はじめに

 今回のアンケート調査は、2024年11月25日(月)~27日(水)にかけて実施しました。

 11月末の日経平均株価は3万8,208円で取引を終えました。前月末終値(3万9,081円)比では873円安となり、月間ベースでも再び下落に転じました。

 あらためて11月の株式市場を振り返ると、連休前で迎えた月初は一段安となったものの、その後は前月の下旬ごろから米国市場で活気づいていた「トランプトレード」を好感する格好で反発、トランプ氏の勝利に終わった大統領選挙後も、米主要株価指数が最高値を更新する流れを受けて上昇が続きました。

 ただし、日経平均は7日につけた高値(3万9,884円)がピークとなって4万円の節目に届かず、以降は3万8,000円台を下回る場面では買いが入る一方で、積極的に上値を伸ばしにいくような展開にはなりませんでした。

 11月は国内外の企業決算や金融政策イベントなど、相場に新たな動きが出てもおかしくない材料が相次いでいたのですが、「生成AI」から「トランプ次期政権への期待と不安」へと物色の中心テーマが変化しつつも、そのトランプ氏自体が不確実性を孕んでいることもあって、結果的に3万8,000円台から4万円台のレンジ相場が続くことになりました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、2,600名を超える個人投資家からの回答を頂きました。

 1カ月先の日経平均のDIは前回からさらに改善したものの、3カ月の見通しや為替の見通しについては、DIの値が後退する結果となり、株価と為替の先行きに対してやや慎重な姿勢も垣間見える印象となっています。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

「DIの微妙な結果は期待と不安の反映」

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先が+14.70、3カ月先は+8.28となりました。

 前回調査の結果がそれぞれ+3.41、+16.12でしたので、両者ともにプラスは維持したものの、1カ月先の強気見通しが強まる一方で、3カ月先は後退しており、今回の結果からは、「目先は株価上昇が期待できるが、中長期は微妙かも」といった心理が読み取れます。

 回答の内訳グラフを見てみると、1カ月先の強気派の割合は32.28%となっていて、前回(26.38%)から増加しています。強気派の割合が30%を超えるのは今年の2月以来です。

 なお、弱気派の割合は前回の22.97%から17.57%へと減少しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 今回のアンケート期間(11月25~27日)の日経平均は、取引時間中に3万9,000円台乗せから3万8,000円台割れの場面を見せるなど、軟調気味に推移していたこともあり、必ずしも強い値動きではなかったのですが、それでも1カ月先DIの値が大きく改善したのは、下値不安が強まっていないことが考えられます。

 実際に、10月以降の日経平均は3万8,000円から4万円のレンジ相場が続いており、3万8,000円が下値のサポート水準として強く意識されている可能性があります。

 チャートを過去にさかのぼってみても、7月から8月の乱高下の時期を除いて、やはり3万8,000円が株価のサポートとして機能している場面が多く見られます。今後もレンジ相場が続いたとしても、下値が堅い以上、少なくとも4万円までの株価反発は見込めるため、目先の強気につながったと思われます。

 続いて、3カ月先についても見ていきます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 今回調査の3カ月先の強気派の割合は31.05%で、前回(36.09%)から減少していますが、一応3割超えを維持しているほか、弱気派も目立って増加していないこともあり、今回のDIの値が示すほど、強気の見通しは後退していないように思われます。

 足元の株式市場は12月に入り、2024年相場の最後の月を迎えました。日経平均はこれまでのところ、3万9,000円台を回復するなど、株価は反発基調をたどっています。まだレンジ相場から抜け出せていませんが、株式市場は季節的に「年末ラリー」など、株価が上昇しやすい時期となります。

 そのため、このままレンジ相場が続くのか、それとも、レンジを脱して新たなトレンドが発生するのかが12月相場の焦点になります。

 一般的に、レンジ相場が続くほど市場のエネルギーが蓄積され、レンジを抜けた方向に勢いが出やすいとされていますが、さすがに日経平均の2,000円の値幅内での株価の上げ下げはやや粗く、エネルギーを蓄積するには、もう少し株価が煮詰まるような動きが必要になってきます。

 また、12月に入ってからの日経平均の上昇は、好調な米国株市場を受けた相場地合いや、GPIF(年金積立管理運用独立法人)の運用方針見直し報道をきっかけにした、株式への組み入れ比率の引き上げ期待などが材料視されていることが影響していますが、やはり最大の注目点となるのがトランプ次期政権の動向になります。

 ただし、そのトランプ氏自体が、発言など不確実性を孕んでいることもあり、来年1月20日の大統領就任までは思惑で相場が動きやすく、期待と不安を抱えつつ、4万円を超える上昇と3万8,000円台を下抜ける展開の両方を想定しながら相場に臨む必要がありそうです。

今月の質問「2025年に注目できそうな株はありますか?」

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 ここからは、テーマを決めて行っている「今月の質問」についてです。11月のテーマは「2025年に注目できそうな株はありますか?」でした。個人投資家の皆さまが2025年をどのように考えておられるのか、さまざまな角度から尋ねました。

 質問1では、2025年に注目できそうな株の数を、尋ねました。

質問1:2025年に注目できそうな株はいくつありますか?

