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相場予測というゲームと資産管理という現実
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

相場予測というゲームと資産管理という現実

2008/10/10
数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍する石原順氏による外国為替市場レポート「外為市場アウトルック」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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相場の実践に必要なのは、(1)ポジションをとるタイミング(エントリーポイント)(2)利食い(3)損切りの3つだけである。相場を長く続けられるか否かは、結局のところ資産管理(損失の管理)が全てであろう。投資家は損切りが4回も5回も連続して続くと嫌になってくる。そして損失の出ているポジションを放置してしまいがちになる。しかし、相場の要諦は損切りである。筆者も過去20年間、もう数え切れないくらいの損切りをしている。取引者の優劣は損失防御テクニックの差にある。相場における損失というのはあらかじめ計算された損失(ストップ・ロス)でなければいけないが、このことに気づくのはお金がなくなった後である。

市場はたびたび間違いを起こす。もし市場参加者が相場の歴史からなんらかの教訓を得ているのであれば、バブルなど起こらないだろう。そのような市場の構造を前提にすると、相場の材料やファンダメンタルズというのは考えれば考えるほど難しくなる。相場は経済学とイコールではないからだ。ノーベル賞学者や金融工学のエキスパートを擁し、オールスターファンドと呼ばれたLTCM(ロングタームキャピタルマネージメント)は1998年のロシア危機で破綻したが、彼らの投資理論や相場観は長期タームでみると正しかったのである。しかし、統計的には非常に低い確率でしか起こらない(計量経済学には多くの欠陥がある)ことが、現実の相場で起こって破綻していった。この世の誰も正確に相場を予測することが出来ないことははっきりしている。では、相場に対しどのようなアプローチをすればよいのだろうか?

試行錯誤しても明確な答えはないが、逆説的に1つの取引手法が浮上してくる。それは相場を予測することをやめて、ひたすら相場についていくことである。これを相場の世界では【順張り】(トレンドフォロー)と読んでおり、相場の王道といえる取引手法である。移動平均線を使った売買手法は【順張り】の最もポピュラーな手法であり、筆者が外為アウトルックや外為ライブリポートで紹介しているボリンジャーバンド(1時間足)の1σの外での取引も【順張り】の手法である。この手法はやや鈍感でないと実行できない。なぜなら相場の高値を買ってさらに高値を売る、安値を売ってさらに安値を買い戻すことで収益をとる【順張り】の手法は、値頃感から心理的抵抗が起きやすいからである。もちろん、筆者も抵抗があるが、逆指し値のストップ・ロス注文を置くことでこの問題を解決している。

問題は相場が大きな方向性をもつ時間帯というのは年間の相場のなかでも限られていることだ。方向性のない時間帯では相場に参入しないか、【順張り】ではなく【逆張り】を行うしかない。【逆張り】というのは相場の方向に逆らってポジションをとる手法であり【順張り】よりも難しい。また、相場が方向性をもつと【逆張り】は大きな損失を被る。今回のようなクロス円相場の急落過程で値頃感だけで逆張りを行うと大きな損失が発生する。【逆張り】のみの売買手法では、勝率70%でも損失となる可能性は大きい。

【順張り手法】も【逆張り手法】もいくつかの問題や落とし穴を抱えている。しかし、はっきりしていることは、「方向性(トレンド)の有無」を認識できなければ、確率的に優位な立場で売買を行うことが出来ないということである。楽天FXのボリンジャーバンドのチャートは、相場に方向性があるのか、あるいはレンジ相場なのかの判別に有利な情報を提供してくれるだろう。

筆者は、
(1)相場がボリンジャーバンド1σの外側で取引されている。
(2)移動平均に大きな傾きがある
という2つの条件がそろえば、相場は方向性を持っていると仮定して取引を行っている。 取引のメインに使っているタイムフレーム(時間のパラメータ-)は【1時間足】である。

ボリンジャーバンドは【逆張り】の手法にも使える便利なツール(武器)である。
(1)相場がバリンジャーバンドの2σにタッチしていること
(2)移動平均線に大きな傾きがないこと
(3)ボリンジャーバンドが急激な収縮を起こしていないこと
が逆張りの基本的な条件であるが、【順張り】に比べ難しいので取り上げていない。

読者のみなさんに紹介しているボリンジャーバンドの売買手法は、「相場が方向性を持っているのか、方向性のないレンジ相場なのか」を見極める参考事例である。利食いのポイント等に言及していないのは相場実践において言葉では説明できないことがあるからである。またATRは相場変動幅を利用した円高リスク回避の参考事例であり、決して将来の収益を保証するものではないので注意していただきたい。

筆者は主観的な相場予測を否定しているわけではない。相場についていくという手法以外の売買も行っており(取引手法の分散)、ファンダメンタルズ的な相場アプローチも行っている。相場の転換点を当てる逆張りはストップ・ロス注文を入れておけばリスクを管理でき、期待収益やリスク/リターン比から相場に参入するメリットは大きいからである。

今回の世界的な金融危機で世界の金融資産は大きく目減りした。昨今流行の「デイトレード」というのは1日で利食いや損切りをする手法である。これは、中・長期投資に比べるとリスクのコントロールが比較的容易である。どこで損を切るかは取引者の懐具合によるが、月間で10%以上の損失を出さないことが重要である。

さて、カラ売り規制が解除された本日のNYダウは678ドル安と大幅安で引けている。米財務省が数週間内に銀行の株式購入を行うとの観測報道があったが、相場を押し上げる材料にはならなかった。10月8日には協調利下げも行われたが、信用収縮の最中に利下げしてもやはり効果はないようだ。本日より注目のワシントンG7が始まるが、市場が期待している国際協調や米金融機関への公的資金注入への言及がないと市場は政策催促の下げ相場を続けるだろう。週をまたいでポジションを持ち越すのは売り買いのいずれもリスクが高い。果たしてG7やIMFに空売り規制が外れた米国株の下落を防止できるような対策はあるのだろうか?

ボリンジャーバンド1σの外側での相場と移動平均線の傾き
楽天FXチャート 豪ドル/円(1時間足)2008/10/9-10/10 AM6:20


(出所:楽天証券、石原順)

楽天FXチャート 豪ドル/円(1時間足)2008/10/9


(出所:楽天証券、石原順)

楽天FXチャート 豪ドル/円(1時間足)2008/10/8


(出所:楽天証券、石原順)

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2008年10月9日まで)

ドル/円およびクロス円市場は“円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する”という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間では円の売り放置やキャリートレードはリスクが高くなる。ATRは過去に見ないような上昇を続けており、現在は円売りリスクの高い局面であることに注意していただきたい。

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ランド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

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