11月に入り価格が急騰した暗号資産
日本株は9月以降横ばいの動きが続いていますが、暗号資産(仮想通貨)の価格は大きく上昇しています。特に米国大統領選挙にてトランプ氏の勝利が伝えられた後、ビットコインやリップルなどが急騰しています。
ビットコインは1カ月で50%上昇、リップルに至っては1カ月で4倍以上になっています。
暗号資産が急騰するより前に購入・保有していた個人投資家の方は、皆さん大きな含み益になっていると思います。
中には利益確定の売却をした方もいるでしょうし、売却しようかどうか検討している方もいると思います。
では暗号資産を売却するとどのくらい税金がかかるのか、意識したことはありますか?今回のコラムは、それを所得別に比較してみたいと思います。
暗号資産の利益にかかる税金はどうなっているの?
暗号資産の利益に係る税金は、上場株式などとは全く異なります。上場株式などの売却益は「分離課税の譲渡所得」とされ、所得税15%、住民税5%の合計20%(これに復興特別所得税がプラス)となっています。
一方、暗号資産の売却益は「総合課税の雑所得」とされ、給与所得など他の所得と合算され、税額が決定されます。
税額は累進課税となっているので、所得が少なければ税率も小さいですが、所得が大きいと税率も大きくなり、上場株式などの売却益の税率20%よりはるかに高い税率となることもあります。
文章だけで説明してもピンとこないと思いますので、他の所得がどれだけあるかにより、暗号資産売却の税額がどのくらいになるかを計算してみたいと思います。
所得の大小で税額がかなり異なる
前提条件
- 暗号資産の売却益は100万円。
- それ以外の所得は、所得合計額から各種所得控除(基礎控除など)を差し引いた、課税対象となる所得額とする
- 住民税率は10%で計算し、均等割は加味しない
- 復興特別所得税は加味しない
ケース1:暗号資産売却益以外の所得が100万円の場合
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暗号資産売却益以外の所得のみの税額
15万円 -
暗号資産売却益を含めた所得に対する税額
30万2,500円 -
暗号資産売却益に係る税額
15万2,500円
ケース2:暗号資産売却益以外の所得が500万円の場合
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暗号資産売却益以外の所得のみの税額
107万2,500円 -
暗号資産売却益を含めた所得に対する税額
137万2,500円 -
暗号資産売却益に係る税額
30万円
ケース3:暗号資産売却益以外の所得が2,000万円の場合
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暗号資産売却益以外の所得のみの税額
720万4,000円 -
暗号資産売却益を含めた所得に対する税額
770万4,000円 -
暗号資産売却益に係る税額
50万円
このように、同じ暗号資産売却益100万円でも、他の所得がどれくらいあるかにより、税額が大きく異なることが分かると思います。所得が大きくなると、税率も50%以上となってくるため、おいそれと利益確定売りを出すのもちゅうちょすることになります。
年を分けて売却すれば税額を抑えられることも
暗号資産の売却益は総合課税ですから、他の所得が大きければ税率も上がりますし、暗号資産の売却益そのものが大きくなっても同様に税率はアップします。
こんなときに有効なのが、「2年に分けて売却する」というものです。特に今のような年末の時期であれば、年をまたいで売却することも検討してみましょう。
例えば今年の暗号資産の売却益が1,000万円、他の所得が今年も来年も500万円とすると、前提条件が上の計算の際と同様とすれば、今年と来年の税額は次のようになります。
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今年
所得1,500万円、税額491万4,000円 -
来年
所得500万円、税額107万2,500円 -
合計額
598万6,500円
もし暗号資産の売却を複数回に分け、今年の売却益が500万円、来年の売却益も500万円とすると、今年と来年の税額は次のようになります。
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今年
所得1,000万円、税額276万4,000円 -
来年
所得1,000万円、税額276万4,000円 -
合計額
552万8,000円
今回のケースでは、このように売却年を複数年にすることにより、税額を45万円8,500円節減することができました。
現状、含み益が多額となっていて、いつ売却しようか考えている方は、このようにシミュレーションを行い、より有利な売却タイミング・売却方法を選択しましょう。