SNSは情報戦・心理戦の「ドローン」

 戦いにおける「ドローン」は、攻撃する側の損害を最小限にし、相手に大きなダメージを与える手段の一つです。筆者は、SNSは情報戦・心理戦におけるドローンであると、考えています。以下は、打撃戦、情報戦、心理戦の三つの戦いの概要と関係を示した図です。

 打撃戦は直接的に、建物、インフラなどのモノや要人、市民などのヒトに損害を与えるための戦いです。現代では銃、戦車、戦闘機、戦艦、爆弾、ミサイル、ドローンなどが用いられます。

図:SNSが各種戦いに与える影響

出所:筆者作成

 情報戦は間接的に、民主主義などの思想や世界平和などの秩序に損害を与えるための戦いです。情報操作を行うために、怪文書、偽造文書、フェイクニュースなどが用いられます。心理戦は間接的に、尊厳などの心(精神)に損害を与える戦いです。印象操作や脅迫、各種トラップなどのために、見せしめやいけにえなどが行われることがあります。

 こうした三つの戦いは、補完し合っています。物理的な戦いが目立つ状態では、目に見える打撃戦が中心ですが、打撃戦に関わる情報戦・心理戦が同時進行します。物理的な戦いを伴わない戦い(過去の事例は、東西冷戦、貿易戦争、資源争奪戦など)においては、情報戦と心理戦が中心になります。

 情報戦・心理戦に深く関わっているのが、SNSです。情報戦の要(かなめ)である情報操作、心理戦の要である印象操作に、SNSが深く関わることができるからです。

 SNSのおススメ機能によって、関心を持っていると思われる人の画面に情報操作・印象操作に関わる情報が自動的に掲載されたり、自動的に翻訳する機能によって、異なる言語を使う人に同情報が伝わったりする可能性があります。こうしたことを経て多数の人が注目する「バズった」状態になった場合、より深く情報戦と心理戦に関わることになります。

 今や、SNSは情報戦・心理戦を行う上で欠かせないツールだと言えるでしょう。SNSを使えばスマートフォン一つで、一度に広範囲に、安価で手軽に情報戦・心理戦を仕掛けたり、加担したりすることができます。

 その意味で、攻撃する側の損害を最小限にし、相手に大きなダメージを与え得るツールであるSNSは、情報戦・心理戦を行う際のドローンだと言えるかもしれえません。