのか。材料的には、FRBのタカ派な利下げと政府閉鎖懸念だ。特に後者は新大統領の議会への影響力、ひいては戦略備蓄構想の実現性にも関わってくるとして、同氏が求めた債務上限撤廃に共和党内からも異論が出たことが懸念された。

 ただし、先物市場では1月および2月の利下げ見送りをほぼ織り込み済で、また議会との関係も混乱が予想された下院議長選出において同氏が推すジャクソン氏が1回目の投票で当選したことから懸念は後退している。何より、後述するが大統領令によりすでに保有している分を戦略備蓄とすることは議会を経る必要がないとの見方が強い。

 これ以上に大きく影響したのが、クリスマス休暇や決算期末を控えたポジション調整だろう。先月にも指摘したが、今回の上昇をけん引しているのは米国の機関投資家で、彼らが不在となる感謝祭前には調整売りが見られた。クリスマス休暇にそれを上回る調整が入るのは自然な流れだろう。実際、クリスマス前の4営業日でETFから15億ドルの資金が流出している。

決算期末におけるBTC投資家のインセンティブ

  加えて、クリスマス休暇後には決算期末のポジション調整売りが見られた。欧米企業の多くが本決算を迎える12月末は、金融機関を中心に自己資本比率を引き上げるためにバランスシート(BS)を縮小しようとする傾向がある。加えて、BTCのような新しい資産をBSに載せて開示するのを嫌がる投資家も少なくなさそうだ。

 さらに、期初の定めた投資計画にない新しいアセットに投資するのが容易でなく、BTC投資を開始するとしても新年になってからという投資家も多そうだ。

 そうした投資家が期末に売った分は、新年には買い戻される、ないしはさらに買われる形となる。こうした動きはBTC ETFフローで見ると分かりやすい。クリスマス休暇が意識される12月19日から年末にかけて7営業日で、ETFフローは17億ドルの流出となった。これに対し、新年の3営業日で16億ドルの流入となっている。これが行って来いの正体だ。

マイクロストラテジーの保有BTCと日次換算した購入ペース

マイクロストラテジーの保有BTCと日次換算した購入ペース
BiTBOから楽天ウォレット作成

 マイクロストラテジーの購入も相場をけん引した。同社は11月11日~12月16日の35日間に16万BTC購入している。おおよそ1日4,500BTCと発行量の10倍の買い圧力だ。これがETFフローと相まって、相場を7万ドルから10万ドルに押し上げた。ところが、12月16~30日にかけて14日間で7,400BTC、1日辺り530BTCの買いとこれでも発行量を上回っている。

 ただし、上記のETFからの17億ドルの流出を1日辺りのBTC価格にざっくり換算すると、19~31日までの12日間(片端)で10万ドルとすると、1日1,400BTCの売り圧力となり、マイクロストラテジーの買いを飲み込んでしまった訳だ。

 一方、年初の7日間は1日2,300BTCの買い圧力となり、相場を押し上げた訳だ。加えて、マイクロストラテジーはBTC購入資金として20億ドルの劣後株発行を発表した。この調達がうまくいけば、さらなる買い圧力が期待される。また、同社に続いてBTCを購入する企業が相次いでおり、当面の相場の押し上げ材料となりそうだ。