※この記事は2022年9月30日に掲載されたものです。 
 

現資産5.3億円の今も賃貸住まいの億り人に直撃取材!

www9945さんPROFILE

 50代、専業投資家。年収300万円の清掃業から、株で最高資産6.3億円に到達。凄腕投資家として知られるカリスマ投資家。街ブラ散歩しながら、行列のできる店や以前と変わった店舗などをチェックし、投資のヒントを拾うという、自身の嗅覚を信じた投資手法で知られる。
資産を築いた後も変わらず賃貸住まいだが、月一で旅行を楽しむように。今後上昇を期待しているのは、世界に通用するヘルシーな日本食銘柄。

 投資している人なら、一度や二度、www9945さんの名を見聞きしたことがあるはず。

 若い頃に投資で稼いだ印象深い銘柄・プレナス(持ち帰り弁当チェーン「ほっともっと」などを運営)の証券コード「9945」をハンドルネームにしているwww9945さんは、清掃会社に勤務しながら株式投資を続け、5億円以上の資産を築き上げたカリスマ投資家の1人ながら、今も賃貸住宅に住むという、質実剛健な投資家です。

 2014年に専業投資家に転身し、現在は投資メディアなどでも活躍するwww9945さんに、投資歴や投資スタイルについて聞きました。

給与の3分の1を投資資金に充てていた

──今日は個人投資家にとって憧れの存在ともいえる、www9945さんにお会いできて、とてもうれしく思います。

www9945さん 憧れの存在だなんて、とんでもない(笑)。私より何倍も稼いでいる投資家さんがたくさんいらっしゃいます。

──さっそくですが、何かの記事にwww9945さんの資産額は5.5億円と出ていたのですが…。

www9945さん 今は5.3億円といったところです。2年半前のコロナショックのとき、ちょっと減らしてしまいまして。あのときは思いの外、リバウンドが早かったので、それにのって稼いだ人も少なくありませんが、私はうまく立ち回ることができませんでした。

──www9945さんでもそういう時はあるのですね! ではその後はどうですか。

www9945さん ここ2年ほどは、若干マイナスといったところです。最近は、資産が5億円を越えたこともあり、攻めよりも守りに重きを置いているようなところがありまして。そのせいもあって、あまり大きな変動はありません。

──でも、5億円越えはスゴイとしかいいようがありません。普通に投資していてもそこまでいける人はなかなかいないように思います。何か特別な才能が?

www9945さん そんなことはありませんよ(笑)。私も投資を始めてしばらくは、まったく勝てませんでしたし。10年くらいは勝ったり負けたりを繰り返していました。

──20代で投資を始められたんですよね。

www9945さん はい、本屋さんで何気なくマネー雑誌を見ていたら、ある実業家が「株の勉強をすると経済に明るくなるし、お金も稼げる」と話していました。その言葉に触発されて、やってみようかなと思ったのがきっかけです。普通でしょ?(笑)。

 もっとも、当時、勤めていた会社の給与は人並みでしたし、貯金もなかったので、まずは生活費を切り詰め、お金を貯めようと思い、節約生活をして、1年ちょっとで100万円貯め、それを元手に投資を始めました。

──でも、苦戦されたと他のインタビューでお答えになっています。最初はどんな投資結果だったのですか?

www9945さん 最初に買ったのは、セメント会社の宇部興産(現UBE:4208)です。これからは公共事業が盛んになる、だったらセメント需要が高まるだろうと考えたのですが、素人の思いつきが当たるわけもなく、株価は日に日に下落していきました。

 もう一つ、北陸電力(9505) も買ったのですが、こちらもパッとしませんでした。その後も、毎年、年収の3分の1(金額にすると100万円程度ですが)を投資資金に充て、いろいろ買いましたが、思うように結果が出ませんでした。

──それでもやめようとは思わなかったんですね。

www9945さん はい。それはまったく考えませんでした。なぜかというと、株式投資の面白さにハマってしまったんです。

 今は企業の成長性などを重視して買うことが多いのですが、その頃は完全なテクニカル派で、暇があればチャートを見ていました。チャートを見ながら、この動きは何が原因なんだろう、今後どう推移するだろうなどと考えるのが楽しくてしょうがなかったんです。

新聞でチャートを見過ぎて、インクで手が真っ黒に…

──今のようにネットで情報を得ることができない時代ですよね。

www9945さん はい、だから、新聞や雑誌をよく買っていました。「株式新聞」というオンラインの証券専門紙がありますが、あれ、当時は紙媒体で、駅売りしていたんです。毎日、夕方5時半くらいに店頭に並ぶので、会社の帰りに買って、手がインクで真っ黒になるまで読み込んだものです。

 あと、投資歴の長い人はご存じだと思いますが、当時、2部・店頭株の「週刊シルバーチャート」という雑誌がありましてね。その巻頭のコメントコーナーに、上がった理由、下がった理由などが刺激的に書かれていたりして面白かったので、毎週買っていました。

