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著者の松田 康生が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「ついにBTC10万ドル突破!トランプ当選で確変入り?~12月のビットコイン見通し~」
11月のビットコインイベント
NEW! 11月6日 | トランプ氏当確で史上高値更新・本格上昇期入り |
NEW! 11月19日 | トランプ氏のメディア企業、Bakkt買収交渉 |
NEW! 11月20日 | 自公国3党合意、国民民主、暗号資産の分離課税要求 |
NEW! 11月21日 | ホワイトハウス、暗号資産担当官新設 |
NEW! 11月22日 | ゲンスラーSEC委員長、辞任表明 |
*2024年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た12月見通し
11月の振り返り
11月のビットコイン価格(円)とイベント
11月のBTC相場は大幅上昇。7万ドル近辺で始まると10万ドル手前まで上昇し、1カ月で約3万ドルと過去最高の上昇幅を記録した。
月初はイランがイスラエルに再報復を準備しているとの報道や米大統領選挙戦終盤でのハリス氏の追い上げもあり、6万7,000ドル近辺に値を落とした。しかし、日本時間6日に大統領選の開票が始まると事前の予想を覆すトランプ氏の圧勝となり、同日午後には当選確実と報じられる中、BTCは7万3,000ドル台のそれまでの史上最高値を更新し、7万7,000ドル台に上伸した。
すると政府効率化省(Department Of Government Efficiency)責任者として政権入りするイーロン・マスク氏が推すドージコイン(DOGE)や暗号資産政策関連で政権と近いとうわさされたカルダノ(ADA)などトランプ政権誕生で有利とみられる銘柄が急騰し、BTCも連れ高となり8万ドル台に上値を伸ばした。
さらに親暗号資産政権の誕生は投資家や企業によるBTC買いへのお墨付きを与えた格好となり、全米最大の交換業者でSECと訴訟を抱えるコインベース株やBTCを大量に保有するマイクロストラテジー株などが急騰し、BTC ETF(上場投資信託)にも記録的な資金流入が見られる中、BTCは9万ドル台に上値を伸ばした。
BTC ETFフローとBTC/USD
結局、トランプ氏が当確となった11月6~14日まで9日連続で史上最高値を更新し、6万8,000ドル台から9万3,000ドル台まで約2万5,000ドル上昇した。この当確直後のトランプラリーは下院でも共和党が過半数を確保、トリプルレッド(米国で大統領職と上下両院の多数派を共和党が占める状態)が確実となった時点で一服し、しばらく9万ドルを挟んでのもみ合い推移が続いた。
すると、トランプ氏のメディア企業DJT(トランプ・メディア&テクノロジー・グループ)が暗号資産先物業者Bakktの買収を検討し、マイクロストラテジーは46億ドルの購入に続いた。
また、転換社債を17.5億ドル(後に26億ドルに増額)発行してBTCを追加購入し、商務長官に暗号資産推進派のラトニック氏が就任、ホワイトハウスに暗号資産担当官を新設するなどといったヘッドラインが続いた。
後述するが、こうした新政権の閣僚人事が続く中、新政権の親暗号資産姿勢が鮮明となり、これが企業や機関投資家のBTC購入に拍車をかけた。さらにゲンスラーSEC委員長が1月20日付けでの辞任を公式に表明すると、BTCは10万ドルに肉薄した。
しかし、この水準で跳ね返されると、感謝祭を前にしたポジション調整もあり9万ドル台に失速。すぐさま切り返したが、今度はゲンスラー委員長辞任でメリットを受ける銘柄としてXRPなどアルトコインが上昇し、続いてアルトターンと呼ばれる、出遅れている銘柄を物色する動きが強まり、BTCは10万ドル手前で一進一退を続ける展開が続いていた。
12月に入り、そうしたアルトの物色買いが一巡し、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長がBTCをデジタルゴールドと認めたこともあり、一時的に10万ドル突破に成功した。
第1次トランプラリー
トランプ氏勝利により暗号資産が買われた直接的な理由は二つ。一つはゲンスラーSEC委員長の更迭、もう一つは戦略備蓄としてのBTCの政府保有。いずれも7月のビットコインカンファレンスで自ら公約したものだ。
前者は民主党の暗号資産「敵視」政策を辞めさせるというもので、実際に同委員長の下で暗号資産業者は100回以上起訴され、訴訟費用が4億ドル以上に上ったと業界団体は報告している。
判決まで法廷闘争が続いたケースではSECは結構敗訴しており、裁判所も同委員会は「きまぐれで、恣意(しい)的だ」と断罪、訴訟権の乱用として被告側の訴訟費用を負担するよう命じられるケースも出ていた。
しかし、SECから後出しで提訴されることを恐れた暗号資産業者の米国脱出が問題視された。また、政権が変わったことで民主党政権下で水面下で行われていた暗号資産業者に銀行口座を作らせないように金融機関に圧力をかける、いわゆるチョークポイント2.0も断罪され、下院で調査されることとなった。
