問題発覚当時、プラチナ相場が長期低迷したのは、単純な連想が先行したため

 問題発覚当時、複数の市場関係者は、同問題の発覚がプラチナ相場を下落させると考えていました。以下の連想が働いたためです。

図:「フォルクスワーゲン問題」発覚後の連想

出所:筆者作成

 以下のグラフは、特に急減すると言われた、プラチナの一大消費地である欧州の自動車排ガス浄化装置向け需要の推移です。3つの機関が公表している同データは、同地区の同需要が急減していないことを示しています。

 データソース(情報源)は共通している可能性があるものの、3つの機関の数値が同一でないことから、それぞれの数値はそれぞれの機関の独自の数式(フォーミュラ)で計算されたものであると、考えられます。

図:欧州における自動車排ガス浄化装置向け需要の推移

出所:WPIC、ジョンソン・マッセイ社、リフィニティブ社のデータをもとに筆者作成

 同問題が発覚した2015年から2019年までの5年間、プラチナ相場が長期低迷を強いられたことを、「風評被害」とするアナリストがいます。筆者も同感です。

 同問題発覚をきっかけとした「プラチナ価格低迷」をイメージさせる連想は、あまりにも連想しやすかったため、市場関係者の間であっという間に広がったと考えられます。データがそれを示していないにもかかわらず、です。