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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
決算レポート:ソニーグループ(ゲーム事業が好調)
決算レポート:スポティファイ・テクノロジー(音楽配信事業の好調続く)

毎週月曜日午後掲載

本レポートに掲載した銘柄ソニーグループ(6758、東証プライム、NYSE)スポティファイ・テクノロジー(SPOT、NYSE)

ソニーグループ

1.ソニーグループの2025年3月期2Qは、2.7%増収、73.0%営業増益

 ソニーグループの2025年3月期2Q(2024年7-9月期、以下今2Q)は、売上高2兆9,055.97億円(前年比2.7%増)、営業利益4,550.77億円(同73.0%増)となりました。増収率は低かったですが、ゲーム&ネットワークサービス事業の大幅増益によって、全社営業利益も大幅増益となりました。

表1 ソニーグループの業績

ソニーグループの業績
株価 3,358円(2024/12/13)
発行済み株数 6,034,662千株
時価総額 20,264,395百万円(2024/12/13)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は当社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

2.セグメント別業績動向-今2Qはゲーム、半導体が好調。通期会社予想はゲームは上方修正だが、半導体は下方修正-

ゲーム&ネットワークサービス:今2Qは売上高1兆715.30億円(前年比12.3%増)、営業利益1,388.49億円(同2.84倍)となりました。ハードウェア売上高は2,182.24億円(同24.1%減)となりプレイステーション5(PS5)販売台数がピークアウトしているために減少しましたが、ゲームソフトウェアは6,123.39億円(同27.8%増)と好調でした。ゲームソフトウェアのうち、デジタルソフトウェア(ゲームソフトのダウンロード販売)が2,586.19億円(同28.7%増)となりました。サードパーティ製ソフトでは、「College Football 25」(エレクトロニック・アーツ)、「黒神話:悟空」(ゲームサイエンス)など、自社製では「アストロボット」などが好調でした。

 また、アドオンコンテンツ(ゲームソフトの拡張版、ゲーム内通貨、ゲームアイテムなど)が3,004.05億円(同35.2%増)と好調でした。ネットワークサービス(オンラインサービスの「PS Plus」の会費等)は1,607.79億円(同20.1%増)と順調に伸びました。

 なお、PS5販売台数は380万台(前2Qは490万台)、ゲームソフトウェア販売本数は7,770万本(同6,760万本)、このうちファーストパーティソフト(100%子会社のソフト、自社製ソフト)は530万本(同470万本)となりました。

 今2Qの結果を見て、会社側は2025年3月期予想を前回の売上高4兆3,200億円(前年比1.2%増)、営業利益3,200億円(同10.3%増)から売上高4兆4,900億円(同5.2%増)、営業利益3,550億円(同22.3%増)へ上方修正しました。楽天証券予想も会社予想と同じとします。来期も堅調な業績が予想されます。

表2 ソニー:セグメント別業績(四半期)

ソニー:セグメント別業績(四半期)
単位:100万円
出所:会社資料より楽天証券作成
注:売上高は内部取引を含む。

音楽:今2Qは、売上高4,481.97億円(前年比9.7%増)、営業利益903.60億円(同11.6%増)となりました。前年比では堅調ではありますが、伸び率は今1Qから低下しました。音楽制作、音楽出版ともに今1Q比減収となりましたが、これはヒット曲の規模とライブ興行収入等が今1Qより小さかったこと、映画業界全体で映画、ドラマ制作が滞っているため、音楽出版の売上高が影響を受けたことによると思われます。映像メディアプラットフォームは前年比1.1%減でしたが、今1Q比ではゲームアプリと映像作品の寄与で増収となり、音楽制作、音楽出版を補いました。

 2025年3月期会社予想は前回予想と同じ一桁増収増益です。2026年3月期は映画、ドラマ向けの増加が期待できるため、今期よりは高い伸びの業績が予想されます。

映画:今2Qは、売上高3,557.96億円(前年比11.0%減)、営業利益184.75億円(同37.2%減)となりました。2023年7月14日から同年11月8日まで続いたアメリカ俳優労組のストライキはすでに終わりましたが、影響が長引いています。ただし、来期はストライキの影響から脱してある程度高い業績の伸びが期待されます。

エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S):テレビ、オーディオ、放送機器等の事業部門です。今2Qは売上高6,197.59億円(前年比1.0%増)、営業利益701.55億円(同14.9%増)となりました。

