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著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「日銀の利上げは12月か1月か、植田総裁はまだ決めていない」
11月30日の植田総裁インタビュー記事の狙いとは
11月30日に日経新聞が報じた植田和男総裁のインタビュー記事(「植田日銀総裁、利上げ『賃金・米国見極め』 データ想定通り 植田和男・日銀総裁インタビュー」)を受けて、市場での12月利上げの織り込みが一気に低下しました。
先週のレポートで、その中身について、とても12月利上げの織り込みを狙ったとは思えないもので、むしろ1月利上げを示唆しているように読めると書きましたが、どうやら実際、12月利上げに傾く市場の見方を少し冷やしたかったという意図があったようです。
これまで植田総裁は、10月のサービス価格に市場の注意を促し、その前向きな評価を伝えることによって、周到に12月利上げに向けた情報発信を行ってきました(図表1)。しかし、織り込みが進み過ぎると政策の自由度が奪われるため、少し慎重なトーンを打ち出したのだろうと推察されます。
<図表1 最近の植田総裁の発言>
別に12月でなくなったというわけではない
しかし、11月30日のインタビュー記事で植田総裁は12月利上げを否定したわけではありません(図表2)。
<図表2 植田総裁インタビュー記事での発言>
中村豊明審議委員も、12月5日に広島で行った金融経済懇談会後の記者会見で、「別に12月でなくなったというわけではないし、12月でやるということでもない」と述べています(図表3)。
<図表3 中村豊明審議委員の発言>
利上げは12月か1月か、植田総裁はまだ決めていない
植田総裁は利上げを12月に行うか、1月に行うか、まだ決めていないと思われます。直前に判明するFRB(米連邦準備制度理事会)の12月FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果やそれに対する市場の反応まで確認した上で、決断するのでしょう。
少なくとも、12月か1月という市場の織り込みはほぼ完了しているわけですから、どちらに転んだところでコミュニケーションが足りないといわれることはありません。
氷見野良三副総裁の金融経済懇談会が1月14日に開催されることが、日本銀行記者クラブに告知されました。総裁・副総裁の講演予定が事前に告知されるのは異例のことであり、1月利上げの布石と捉える向きもありますが、12月に利上げをしたとしてもそれを説明すれば良いだけのこと。1月利上げの決め手になるわけではありません。
12月18~19日に開催される金融政策決定会合はまさにライブになることが予想されます。有力BOJウオッチャーの多くは1月利上げに流れていますが、それはそれ。12月利上げを見送れば市場の見方は1月に集中し、かえって日銀の手足を縛ることになります。
さて、12月金融政策決定会合の結果やいかに。静かに結果を待つことにしましょう。