この1週間のドル/円は1ドル=153円~155円台で動いており、トランプ勝利後のトランプ・トレードも一巡したようです。トランプ・トレードは米国債売り(金利高)やドル買いの取引です。減税などの財政出動や、関税引き上げ、移民規制によるインフレ懸念が背景ですが、財政拡大や移民規制による人手不足も時間がかかると市場は冷静にみているようです。
関税引き上げも貿易赤字国との交渉カードとして使うのであれば、交渉に時間を要するため、関税引き上げまでに時間がかかります。
トランプ次期大統領、追加関税を表明で円安に
米国の消費者にとっての物価上昇までには、時間がかかるだろうと思っていたら、25日、トランプ次期大統領がSNSで中国に対して10%、メキシコとカナダに対しては25%の追加関税を表明しました。これらの通貨は売られ(ドル高)、ドル/円もドル高によって円安へともつれました。
米大統領選挙中の公約を材料にしたトランプ・トレードが一巡したと思っていたら、トランプ要因を材料とした市場の動きは次の段階に入ったようです。
米大統領選で勝利した第2次トランプ政権(トランプ2.0)の誕生に伴う政策で、特に関税政策の不確実性の高まりを警戒していましたが、現実になるのはまだ先の話だと思っていたら、突然始まったという驚きが今回の市場の反応で分かります。
トランプ氏は、次期政権の財務長官に投資ファンドの経営者であるベッセント氏を指名しました。財政規律を重視する同氏の指名で市場は安心していました。しかし、今回のニュースが流れたことから、市場は今後実際に発動されるだろう政策に敏感になり始めています。
26日の日本株は、3国の追加関税での日本への影響が嫌気され、日経平均株価は一時1ドル=700円を超える下落となりました(終値マイナス338.14円)。ドル/円は、いずれ日本にも関税が引き上げられるのではないかという懸念が高まったことや日経平均の下落もあり、円安からリスク警戒の円高になりました。
来年1月の就任を待たずに読みづらいトランプ2.0の政策や発言に翻弄(ほんろう)される日が続きそうです。
ドルだけでなく、ユーロ売りも円高に
22日発表のドイツやユーロ圏の11月PMI(購買担当者景気指数)が悪かった一方、米国11月PMI(総合)が2年7カ月ぶりの高水準となり、欧米の景況感格差が鮮明となりました。この景況感格差によって、ECB(欧州中央銀行)の利下げペースはFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げペースよりも早くなるとの見方から、ユーロ売りが続いています。
さらに欧州はウクライナ情勢を巡る不透明感や、トランプ次期政権の中国に対する追加関税が中国との取引が多い欧州にも大きく影響が及ぶとの見方からユーロ売りの圧力は強まっています。
ドル/円は、ユーロが売られるときはユーロ売り・ドル買いによって、ドル/円を支えている構図となっているため、ユーロ/円のユーロ安・円高ペースは緩やかになっています。
しかし、ユーロ売りの圧力が根強いことから、早晩ユーロ/円も円高に進むことが予想されます。そのときは、この円高によってドル/円もつられて円高になることが予想されます。ドル/円相場を見るときは、ユーロやユーロ/円の相場を参考にする必要が高まっています。
トランプ2.0に対するリスク警戒の円高とユーロ/円の円高圧力によって、円安よりも円高バイアスの方が勝り、ドル/円の頭は重たくなりそうです。
米国の小売大手企業の8-10月期の決算が先週から今週にかけて続いていますが、ウォルマートは好調でしたが、ターゲットが不調など、明暗が分かれているようです。そうした中、米国では28日(木)に感謝祭の祝日が到来し、翌29日(金)(いわゆるブラックフライデー)から伝統的なクリスマス商戦に突入します。
クリスマス商戦の行方を占う上で、26日に発表される米11月消費者信頼感指数が注目されていました。結果は111.7と予想を若干下回りましたが、昨年7月以来の水準となりました。一方で今年のクリスマス・年末商戦について、NRF(全米小売業協会)は前年の伸びを下回る予想をしています。
ただ、近年では早期にセールを始める小売店も多いことや、ネット購買も多いことから、前年比ではクリスマス・年末商戦の実態はつかみにくくなっていることもあります。
また、トランプ政権前の駆け込み需要も予想されます。クリスマス・年末商戦の売り上げが不振だと、後退していたFRBの12月利下げ期待が再び高まるかもしれません。まずはブラックフライデーの売り上げに注目です。