※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【テクニカル分析】今週の株式市場 様々な思惑が交錯する12月相場はどうなる?~「独り勝ち」の米国株は敵か味方か~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し>」
11月の最終営業日だった29日(金)の日経平均株価は3万8,208円で取引を終えました。
前週末終値(3万8,283円)からは75円安と、単純な週末終値の比較では小幅な下落にとどまりましたが、週間の値幅(高値と安値の差)は1,200円を超えていて、「方向感に欠けるものの、値動きはそれなりにあった」展開となりました。
ちなみに、週間ベースでは3週連続で下落していますが、この期間の下げ幅合計(1,252円)は、先ほどの週間の値幅とあまり変わっていません。
日経平均はレンジ相場のまま12月に突入
そんな中、今週からは12月に入りますが、日経平均はレンジ相場を続けたまま2024年相場の最後の月を迎えることになります。
図1日経平均(日足)の動きとMACD(2024年11月29日時点)
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日経平均のレンジ相場については、これまでのレポートでも何度となく指摘してきましたし、上の図1を見ても分かるように、日経平均は3万8,000円から4万円の範囲内での株価推移を約2カ月間にわたって繰り返しています。
この期間中には、国内の衆議院選挙や米大統領選挙といった政治イベントから、日米の金融政策イベント、そして企業決算シーズンと、相場に方向感を与えそうな出来事が相次いだのですが、結局、日経平均は中長期の相場の行方を見いだせなかったことになります。
その一方で、レンジ相場が長く続くということは、「市場のエネルギーが蓄積されている」ことも意味します。この先、レンジを抜けた方向に大きく株価が動く可能性があります。
つまり、12月の日経平均は、「レンジを抜ける動きが出てくるか?」と、「抜ける方向は果たして上か下か?」の2点が最大の焦点になります。
テクニカル的に見た日経平均は下方向への意識が強い?
この二つの焦点について、日経平均の週足をベースに、テクニカル分析的にいくつかのチャートを確認して行きたいと思います。
図2日経平均(週足)のボリンジャーバンド(2024年11月29日時点)
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まずは、ボリンジャーバンドです。上の図2でも確認できますが、バンドの傾きが水平で、一定の幅を保つ中、ここ2カ月間の株価がプラスマイナス1σ(シグマ)の範囲内で動いています。
また、ボリンジャーバンドの一般的な見方として、トレンドが発生する前には、バンドの幅が狭くなる「スクイーズ」というサインが出ることが多いのですが、夏場以降の株価の動きが大きい(ボラティリティが高い)こともあり、現在のバンド幅は比較的広くなっていますので、ボリンジャーバンド的には、「まだまだレンジ相場が続きそう」という見方になります。
続いて、別のトレンド系指標でも確認していきます。
図3日経平均(週足)と多重移動平均線(2024年11月29日時点)
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上の図3は、同じく日経平均の週足チャートに、多重移動平均線と52週移動平均線を重ねたものになります。
多重移動平均線は、2週から28週移動平均線を2週間刻みで14本描いたもので、短期間から中期間のトレンドの強さや変化を捉えやすくするのを目的として使われます。
実際に、足元の多重移動平均線は短期線と中期線が複雑に入り混じり、トレンドレスになっている様子がうかがえます。
さらに、トレンドレスが続く中で、52週移動平均線と株価の関係も注目されるようになってきました。とりわけ、8月以降の日経平均は52週移動平均線がサポートとして機能している格好ですが、ココを下抜けてしまった場合には注意です。
さらに、チャートを過去に遡ると、2021年の夏場から年末にかけて似たような場面がありました。52週移動平均線がサポートとして機能しなくなった2022年から株式市場が下落トレンド入りしていることが分かります。
必ずしも歴史が繰り返されるわけではありませんが、「多重移動平均線がトレンドレスとなり、夏場から年末にかけて、52週移動平均線がサポートとして機能していた」という共通項が多いことを踏まえると、株価が52週移動平均線を下抜けた際には注意が必要になります。
そして、最後に線形回帰トレンドでも確認してきます。
図4日経平均(週足)の線形回帰トレンド(2024年11月29日時点)
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線形回帰トレンドは「内在系のトレンドライン」と呼ばれ、株価の値動きの大きさや推移を回帰直線で描くことで、相場の方向感を探ろうとするものです。
線の傾きがトレンドの方向性を示し、株価が中心線よりも上に位置していれば強気、下に位置していれば弱気となります。上の図4は、2023年あたまを起点とし、現在までの値動きを回帰分析したものとなります。
図4を見ると、現在のトレンドは上昇基調となっていますが、株価はマイナス2σ近くに位置しており、「トレンドの勢いとしてはかなり弱い」と判断できます。
そのため、図4から読み取れるものとしては、このままマイナス2σを下抜ける展開に注意であるほか、仮に、12月の株価が上昇して行ったとしても、中心線を上抜けるほどの力強さを見せることは難しいかもしれないこと、そして、マイナス1σを突破できれば、図4の株価水準的に4万円をクリアすることになることなどが挙げられます。
つまり、「今後の株価が4万円台を回復することができても、それが今後の中長期の上昇トレンドにつながるとは限らない」ことが重要なポイントとなりそうです。