利益・配当の先行き見通しが明確化、AIインフラなど新興業務に成長力

 中国工業情報化部(MIIT)が発表した最新の通信業界統計によれば、10月には新興ビジネスの収入が前年同月比4.2%増加し、全国の通信サービス収入全体の25%を占めた。BOCIは3大通信キャリアの利益見通しや配当の先行きが明確さを増していると指摘。最近の株価の調整に言及し、セクター全体に対するレーティングを中立的から強気にアップグレードした。中国政府が発表した地方当局の過剰債務に対する対策も、長期的には地方のIT支出の拡大につながる点で、通信キャリアにプラスになるとみている。

 MIITの月次統計によれば、国内業界全体の10月の通信サービス収入は前年同月比2.1%増。AIコンピューティングサービス需要の好調を受けた新興ビジネスの成長が全体の伸びを支えた。

 新興ビジネスの収入は10月単月で前年同月比4.2%増の331億元。通信サービス収入全体に占める割合は25%と、ほぼ前月並みだった。新規ビジネスの増収率は9月の低調から一転して10月には加速したが、BOCIによれば、これは主に、企業向け業務の収益計上のタイミングが、消費者向けより後ずれすることが原因という。

 一方のモバイルデータサービス収入は10月に前年同月比1.7%増と、プラス成長を回復した。サービス料金の下落率が同10%に縮小したことが背景。通信サービス収入全体に占めるモバイルデータサービス収入の割合は37%と、ほぼ横ばいで推移している。

 BOCIは2024年通期見通しの安定感や10月の業界データの堅調さから、この先発表される3大通信キャリアの10-12月期決算の収益見通しが明確化したとの見方。個別では、引き続きチャイナ・テレコム(00728)をトップピック銘柄とし、以下、チャイナ・モバイル(00941)、チャイナ・ユニコム(00762)の順で選好するとした。うちチャイナ・テレコムについては、高帯域幅の光ファイバー伝送を必要とするAI計算力サービス需要の拡大による恩恵を、同社が最も受けやすいと指摘している。

 BOCIは今回、通信サービスセクター全体に対するレーティングを中立から強気に引き上げたが、これは3大通信キャリアの向こう1年のフォワードPER(株価収益率)が、ヒストリカルレンジの中でも、より値ごろ感のある水準に戻ったため。ただ、依然として1標準偏差の範囲内にあるとし、その理由として、◇現在の市場環境下で通信キャリア各社の利益見通しと配当見通しが明確であること、◇中央政府による地方の過剰債務解消策がクラウド・AIインフラ支出の回復を後押しし、結果的に中国AIインフラ市場における通信キャリアのリーダーシップが明確化する可能性があること――の2点を挙げている。