工業企業の利益総額は10月に10%減、景気刺激策で2025年にプラス転換も

 国家統計局の最新統計によれば、中国の工業企業(年間売上高2,000万元以上の企業)の税引き前利益は10月に前年同月比10%減となり、9月の27.1%減から改善傾向を示した。1-10月の累計では前年同期比4.3%減と、1-9月の3.5%から減少率が拡大している。2023年、2022年には前年比2.3%減、4%減だった。

 工業企業の売上高は1-10月に前年同期比1.9%増と、1-9月の2.1%増から小幅に減速したが、2023年通年の1.1%増に比べてやや加速傾向。営業利益率は1-10月に5.29%となり、前年同期の5.67%を下回った。このほか、売掛債権は1-10月に7.8%増(1-9月は7.6%増)。これは同期の売り上げ伸び率(1.9%増)を上回る増加率であり、工業企業の収益性の低下を示唆する数字となっている。また、完成品在庫は1-10月に3.9%増。1-9月は4.6%増、2023年は2.1%増だった。

 業種別では、41の主要産業のうち、6割強に当たる27業種で利益伸び率が改善した。中でも非鉄金属精錬・圧延、化学繊維製造、鉄道・船舶・航空宇宙その他輸送機器、製紙・紙製品、鉄系金属採掘、非鉄金属採掘という6業種の利益は1-10月にそれぞれ40%増、38.3%増、31.9%増、27.1%増、22.6%増、21.6%増。1-9月の段階では52.5%増、42.2%増、28.2%増、48.4%増、27.7%増、18.8%増だった。このほか、繊維・衣類およびアパレル製造業の利益は1-9月の2.6%減から1-10月には3.2%増と、プラス圏に転じている。

 工業企業の利益統計は今のところ全般に低調だが、BOCIは2025年にプラス成長を回復する可能性を指摘している。中国政府が9月下旬以降、持続可能な経済成長の確保に向け、金融緩和や実体経済支援を含む多角的なマクロ政策の強化に転じたことが背景。中国人民銀行は預金準備率と政策金利の引き下げを実施するとともに、銀行各行に対し、個人向け住宅ローン金利や貸出金利を引き下げるよう指示した。

 また、中国政府は11月初旬、財政政策の一環として、地方政府の「隠れ債務」(地方が傘下の投資会社「融資平台」を通じて発行した簿外債務)の解消を進めると発表。地方の起債で調達する10兆元強の財政資金を「隠れ債務」の借り換えに充当する方針を明らかにしている。この「隠れ債務」問題はここ数年、国内経済の足かせであり、かつ投資家の最大の懸念材料だった。続いて11月中旬には、政府当局は金融リスクの防止に向けた不動産市場支援策の一環として、不動産向けの優遇税制措置を発表している。

 さらにこの先は当局者が明言した通り、政府指導部は改めて積極財政策に動く見込み。BOCIは中国の財政赤字率(対GDP(国内総生産)比)は現状、国際水準より低いとし、政府には積極財政策を推進するだけの余力があるとしている。