米国株の「割高感」をどう見る?
実際に、足元の米国株には割高感があるのも事実です。
<図3>S&P500(月足)と長期PERの推移(2024年12月20日時点)

上の図3は、S&P500(月足)と、長期PER(株価収益率)の推移を示したものです。この図はこれまでのレポートでも何度か紹介したことがあります。
足元の長期PERは35倍を超えていることが確認できますが、図3の表示期間(30年)のあいだに35倍を超えたのは2回しかありません。
それだけ現在の株価が割高ということになりますが、だからと言って、すぐに株価が下落するわけではなく、割高感がありながらも株価の上昇が続くという展開は図3の左側を見ても確認できます。
ただし、割高感が修正される局面へ移行した際には株価の大幅下落を伴っていること、35倍超えが常態化していた1999~2000年にかけてはITバブルの終盤から崩壊がはじまった時期であることは意識しておいた方が良さそうです。
もちろん、企業が現在のPERを正当化できるほどの利益を生み出すことができるのであれば、株高基調が続くことになりますので、2025年1月20日のトランプ米大統領就任のタイミングで相次ぐ企業決算の動向が米国株市場にとっての最初のチェックポイントになりそうです。
金利面から見た株式の割高感
また、米国株の割高感については、企業の稼ぐチカラ(利益)だけではなく、金利面からも感じ取ることができます。
<図4>米株価指数の益回りと米10年債利回り比較(2024年12月20日時点)

上の図4は、米10年債利回りと米株価指数の益回りの推移を示したもので、図3と同様に、これまでのレポートで何度か紹介しています。
この図が意味するのは、「リスク資産である株式と安全資産である債券とのあいだにあまり差が出ていない」ということです。本来であれば、リスクを負っている分、株式の益回りの方が高くなり、図4で過去にさかのぼっても、確かにその傾向が読み取れるのですが、足元ではそうなっていません。
株式の益回りが低下するということは、企業が稼ぐ利益の成長スピードよりも株価上昇のピッチが速いことを意味するため、それだけ割高感が生じることになります。
また、米10年債利回り自体も、長期間にわたって上昇傾向が続き、足元でも高止まりしていることも気掛かりです。
<図5>米10年債利回り(日足)の推移(2024年12月20日時点)

上の図5は米10年債利回り(日足)の推移を示していますが、足元で4.5%台後半まで急上昇しています。また、昨年10月と今年4月の上値を結んだラインも上抜けており、チャートの見た目からは、金利の上昇トレンドを感じさせる印象となっています。
12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で今後の利下げペースの鈍化が示唆されたほか、来年から発足するトランプ新政権への警戒などがこうした値動きに現れていると思われます。
一般的に、高金利は資金調達コストが増加することによる経済活動の抑制効果をはじめ、図4でも見てきたように、「無理にリスクを負うよりも、国債に投資した方が有利」ということになるなど、総じて株式市場にとってネガティブな材料になります。
ちなみに、米10年債利回りが4.5%を超えていた今年の4月や、昨年10月の米株市場は下落基調をたどっていました。