また、その巣窟と指摘とされ、民主党の反暗号資産の旗手、エリザベス・ウォーレン議員が設立したCFPB(消費者金融保護局)はマスク氏によって廃止が検討されている。
後者の戦略備蓄には二つの可能性がある。シルクロードからの欧州などで米政府が保有する20万BTCを売却せずに保有するパターン、この場合は大統領権限で可能との見方もある。
もう一つはさらに新規に購入すること。共和党のルミス上院議員は新規に100万BTCを購入する法案を提出している。こちらは法案や予算措置のために議会を通す必要があり、上院で60票押さえていない状況では民主党からの造反が必須となり、ハードルが高いが、実現すれば相当なインパクトとなる。
またマクロ政策も間接的にBTC買いをサポートしているとみられている。6月のBloombergのインタビューでトランプノミクスの基本は低金利、低課税、ドル安と明言し、いずれの政策もドルの減価に対するヘッジとしてのBTCにポジティブとなる。こうしたことからBTCは他のアセットに比べてより長く、より大きい、トランプラリーを見せることとなった。
第2次トランプラリー
上記はトランプ当選による直接・間接的なBTC相場への影響だが、実は影響はこれだけに止まらなかった。むしろ、上記の第1次トランプラリーはある意味でより大きな動きの引き金に過ぎなかったというべきなのかもしれない。
実際、株高やドル買いといった当初のトランプラリーは1週間前後で一巡し、その後、果たして第2次トランプ政権は各アセットについてプラスかマイナスか、閣僚人事を見ながら見極めるフェーズが訪れたが、その中でBTCを含む暗号資産は顕著なパフォーマンスを見せている。
トランプラリー(BTC/USD・SP500・ドルインデックス・米10年債利回り)
背景の一つはトランプラリーをきっかけにBTCが本格的に上昇局面入りしたことだ。
BTCは供給要因により4年サイクルを描いており、供給量が半分となる半減期の前から期待先行で上昇し、半減期で実際に供給が半分になると利食い売りや採算が悪化したマイナーの売りによる低迷期に入り、半減期から半年~1年後に供給減の累積効果が効き始め、半年~1年の本格上昇期に入る。
世間では一般に暗号資産バブルと呼ばれる動きだ。トランプラリーはこのバブル期入りの引き金を引いた格好だ。
半減期サイクルによる価格イメージ
もう一つは企業や国・自治体の暗号資産買いにお墨付きを与えた点だ。BTC市場は歴史的に個人が中心で、ここに法人マネーが入ってくるとこの相場は化けると言われ続けていた。
2020年から2021年の前回の半減期後のバブル期は米国を中心に法人の参入ブームが始まったが、この時期にBTCを購入したのはヘッジファンドなどの小回りが利く投資家で、年金など腰の重い投資家はカストディの問題などもあり参入が難しかった。
今年1月の株式口座で投資できるETF(上場投資信託)登場によりで状況が変わったものの、当初2月から3月のブームは個人などの小口が中心で、年後半には、こうした腰の重い、しかし莫大(ばくだい)な資金量を誇る機関投資家が本格購入を始めるETFフロー第2波が始まると予想されていた。
ところが、人々のお金を預かって投資するため、より説明責任が求められる機関投資家にとって、前評判で大接戦とされた大統領選の結果が出るまでは手が出し難い状況が続いた。大統領選の結果が判明し、それも親暗号資産のトランプ氏勝利によって、年金などの機関投資家や企業財務、さらには米国自体のBTC投資にGOサインが出た格好となった。
今年の1月にブラックロックのフィンクCEOが、BTCは財政悪化による法定通貨の毀損(きそん)に対するヘッジ、デジタルゴールドだとしてベビーブーマー世代のBTC ETF購入にお墨付きを与えた形となった。
しかし、トランプ政権の誕生が年金や企業財務、さらに国や自治体のBTC購入にお墨付きを与えた格好となった。何せ大統領を筆頭に副大統領や政権幹部の奥が暗号資産を保有しており、米政府自体も購入する可能性が浮上している。
ビジネス面でもトランプ氏のソーシャルメディア企業DJTが、NY証券取引所の親会社が運営する暗号資産先物業者Bakktの買収を検討し、マスク氏のテスラはBTCを保有、商務長官のラトニック氏が率いるキャンター社はステーブルコインのテザー社への出資を検討している。
見方を変えれば、暗号資産を怪しいものとして規制するか、成長の糧として積極的に取り込むか、米国民に問うたところ、暗号資産積極派が圧勝し民意を得た格好となっている。事実、全米で4,000万人とも言われる暗号資産ユーザーの意向が今回の選挙結果を左右した部分も大きいと思われる。
機関投資家からすれば、個人の考えはともかく、国の方針が180度変わった以上、暗号資産から目をそらし続けることは難しい状況になりつつある。
このようにトランプ政権の誕生はその政策の直接・間接的な影響だけでなく、本格上昇期入りのきっかけとなった。また、年金や企業財務、国や自治体といった腰の重い投資家のBTC購入にお墨付きを与えた点が大きく、少なくとも半年間は上昇相場が続く可能性が高い。
小職は2025年4月ごろまでにドル建てで22.5万ドル、円建てで3,500万円まで上昇すると予想しており、多少の乱高下はあろうがその通過点である12月も上昇基調が続くと思われる。