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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【テクニカル分析】今週の日本株 想定以上に株価が動く可能性~日経平均4万円超えも?~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し>

 先週末12月6日(金)の日経平均株価は3万9,091円で取引を終えました。

 前週末の終値(3万8,208円)からは883円高、週間ベースでも4週ぶりに上昇へ転じ、2024年相場の最終月は好調な滑り出しだったと言えそうですが、日経平均はまだ10月からのレンジ相場(3万8,000円から4万円)を抜け出せない状況が続いています。

 そんな中で迎える今週は、FOMC(米連邦公開市場委員会)の開催が来週の17日から18日に迫るタイミングでもあり、米国の経済指標への注目度が高まることが想定されます。

 具体的には、先週末に公表された米11月雇用統計の結果を織り込む動きと、今週発表予定のインフレ関連指標(11月の消費者物価指数と生産者物価指数)の結果への反応が、相場のムードを左右することになると思われます。

 さらに、国内株市場では週末の13日(金)が、株価指数の先物取引・オプション取引における清算日である「メジャーSQ(特別清算指数)」ということもあって、需給的な材料で株価が大きく動きそうなことを踏まえると、日経平均が4万円台に乗せたり、3万8,000円台を下回ったりする展開も考えておく必要がありそうです。

 そこで、今回のレポートでは、先週末の米11月雇用統計の結果を受けた米国市場の初期反応と、今週の日経平均の値動きのシナリオについて考えて行きたいと思います。

米11雇用統計の結果と米国市場の初期反応

 まずは、先週末6日(金)に公表された米雇用統計について確認します。

 前回と前々回の結果も含めて、ざっくりまとめたものが下の図1です。

図1 米雇用統計の状況 (※印は修正前の数値)

出所:各種報道等を基に筆者作成

 今回(11月分)の非農業部門雇用者数は22.7万人増となりましたが、予想(20万人増)を上回ったほか、前回(10月分)も1.2万人増から3.6万人増へと上方修正されています。

 失業率については予想通りの4.2%となりましたが、前回の4.1%からは悪化しています。

 そして、平均時給については前年比で4.0%増となり、前回と同じ数値となりましたが、予想(3.9%増)は上回っています。

 こうした、米雇用統計の結果を受けた米国株市場ですが、NYダウが小幅に下落する一方で、S&P500とナスダックが上昇して最高値を更新するなど、初期反応はまちまちとなりました。

 また、今回の雇用統計の結果を受けた米10年債の利回りも低下で反応しています。

図2 米10年債利回り(日足)の推移(2024年12月6日時点)

出所:楽天証券WEBサイト(REFINITIV)より筆者作成

 週末6日(金)の米10年債利回りは4.1%台まで低下し、上の図2でも確認できますが、50日移動平均線を下回ってきました。25日移動平均線も下向きに転じており、今後も金利の低下傾向が続くのであれば、株式市場の追い風になると思われます。

 このように、米国市場の反応を見ると、今回の米雇用統計の結果は、「少なくとも、来週の米FOMCで利下げ期待を後退させるほどではなかった」ということになり、無難にイベントを通過した格好です。

 したがって、米FOMCまでに公表される予定の米経済指標も、利下げ期待を継続させる結果を続けられるかが焦点になり、目先の相場の方向感を決めることになりそうです。例えば、今週11日(水)の11月消費者物価指数(CPI)をはじめ、翌12日(木)の11月生産者物価指数(PPI)、そして、来週17日(火)の11月小売売上高の結果が注目されることになります。

ただし、米国株は過熱感も意識され始めてきた?

 足元の米国市場は、金融政策面での利下げ期待によって株価上昇と金利低下がもたらされている格好です。しかし、先ほどの図2を見ても分かるように、9月半ばから11月下旬にかけての時期は、思ったよりも継続している堅調な米国経済と、トランプ次期政権の掲げる政策のネガティブな面(財政悪化とインフレ再燃への警戒)を背景に、米10年債利回りが上昇していました。

 これら米金利を押し上げてきた材料について見て行くと、「強い米景気の状況下で利下げを実施しても大丈夫か?」という不安は現在も燻っています。

 また、トランプ政権のネガティブな面についても、財務長官候補に指名されたスコット・ベッセント氏の登場によって、いったんは過度な警戒が後退している格好ですが、トランプ次期政権の発足が来年1月20日であることを踏まえると、思惑が先行している面が否めません。

 そのため、最高値圏で推移している米国株市場は、ココから先の株価上昇について割高感や過熱感への意識を強めている可能性があります。割高感については以前のレポートでも指摘してきましたが、今回は過熱感についても見て行きたいと思います。

 そこで、先週6日(金)の米NYダウとナスダックの1分足の動きを確認して行きます。

図3 米NYダウ(1分足)の動き(2024年12月6日)

出所:MARKETSPEEDIIより筆者作成

図4 米ナスダック総合指数(1分足)の動き(2024年12月6日)

出所:MARKETSPEEDIIより筆者作成

 米雇用統計の結果を受けたNYダウとナスダックはともに上昇でスタートし、早い段階でこの日の高値をつけますが、以降は、NYダウが利益確定売りに押され、ナスダックも高値圏を維持したものの、積極的に上値を伸ばす動きにはならなかったことが読み取れます。

 もちろん、「米雇用統計が積極的に株価を押し上げるほどの材料ではなかった」という見方もできます。

 しかし、6日(金)のNYダウが早い段階で売りが優勢になった点や、ナスダックが上値を伸ばしきれなかった点を考えると、売りが意外と出やすく、今週以降に公表される経済指標の結果次第ではありますが、少なからず相場の過熱感に注意しておいた方が良いかもしれません。