 このセグメントでは、スポーツ事業を成長領域と位置付けています。現在の主力製品は「Hawk-Eye」(映像データを元にした審判判定支援ソリューション)です。今年8月にはアメリカNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)とのテクノロジーパートナーシップを結んだほか、今年10月には、高精度モーションキャプチャー技術とデータ分析により選手のパフォーマンス向上などのサポートサービスを行うアメリカ「KinaTrax」社を買収しました。会社側ではスポーツ事業を小規模でも高収益の事業にしたいとしています。

 通期では今期、来期とも業績横ばいが予想されます。

イメージング&センシング・ソリューション(I&SS):今2Qは売上高5,355.67億円(前年比31.8%増)、924.12億円(同99.3%増)となりました。スマートフォン向けイメージセンサの好調と円安により大幅増収増益になりました。スマホ向けイメージセンサの大判化、高性能化も寄与しました。大手顧客(会社側は顧客名は言わないがアップルと思われる)の新型スマートフォンの出荷開始が寄与しました。

 一方で、会社側は2025年3月期通期業績予想を、前回の売上高1兆8,500億円(同15.4%増)、営業利益2,750億円(同42.1%増)から、売上高1兆7,700億円(同10.4%増)、営業利益2,500億円(同29.2%増)へ下方修正しました。大手顧客の生産計画下方修正に伴うものです。

 来期2026年3月期は、iPhoneだけでなく、他のスマートフォンメーカーでも高性能大判イメージセンサの採用が進む可能性がありますが、iPhone向けが下方修正された影響は大きいと思われます。2026年3月期の業績の伸びは今期を下回ると思われます。

金融:今2Qは売上高マイナス633.13億円(前年同期は1,039.15億円)、営業利益657.36億円(同4.19倍)となりました。金融サービス収入がマイナスになるという変則的な決算となりましたが、これは、ソニー生命の外貨建て保険の運用資産の円ベース評価額が円高によって大きく目減りしたことによります。ただし、外貨建て負債も円高によって減少しているため、損益には影響はありませんでした。営業利益はソニー生命の金利変動の影響で大幅増益となりました。

 今期の会社側業績予想は前回予想と同じ売上高9,100億円(同48.6%減)、営業利益1,450億円(同16.5%減)です。来期は楽天証券では横ばいと予想します。

 なお、ソニーフィナンシャルグループは、2025年10月を目途にソニーグループからのパーシャルスピンオフと株式上場を計画しています。これが実行されると、ソニーグループの持ち株比率は20%未満となり、ソニーグループの連結対象から外れる見込みです。現在のところ、計画通りに進捗している模様です。

3.楽天証券では今期、来期営業利益予想を小幅下方修正するが、業績の伸びは続くと予想

 セグメント別動向を集計した結果、楽天証券では2025年3月期業績予想を会社予想と同じ売上高12兆7,100億円(前年比2.4%減)、営業利益1兆3,100億円(同8.4%増)、2026年3月期を売上高13兆3,700億円(同5.2%増)、営業利益1兆4,700億円(同12.2%増)と予想します。楽天証券の営業利益予想を、今期、来期とも小幅下方修正します。

 今後の注目点は、まず、ゲーム&ネットワークサービスの伸びです。PS5市場が成熟化するにつれて優良ソフトが増えているため、継続的な成長が予想されます。次世代機はまだ情報がありませんが、仮に発売されても、ゲームソフト市場が大きく、PS5ユーザーも多く、自社製ソフトの開発能力も向上しているため、端境期は最小限で済むと思われます。

 音楽は安定成長が予想されます。映画は映画製作の回復によって2026年3月期にある程度高い伸びが期待できると思われます。

 一方で、I&SS事業は来期も増収増益が予想されますが、伸び率は鈍化すると予想されます。スマホ向けイメージセンサの高性能化、大判化がどこまで進むのか不透明感もあります。iPhoneの売れ行きにも不透明感があります。

 全体では、今後、安定成長が期待できると思われます。

表3 ソニー:セグメント別業績(通期)

ソニー:セグメント別業績(通期)
単位:100万円
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ1 ソニーグループ:ゲーム&ネットワークサービス事業の業績

ソニーグループ:ゲーム&ネットワークサービス事業の業績
単位:100万円、出所:会社資料より楽天証券作成

4.今後6~12カ月間の目標株価を前回の3,300円から4,000円に引き上げる

 ソニーグループの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の3,300円(前回の目標株価は1対5分割前の1万6,500円)から4,000円に引き上げます。

 楽天証券の2026年3月期予想EPS(1株当たり利益)181.9円に、ゲーム、音楽、映画の長期的成長性を評価して、想定PER(株価収益率)20~25倍を当てはめました。

 中長期で投資妙味を感じます。