35年間の米国株のパフォーマンス
私が米国に来たのはブラックマンデーの大暴落の翌年の1988年です。その年S&P500に1ドル投資したとして、2023年末までに$19.30に増えた計算(配当は再投資しなかったと仮定)になります。この間の年率複利成長率(True CAGR)は8.57%でした。(同じ期間の日経平均は0.87%でした。)
人生での選択
1988年当時日本株はバブル相場の真只中でブラックマンデーの下げに対しても東京マーケットはしなかやに戻りを演じました。それで不死身感が投資家の間に芽生えたのです。一方、米国に対しては「アメリカ人は働かない!」、「学校の教育の質が低く、算数もろくにできない」というような批判が沢山ありました。ブラックマンデーでS&P500指数は1日で−20.47%を失ったので「それ見たことか!」という声が多かったように思います。つまり当時日本株から米国株に転身するのは、勇気の要る選択だったのです。
バリュエーションを甘く見るな!
それでもなぜ(米国の方が良いな)と思ったかといえば株式市場のバリュエーションが日本は約60倍だったのにたいし米国は16倍だったからです。
高いバリュエーションにつけるクスリはありません。
どんなに国民が勤勉で、企業が素晴らしい技術を持っていて、急成長していようが、べらぼうなバリュエーションがついているということはバラ色の未来が全て株価に織り込まれてしまっていることを意味します。
いまは「米国の株価指数一択でじゅうぶん!」というような風潮がはびこっています。私自身、「積立やるなら米国の株式市場をまるごと買うようなETF(上場型投信)で十分では?」ということを主張してきた張本人なわけですからそのような風潮を批判する立場では無いのですが、それでも過去12カ月の一株あたり利益に基づいたS&P500のPERは27.6倍という高い水準になってしまっています。
世界の投資可能株式をぜんぶ網羅したACWI(オールカントリーワールド指数)に占める米国株の割合は66.3%です。でも世界のGDPに占める米国のGDPの割合はドルベースで約26.3%、購買力平価ベースで約15.5%なので米国の株式市場はその実力に比べて余りにも過大評価され過ぎているのです。
こういう時に株を買っても、その後の2〜3年のリターンは落胆を誘うものになるでしょう。
ちょっと周りを見ると安い市場はゴロゴロある
しかもちょっと周りを見ると割安に放置されている市場はゴロゴロあります。とりわけ新興国株式は過去13年に渡って世界の投資家から全く顧みられず、横ばいを続けています。
事実、私が楽天証券でコラムを執筆しはじめたときは専ら新興国のADR(米国預託証券)に関する記事からスタートしました。なぜなら当時は米国株はドットコムバブル崩壊と、その後の9・11同時多発テロの傷口を舐めている状態であり、投資家は新鮮味のあるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)のような投資アイデアに関心を抱き始めていたからです。
いまぐるっと一周して不死身感に包まれている米国株のパフォーマンスが今後劣後しはじめ、逆に鼻つまみモノになっている新興国に物色の矛先が向いたとしても私はぜんぜん驚きません。