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 当該質問の回答者の64.4%が「1つ~5つ」を選択しました。次点で「注目できる株はない」24.0%、「6つ~9つ」が6.8%、「10以上」が4.7%と続きました。

 1年前の2023年11月に実施した同様の質問(2024年に注目できそうな株はいくつありますか?)では、「1つ~5つ」が63.8%、「6つ~9つ」が10.5%、「10以上」が8.5%、「注目できる株はない」が17.2%でした。(今月の質問 「2024年に注目できそうな株はありますか?」を参照)

 昨年と比較すると、「1つ~5つ」の割合はほぼ同様ですが、それ以上の個数が該当する選択肢の割合は大きく低下しました。そして「注目できる株はない」が、大きく上昇しました。

 質問2では、2025年の世界経済について、どのように感じているかを尋ねました。

質問2:2025年の世界経済について、どのように感じていますか?

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 最も多くの人が選択したのが「ある程度楽観的」(45.5%)でした。次点で「ある程度悲観的」(33.0%)、「どちらでもない」(10.7%)、「非常に悲観的」(7.1%)、「非常に楽観的」(3.8%)がこれに続きました。

 楽観的と感じている人の割合の合計(「非常に楽観的」と「ある程度楽観的」の合計)は49.3%、悲観的と感じている人の割合の合計(「非常に悲観的」と「ある程度悲観観的」)の合計は40.1%でした。

 全体的には、楽観的に感じている方のほうが多いものの、悲観的に感じている方もある程度おられることが分かりました。「非常に楽観的」を選択した人の割合が五つの選択肢のうち、最も低くなったことが印象的です。

 質問1の結果と合わせて考えれば、個人投資家の皆さんは2025年に、何らかの警戒すべき、楽観的になり切れない要素を見いだしている可能性が浮かび上がります。その要素が、質問3の結果で示唆されています。

 質問3では、2025年の注目材料を尋ねました。

質問3:2025年の注目材料(いずれも予定)を挙げてください(複数選択可)

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 最も多く選択されたのが「米国の金融政策」(17.2%)でした。次点で「ウクライナ戦争」(13.5%)、「トランプ氏米大統領就任(1月)」(13.3%)、「日本の金融政策」(12.6%)がこれに続きました。

 2025年を展望する個人投資家の目線は、多くが海外、特に米国であることがうかがえます。「トランプ氏米大統領就任(1月)」が「日本の金融政策」を上回ったことが、それを補足しています。

 先ほど、個人投資家の皆さんは2025年に対し、何らかの警戒すべき、楽観的になり切れない要素を見いだしている可能性があると書きました。それはまさに、トランプ氏の米大統領就任だといえます。

 すでに新政権のポストが決まりつつありますが、トランプ氏の考えに同調する人物の名前が複数、確認できます。また、トランプ氏は関税引き上げ、パリ協定離脱など、不安を大きくするさまざまな観測を生み出しています。

 日本の個人投資家の多くが、こうしたトランプ氏の行動に不安を抱いていると、考えられます。

 質問4では、2025年に注目する株や材料に関する考えや思いを、自由に書いていただきました(128文字以内。大変にたくさんのご回答をいただき、全てを紹介することはできないため、以下のとおり、主要なキーワードとその出現回数を確認します。主要なキーワードはAIツールを用いて抽出。出現回数は表計算ソフトで算出)。

図:2025年に注目する株や材料を自由に記入してください(128文字以内)。

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 出現回数が最も多かったキーワードは「株」(154回)でした。次点で「関連」(112回)、「トランプ」(81回)、「AI」(59回)、「半導体」(58回)などがこれに続きました。「トランプ」のほか、「大統領」(40回)など、警戒すべき要素を含んだキーワードが上位に入りました。

 以下は、「トランプ」を含んだ回答(一部)です(文意を変えず、一部修正をしています)。

  • トランプ大統領の対日要求
  • トランプ大統領の保護主義
  • トランプ大統領の言動や政策がもたらす経済への影響
  • トランプ大統領が不確定要素をつくる。個別銘柄などのミクロの要素より、マクロの要素に注目
  • トランプ政権の金融政策と戦争終結の取り組み
  • トランプ大統領就任後の1月以降の動きに注目したい

 2025年は、トランプ氏の一挙手一投足に注目し続ける年になるかもしれません。

 ここまで、「2025年に注目できそうな株はありますか?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを伝えていきます。