※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【テクニカル分析】今週の株式市場 海外イベントの多さと米新政権前の緊張感~「様子見」と「先取り」のはざまで~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し>」
先週末10日(金)の日経平均株価は3万9,190円で取引を終えました。
昨年末終値(3万9,894円)からは704円安と、2025年相場の最初の週は下落スタートとなってしまいました。1月6日に掲載した前回のレポートでは、「日経平均のチャートの形は悪くないので、強気のラインまで戻せるか?」という点に注目していましたが、結果的に上値を伸ばすことができませんでした。
そこで、今回のレポートでは、「チャートの形状に変化が生じたのか?」、また、「米雇用統計の米株市場の初期反応はどうか?」、そして、「今週の相場展開はどうなりそうなのか?」などについて考えて行きたいと思います。
日経平均チャートで気をつけておきたいポイントは?
まずはいつものように、日経平均の足元の状況から見て行きます。
図1 日経平均(日足)の動き(2025年1月10日時点)

上の図1で、先週の日経平均の動きを振り返ると、大発会の6日(月)は下落したものの、翌7日(火)には反発して4万円台を回復、続く8日(水)も4万円水準が意識されるなど、週の前半までは比較的堅調に推移していました。しかし、週末にかけては失速して行く展開となりました。
結局は、昨年10月から続く「レンジ相場」に戻り、相場の地合いにあまり変化が生じていないような印象ですが、いくつか注意しておきたい動きが見られます。
そのひとつが移動平均線と株価の関係です。図1でも確認できますが、週末10日(金)には株価が25日移動平均線を下抜けています。となると、次にサポートの目安として意識されるのが75日移動平均線になるわけですが、図1でも、レンジ相場期間で75日移動平均線が株価を支えていたことが分かります。
移動平均線の向きについては、「これから計算に加わる株価が、計算から抜けて行く株価よりも高ければ上向き、低ければ下向き」となります。現在から75日前は昨年9月の下旬の時期になりますが、図1にも記載している通り、今週は昨年9月20日から26日の株価が順に計算から抜けて行くことになります。
つまり、今週に計算に加わる株価がこれらよりも高ければ、75日移動平均線は上向きを維持することになりますが、今週末17日(金)に抜ける昨年9月26日の株価(3万8,925円)は、現在の株価とあまり変わらない水準のため、今週の日経平均が3万9,000円台割れで推移するようなことがあれば、75日移動平均線が下向きに転じる可能性はグッと高まります。
また、週足チャートでも、26週移動平均線が52週移動平均線を下抜ける「デッド・クロス」が出現しています(下の図2)。
図2 日経平均(週足)の動き(2025年1月10日時点)

大体の目安として、13週移動平均線は3カ月間、26週移動平均線は6カ月間、52週移動平均線は12カ月間の値動きの中心線になります。
つまり、先週出現したデッド・クロスは、昨年の8月あたりから、13週と26週移動平均線の角度が横ばいとなる中、上向きの52週移動平均線が追いつくような格好だったわけですが、実は、下の図3でチャートを過去に遡ると、前回のデッド・クロスも似たような上昇で出現したことが分かります。
図3 日経平均(週足)の動き その2(2025年1月10日時点)

前回のデッド・クロスが出現したのは2022年の年初でした。今回も年初というタイミングで出現したこと、そして、前回のデッド・クロス後の株価が長期間にわたって軟調気味に推移していたことを踏まえると、いざ短期の株価調整が進んでしまうと、中期的な相場も下向きの意識を急速に高めてしまうことが考えられます。
このように見て行くと、足元の日経平均は「かなり危うい」印象になってしまいますが、あくまでも、チャートから読み取れるのは、「相場が弱気になった場合に下げ足が早くなる可能性」を示唆するものであって、現時点で相場の変調自体を示す明確なサインではありません。
したがって、「株価が75日移動平均線やレンジ相場を下抜ける」など、相場の変調を判断するチェックポイントを確認するのはこれからということになります。
図4 日経平均(日足)の動き その2(2025年1月10日時点)

また、先週の相場展開によって、前回のレポートで注目していた、上向きのギャン・アングルの「2×1」ラインへの復帰が遠のいてしまいました(上の図4)。
そのため、目先の日経平均は、相場の変調に注意しつつ、「3×1」ラインへ向かうことになり、上値ラインの維持と共に意識されることになりそうです。