──若い頃から勉強されていたんですね。

www9945さん 面白いから読んだり、調べたりしていただけなんです。当時は投資資金が限られていたので、買いたい銘柄があってもなかなか手を出せなかった。それでチャートを見て、気を紛らわせる、みたいなところもありました。

──ちなみに専門書もけっこう読みました?

www9945さん 投資を始めてしばらくしてから、ウォーレン・バフェットの本や「マーケットの魔術師シリーズ」を読むようになりました。とくに米国の投資家であるピーター・リンチの本が好きで、気に入った箇所をノートに書き写したりしていました。

──ノートに書き写していたんですか。

www9945さん はい、あの頃は、やってましたね。

──それで、10年目くらいから結果がついてきたんですね?

www9945さん 最初の10年は勝ったり負けたりだったといいましたが、結局、大きく減らさずには済んでいました。だから、投資を始めて10年後の2002年には、約1,000万円手元にありました。10年間、年100万円ずつ投資に充てたので、それがそっくりそのまま残ったわけです。

──その10年って、投資家にとっては厳しい時期でしたよね。

www9945さん たしか日経平均は、1990年のピークから60%くらい下落して、投資家にとっては確かに苦戦を強いられた時代ですね。だから、私がプラマイゼロで終われたのは、まずまず健闘したほうだと思います。

──そこから一気に資産を増やしたわけですね。

www9945さん 2005年に5,500万円に増え、2007年のリーマンショックでいったん半分近く減らしましたが、そこからまた上昇気流に乗り、2012年11月末に1億円を突破しました。

──1億円を超えられた理由は何なんですか?

www9945さん 一つはもちろん、相場がよくなったことです。2003年ごろから好転し、2005年の「郵政相場」で大きく稼ぐことができました。あとは、何というか、10年間いろいろ経験し、次はどんなセクターがよくなるとか、多少読めるようになったんです。

──最初の10年は増やすことはできなかったけれど、学んで模索したことは、無駄ではなかったということですね。

www9945さん はい、それは間違いないでしょう。あの10年があったから、今があるのだと思います。

資産が2億円を突破し、FIREを決意した

──個人投資家にとって「億り人」になるのは夢だと思いますが、実際に達成してどんなお気持ちでした?

www9945さん ある日、突然、1億円を手にしたわけでなく、3,000万円、5,000万円、8,000万円とステップを踏んで、達成に至ったわけじゃないですか。だから、歓喜に打ち震えるというより、じわじわと喜びが溢れてくるみたいな感覚といえるかもしれません。

──生活や投資スタイルに変化はありました?

www9945さん 実は投資を始めて間もない頃から「もし1億円に届いたら、会社を辞めてのんびり暮らそう」と思ってたんですね。今でいう「*FIRE」です。1億円あれば配当金で暮らすことが可能だろう、配当利回り4%だとしても年400万円になるから、ぜいたくしなければ何とかなるだろうと。

 でも、実際に1億円を達成したら、迷いが出てきたんですね。会社員だと、普通に働いていれば、毎月給与が入ってくる、それがゼロになって、本当に大丈夫なんだろうかと。

*FIRE…(Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)。ある程度の資産を形成した後、早期リタイアして暮らすことを意味する

──1億円資産があっても、迷うものなんですね。

www9945さん 私はそうでした。毎月給与があるのはありがたいものなんだなとつくづく思いました。それと、もう一つ理由があって、その頃、値上がり益の税率が10%から20%に上がったんですね。当然、配当金の額も減ります。それも不安要素の一つでした。

──でも、結局、2014年9月に会社を辞めて、FIREを実現された?

www9945さん 1億円を達成した後も好調が続き、1年数カ月後には2億3,000万円まで増やすことができました。それでさすがにもう会社を辞めても大丈夫だろうと。もともと会社を辞めることが目標だったわけで、ここで決断しなかったら、投資をがんばった意味がないだろうという思いがありました。

──会社を辞めたときのお気持ちは?

www9945さん 会社を辞めて1週間後の月曜日、土砂降りだったんです。そんな辛い中、出社しなくていいんだと思ったときは、めちゃくちゃうれしかったですね(笑)。

 仕事自体は嫌ではなかったし、いい会社でもありましたが、当時、課長という立場だったこともあって、精神的なプレッシャーが少なからずあったんです。そのプレッシャーから解放されたのが、いちばんうれしかったですね。

──それに何より、大好きな株式投資に専念できるから?(笑)

www9945さん これ、大きな声ではいえませんが、会社員時代、勤務中、隠れて株価の動きをチェックすることもけっこうあったんです。画面の端っこにマーケットスピード(楽天証券の取引ツール)を立ち上げておいて、自分の後ろを誰かが通りかかったら、すぐに画面を隠せるようにしてチャートを見ていた(笑)。

 そういう後ろめたい思いをせず、いつでも好きなときにチャートを眺めたりできるのはサイコーでしたね。

──では、中編ではwww9945さんの投資スタイルについてお聞きします。

中編 街を歩けば投資のヒントに出会う!街角ウオッチングのススメ
後編 「人は易きに流れる」。常習性に関連する銘柄に注目せよ!