資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動を分かりやすく解説します。

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新NISAを初めて1年が過ぎて、2年目はどうしたらいいのか?

田中志穂さん(仮名)会社員・36歳(既婚、ご主人も会社員、子ども1人)

 2024年から制度改正された新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)をきっかけに積立投資を始めた田中さん。1年目では、ランキング上位にあった投資信託でS&P500種指数と全世界株式を投資対象とした投資信託の二つにそれぞれ2万円ずつ投資をスタートしました。

 これまで投資の経験がなかったので、いざ投資を初めてみると最初は日々投資信託の価格が上下することが気になっていましたが、日々の生活や仕事でバタバタしているうちに気にならなくなってきました。

 あっという間に年末が近づいてきて、ある日投資の状況を確認してみることにしました。すると積立投資の投資原資は予定通り20万円を超えていて、評価益が予想より大きく出ていることに安心しました。

 今年はいい結果で投資を終えることができそうだと感じた田中さんは、来年はもう少し金額を増やしたり他の商品にも投資をしたりしてみようかと考えています。

 田中さんのように新NISAを経験した人は、2年目の投資ではどんなことに注意しながら投資をしたらいいのでしょうか?

新NISA1年目と2年目の違いは?何に注意したらいいのか?

 旧NISA制度は、2014年1月から一般NISAが始まり、NISA制度が開始してからは10年以上が過ぎています。その中で、さまざまなNISAに関する知見が生まれ、使い方はどうしたらいいのか議論がされてきました。

 しかし、新NISAは2024年から開始され、今年は、誰もが新NISA1年目でした。旧NISAの経験者は、これまでの投資経験をもとに新NISAを使う人もいれば、初めてNISAを使った人もいたでしょう。メディアなどでおすすめの資産形成の積立投資をしたり、高配当株式を買ってみたりなど、みんなで試しながらの1年でした。

 この1年で多くの投資家が新NISAを経験し、疑問や悩みなどは、さまざまなメディアを通じて共有され、解決されていきましたが、情報が多過ぎて判別できないという声もききます。

 そこで今回は、新NISA2年目にあたって注意したいこと、やってはいけないことをお伝えしたいと思います。

新NISA、2年目で注意したいこと1:1年目の振り返りを忘れないこと

 投資知識は学ぶことで身につきますが、投資経験はただ投資を行うだけではなく、投資した結果を振り返ることで身につけることができます。特に新NISAで投資を経験した貴重な1年目は経験値としてとても濃厚なものでしょう。

 では、どんなことを振り返ったらいいのでしょうか? 例を挙げてみると、「1年目に投資した金額は適切な範囲と言えたでしょうか?」「投資した商品の値動きは自分の許容できるリスク(投資資産の価格変動)でしたか?」「投資する前と実際に投資した後では投資目的や投資したい商品に変化はありましたか?」などが考えられます。

 その結果は、望んだ通りの結果だった人もいればそうでない人もいるでしょう。ただNISAで長期積立投資を行うことを目的としていたなら「長期」投資のたった1年目に過ぎません。貴重な初年度ですが、まだ投資の成果を求めるには早過ぎます。

 反省するべき箇所は次年度で修正するべきです。ライフプランの大きな変化があれば投資を継続できないかもしれませんが、無理のない範囲で継続することが大切です。1年間の経験をもとに自分の収支や家計状況を考慮した「適切な投資金額」「投資目的にあった商品」で投資できていたかを振り返ってみましょう。