※この記事は2018年5月11日に掲載されたものです。
 

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第3章 バブル崩壊は、投資タイミングのヒントになるか?

<第3話>繰り返されるバブル。資本主義はバカなのか

「投資の勉強をしているのに、なぜバブルのことを学ぶ必要があるかについて改めて話しましょう。それは第一に、私たちの暮らす資本主義の社会では、バブルは付き物だということです。ところで、あなたは何年生まれですか?」

「1985年、昭和60年です」

 バブルの話と自分の生まれ年に何の関係があるのか、と思いつつ隆一は先生に答えた。

「そうですか。であれば、ちょうどいい」
「ちょうどいい?ですか?」

「日本では、1980年代後半の不動産や株価の上昇と好景気の時代を『バブル経済』と呼びますね。2000年代初頭のNTT、光通信などの株価上昇は『ITバブル』、アメリカの2003年以降の住宅価格と金融資産価格の高騰は『住宅バブル』と呼ばれました。ご存知ですか?」
「ええ、聞いたことはあります。私の親父も80年代後半のバブルの時は、若手でも飲んだあとはタクシーで帰ったと言っていました」

「実は、バブルの歴史は古く、17世紀のオランダでは、『チューリップバブル』とよばれるバブルがありました。一般大衆までチューリップの球根を買いあさって、球根一個に家が一軒買えるほどの値段が付いたことがあったのです」

「球根一個で家が買えたんですか!」

「そう、それがバブルです。その後も18世紀のフランスではミシシッピ会社という実態のないペーパーカンパニーの株に人々が殺到したミシシッピバブルが起こりました。目の前に、儲かりそうなチャンスが現れると、その実態に関わらず、人々は、みなそれに群がるものなのです」

 先生は続けた。
「つまり、バブルは資本主義が社会に浸透し始めたころから各国で生じていました。そして、その度に混乱が起こったので、その愚かしさも、弊害も、誰もが知ることとなります。でも、誰もが分かっているのにバブルは繰り返され、21世紀の今日でも続いているのが現実です。むしろ、資本主義が成熟化するにつれてバブルの発生頻度が増えています」

「え? 成熟するほど、愚かだとわかっているバブルが起きやすくなるなんて、バカみたいじゃないですか」

「ふむ、実に全うな疑問ですね」