※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「掘りまくれ!」で原油価格は下がらない?

「掘って、掘って、掘りまくれ!」

「Drill Baby Drill(掘って、掘って、掘りまくれ!)」は、2024年の米大統領選の選挙戦において、トランプ氏が何度も口にした言葉です。こうしたことを受け、2025年1月から始まるトランプ政権下では、米国の原油生産量が大きく増え、それによって原油相場がショック級の暴落に見舞われる、という思惑が浮上しています。

図:米国の原油生産量の推移 単位:百万バレル/日量

出所:EIA(米エネルギー省)のデータを基に筆者作成

 上のグラフは、米国の原油生産量の推移を示しています。このグラフが大きく上昇することが、米国の原油生産量が大きく増えることを意味します。足元、米国全体のおよそ68%が、シェール主要地区由来です。おおむね、シェールが増えれば米国全体が増える、シェールが減れば米国全体が減る、という構図です。

 本レポートでは、米国のシェール主要地区に関わる複数のデータを確認しながら、そもそも「掘って、掘って、掘りまくれ!」は可能なのか、もし可能であれば、原油相場にどれほどのインパクトをもたらすのか、について考察をします。

 以前のレポートでも書いたとおり、昨今の各種市場(原油だけではなく、金(ゴールド)も株式や通貨、金利など他の市場も)と向き合う際は、イメージを優先しすぎない、できるだけ広範囲の材料を認識する、時間軸ごとに複数の材料を分ける、などが求められています。

 その意味で、「掘って、掘って、掘りまくれ!」とトランプ氏が連呼したから原油相場が暴落する、というシナリオはいささか乱暴だと感じます。冷静な分析が求められます。