個人投資家がピークを買っている?
「米経済が過熱しないよう確実を期するには、金利はやや上昇せざるを得ないかもしれない」
「金利の極めて小幅な上昇につながる可能性がある」
これらはイエレン財務長官の発言である。この発言がオンラインで公開されると、債券市場の反応は限定的であったものの、株式市場は動揺を示した。
直近の4週間におけるバンク・オブ・アメリカの顧客であるヘッジファンドのフローは売り越しとなっており、2008年以降で最も大きく売り越していたことがわかった。バンク・オブ・アメリカのデータによると、ヘッジファンドの売りはコミュニケーションサービスと情報技術セクターに集中していたという。つまり、前述のメガハイテク5社を含む、コロナ禍の勝ち組をプロと言われる投資家たちは売却していたのである。
イエレンの金利発言以前から、ヘッジファンドは株式を極端に売っていた
その反対には買っている主体がいるわけだが、では誰が買っているのか。それはリテールクライアント、つまり個人投資家である。
以下は、11月以降の株式ファンドへの流入額を示したものである。直近の5カ月における株式ファンドへの資金流入額は過去12年間の総流入額を上回るものとなっている。新規の個人投資家が入ってきた時点が相場のピークというのは昔から言われる株式市場の教訓の一つである。以下は、株式ファンドだけで、個人の取引口座は含まれていないため、それらを考慮すると市場に入る金額はさらに膨大なものになると思われる。
過去5カ月の株式ファンドへの資金流入額とその一年前
個人投資家が株式市場へ参入していることを示すもう一つの事例は、奇数ロット取引の増加である。単元株制度のある日本株と異なり、米国株には単元株制度がないため、1株から購入することが可能だ。以前は、小ロットの取引は証券会社から敬遠され、高い手数料を取るところもあったが、今ではロビンフッドなどを使えば、売買にかかる手数料は無料だ。
次第に、「奇数ロット」取引はアマチュア投資家の動きを示すものとなり、それを逆指標とする人もいた。奇数ロットの取引が増えるということは、知識のない人が市場に参入しているということであり、トップが近づいているということでもある。
大河の一滴ではないが、こうした小口取引がより集まれば莫大(ばくだい)な金額になる。高いレバレッジをかけた取引も多い。個人投資家の多くはただ、株価が動いてくれればいいと考えている。現在の株式市場はそれだけ脆弱(ぜいじゃく)なのである。
最近の株式市場と暗号資産の新高値更新の見出しに隠された、この過大評価された市場は、理論的にはいつ崩壊してもおかしくないレベルである。
テスラ(日足)
ドージコイン/ドル(日足)
ナスダック100CFD(日足)
日経平均CFD(日足)
そして、米国のMMT(現代貨幣理論)相場の高値更新がすべてを覆い隠しているが、バブルはすでに弾けてしまっているという可能性の扉が開いている。それは間違いかもしれないが、ブラックスワン的な深刻なものになる可能性もある。