3月に注目したい新興株の動き

 このコラムでよく取り上げますが、新興株は“流動性が命”です。売買エネルギーが高まる状態で新興株の株価は上がります。株価が高い時期に売買が膨らみますので、その流動性が維持されていれば問題ないのですが、流動性が低下すると上値にシコリを残します。その状態で地合いが悪化すると、ロスカットが増え、短期的な需給悪化で株価が崩れるという悪循環が生まれます。

 現状、高値更新中の上昇モメンタムのある銘柄が激減しているため、値動きの強い銘柄や手あかの付いていない銘柄、テーマ株や材料株ばかりに短期資金が向かう傾向が強まっています。2月でいえば、IPO直後のQDレーザ(2月17日に1銘柄でマザーズ市場全体の売買代金の25%を占める)だったり、3月もIPO直後のcoly(3月2日に同31%を占める)だったり…異常な偏りが、その他銘柄の流動性を奪います。そういう意味では、3月16日から月末まで13社のIPOが予定されています(うち、マザーズIPOが10社)。IPOが増えると市場を活性化させると言えますが、目先的な地合いへの影響でいえば、「IPOはネガティブ」という認識でいいと思います。

 あとは、3万円台に乗せたあとの日経平均株価の値動きが落ち着かない(上下の振幅が大きすぎる)点もネガティブです。日経平均が大きく変動すると、それに振り回されるといった面もありますが、それよりは流動性が低下してしまう方が問題です。日経平均が大きく変動すると、個人投資家のブルベア型ETFの売買が活発化する習性は定着しています。昔は、日経平均が不安定な時期、新興株に資金シフトというようなケースはありました。ただ、ブルベア型ETF隆盛の今、流動性面でマイナスの影響がある点を意識しておいてください。

 その日経平均でいえば、3月は19日に結果の出る日銀金融政策決定会合が重要イベント。これまで続けてきたETFの爆買いについて“点検”し、何らかの見直しが入ると予想されています。今年に入って買入額を減額し、買付条件も厳格化していますので、株価にポジティブな内容ではないはず。これも直前で警戒されそうですが、新興株に関しては直接的な影響はありません。これまで日銀にETF経由で新興株は買ってもらえなかったため、イベント的にはニュートラル。ただ、これも前述の通りで、日経平均の波乱要因になった場合、新興株の流動性低下につながる可能性があります。

 あとは、今月内に東京オリンピック、パラリンピック開催の是非が決まる見通し。開催が正式に決定した場合、2月に続いてアフターコロナ株に短期資金が流れ込む可能性は高いといえます。このとき、2月のようにリバーサル(アフターコロナ株買い/ウィズコロナ株売り)の形になった場合、新興株に多いウィズコロナ株にはマイナスとなる可能性も。東証1部銘柄でいえば、アフターコロナ株の代表格がJALなど空運株、JR東海などJR株、高島屋など百貨店株、HISなどGoTo関連株、資生堂などインバウンド株。ウィズコロナ株の代表格は、エムスリーやMonotaRoなどグロース株や、任天堂などゲーム株、東京エレクトロン、レーザーテックなど半導体株など…中核銘柄でロングショートの動きが起きているかを気にしつつ、海外勢の行動を感じ取るしかなさそうです。