FOMCはいらない?政策金利は2年国債金利に追随するだけである!
FOMC(米連邦公開市場委員会)は市場の予想通り3会合連続の利下げを決めた一方、2025年に見込む利下げ回数を2回に減らした。これが市場では驚きと受け取られ、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が予想外にタカ派に転じたことで市場は急落したと報道されている。
S&P500CFD(5分足)

出所:楽天MT4・石原順インディケーター
米国市場はユーフォリア(過度な幸福感、陶酔感、高揚感)状態にあり、パウエルが「利下げをやめそうなこと」がショックだったようだ。しかし、12月16日時点のFF(フェデラルファンド)金利先物市場でそれはすでに織り込まれており、FOMCの「ドット・プロット」はそれを後追いしているだけである。
FF金利先物市場の予想(2024年12月16日時点)

-2025年1月 据え置き
-2025年3月:4.00-4.25%に25bps引き下げ
-2025年5月 ホールド
-2025年6月 ホールド
-2025年7月:据え置き ホールド
-2025年9月:25bps引き下げ、3.75-4.00%へ
-2025年10月 ホールド-2025年12月 ホールド
出所:クリエーティブプランニング
FOMCの「ドット・プロット」(FOMC参加者の政策金利見通し)

出所:FRB
債券王ジェフリー・ガンドラックは、かねてより「FF金利は2年国債金利に追随するだけだ」と述べている。
1984年以降のFF金利と米国2年国債金利の推移

米国2年国債金利は、FRBの次回の金利動向の先行指標とみなされている。だから、投資家はほとんど当たったことのないFOMCの「ドット・プロット」を見るより、景気に最も敏感に反応する米国2年国債金利を見ておけばいいのである。
米国2年国債金利(週足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
米国債市場の本当の問題は、常軌を逸した米国債の供給量にある。現在、米国の巨大な債務の壁が満期を迎えている。発行残高28兆ドルの米国債のうち、これから3年間で米財務省は15.5兆ドルの債務を借り換えなければならない。
米国の債務を返済するための利息コストは、ここ数カ月で爆発的に上昇している。長期金利が急上昇するのを防ぐためFRBはいずれQE(国債買い入れ)をやることになるだろうが、それはインフレを急上昇させることになるだろう。
巨大な債務の壁と米国債の償還

米国の負債の利子は年間1兆2,000億ドルを超える。政府の歳入の4分の1は債務の利子の支払いに充てられており、債務の利子は現在、高齢者への社会保障給付に次いで連邦予算で2番目に大きな項目となっている。
米国が公式な不況に陥ったとき、どれだけの負債が必要になるのだろうか? 36兆ドルの負債があり、数カ月ごとに1兆ドルずつ増えている現状では、信用拡大は限界に達している。いずれ崩壊は避けられない。レイ・ダリオはミルケン研究所アジアサミットで、「債務は無視され、実質的な負担を軽減するためにインフレが利用される可能性が高い」と述べた。
米国株式市場が史上最高値を更新する中、利下げなど必要であろうか? FRBが今回の利下げで本当にやろうとしていたことは、銀行部門の未実現損失を救済することである。米国の銀行の評価損を減らすには利下げしかない。
銀行の未実現損益の推移

出所:X(realejantoni)
一方、日本銀行は本日12月19日の会合で予想通り基準金利を0.25%に据え置くことを決定した。日本は過去数十年間、経済と社会の安定を維持するために驚くほど多額の赤字国債を発行してきたため、政府の財政は非常に脆弱(ぜいじゃく)であり、わずかな金利上昇でさえ破滅的な事態を招きかねない。
日本2年国債金利(月足)

出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
日本の対GDP(国内総生産)債務比率はおよそ250%である。日本は金利を大幅に上げることはできない。なぜなら、金利を上げると政府の予算が破綻し、低金利債務でいっぱいの年金基金のほとんどが破綻する可能性があるからだ。こうした中、ドル/円は再び高値をうかがう動きとなっている。
ドル/円(日足)

出所:楽天MT4・石原順インディケーター