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著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「新たな均衡に向けて着実に回復する日本経済~2024~26年日本経済見通し~」
21日の植田総裁発言と10月全国消費者物価で12月利上げの織り込み進む
先週のレポートで、「円安進行を避けたいと日本銀行が考えるなら12月利上げの蓋然(がいぜん)性が高い。それまでに、市場の織り込みを進めるための情報発信があるかもしれない」と指摘したところ、早速、植田和男総裁による発言で利上げの織り込みが進んだようです。
11月21日に都内で開催された「パリ・ユーロプラス ファイナンシャル・フォーラム2024」で植田総裁は、「現時点で会合の結果を予測するのは不可能だ」「まだ1カ月程度ある。それまでの期間に非常に多くのデータや情報が利用可能となるだろう」(ブルームバーグ)と述べ、12月利上げの可能性を示唆しました。
12月MPM(金融政策決定会合)は18~19日に開催されます。結果が出る直前の18日に、FRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が判明します。もし、FRBがこのところのインフレ再燃リスクの高まりを受けて利下げを見送れば、米長期金利が上昇し円安が進む可能性があります。
逆に、0.25%の利下げに踏み切ったとしても、さらなる利下げに対してパウエル議長は慎重な態度を示すと予想され、やはり長期金利が上昇して円安に振れる可能性があります。どのみち日銀が過度な円安を避けたいと思っているのなら、12月利上げに踏み切るしか選択肢はないと考えられます。
11月22日に発表された10月の全国消費者物価指数も、12月利上げを後押しする結果となりました(図表1)。
<図表1 全国消費者物価指数>
植田総裁が注目していた「サービス」が前年比1.5%と前月(1.3%)から伸びを高め、賃金上昇をサービス価格に転嫁する動きが広がりつつあるという日銀の見方を裏付ける結果でした。
以上から、データ、戦略、コミュニケーションのいずれの観点から見ても、12月利上げの可能性が高まっていると考えられます。