世の中はすっかり「新NISA」一色に
筆者は株式投資を始めてから26年になりますが、その間さまざまな制度改正がありました。
2014年(平成26年)にスタートした旧NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)は、確かに画期的な制度とはいえますが、非課税限度額が最大でも600万円(年間当たり120万円×5年)であったり、一度売却したら非課税枠は復活しなかったりと、正直それほど使い勝手が良いわけではありませんでした。
その後、つみたてNISAもスタートしましたが、こちらも年間40万円までしか非課税投資枠がなく、最大でも「40万円×20年=800万円」までしか非課税枠を使えず、そこまでのインパクトはありませんでした。
しかし令和6年から始まった新NISAは、個別株も投資信託の積み立ても同時にできますし、非課税限度額が年間360万円、マックスで1,800万円、売却したら非課税枠が復活する、そしてなんといっても非課税期間が無制限という、これまでのNISAの概念を完全に覆すほどの大進化を遂げました。
令和5年までの旧NISA時代と、令和6年以降の新NISA時代とで、NISAの知名度も、実際にNISAを活用する個人投資家もけた違いに増えたことは間違いありません。
ということで世の中はすっかり新NISA一色になっているのですが、その雰囲気にのみ込まれ、ついつい令和5年以前の旧NISAのことを忘れてしまっている方も多いのではないでしょうか。
年末も近くなってきましたので、旧NISAで保有している株の取り扱いについて解説していきたいと思います。
一般NISAの非課税期間は5年、つみたてNISAの非課税期間は20年
まず大前提として、一般NISA(個別株や投資信託など幅広く投資できるもの)の非課税期間は5年、つみたてNISA(定められた投資信託を積み立て形式でのみ投資できるもの)の非課税期間は20年です。
つみたてNISAがスタートしたのは2018年(平成30年)で、まだ20年経っていませんから、つみたてNISAで保有している投資信託については、そのまま保有を続けても何ら問題ありません(もちろん売却することもできます)。
一方、一般NISAの場合、2020年(令和2年)にNISA口座で購入して現在でも保有している株式等は、2024年(令和6年)末をもって非課税期間が終了となります。
旧NISA時代は、非課税期間である5年が経過しても、「ロールオーバー」という制度により、翌年の非課税枠を使い、さらに5年間継続して投資できることができました。
しかし、令和6年より新NISAがスタートしましたので、この旧NISAでのロールオーバーはできなくなっています。
非課税期間が終了するとどうなるの?
では、令和2年にNISA口座で購入し、現在でも保有を続けている株式等はどうなるのでしょうか?
もし何もしないでそのままにしておくと、令和6年末の非課税期間終了後、通常の口座(一般口座もしくは特定口座)に自動的に移管されます。
ですから、ほったらかしにしておいて、気が付いたらNISA口座にあった保有株が特定口座に移っていた、という方もきっと多いと思います。
なお、通常の口座に移管される際、令和6年末の株価にて引き継ぎがなされます。もし、令和6年の株価が1,000円だとした場合、次のような扱いになります。
・NISA口座で購入時の株価500円の場合
→含み益500円が非課税で実現し、通常の口座に1,000円で引き継がれる
・NISA口座で購入時の株価2,000円の場合
→含み損1,000円が切り捨てられ、通常の口座に1,000円で引き継がれる
非課税期間が終了する前に売却した方が良いの?
ここで「非課税期間が終了する前に売却した方が良いの?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、非課税期間が終了したら、自動的に通常口座に移管されるだけですから、非課税期間が終了する前に無理に売却する必要はありません。
ただ、例えば足元で株価が急騰していて、年末の非課税期間が終了する頃には大きく反落しているかもしれない、というようなときは、非課税期間終了を待たずに売却してしまうのも一考です。
NISA口座で保有している株を、今後無理に持つ必要もなく、その資金を他の株の購入に使いたい、という場合は、非課税期間終了を待たずして売却しても、非課税期間が終了して通常の口座に移管されてから売却してもどちらでも良いと思います。
なお、上記は長期保有目的で、短期的な株価の変動は気にしない、という方を前提とした説明です。
株価のトレンドや株価変動に応じて売却する、という方は、非課税期間終了まで持ち続けるとか、非課税期間終了前に売却するということは関係なく、ご自身のルールで売却すべき時に売却すればよいでしょう。