「信用倍率」とはなにか?

もう1つ「信用倍率」という言葉も押さえておきましょう。これは、「信用買い残高÷信用売り残高」によって計算され、信用買い残高が信用売り残高の何倍の水準かを表すものです。例えば、信用買い残高が20万株、信用売り残高が5万株の場合、信用倍率は20万株÷5万株=4倍です。逆に信用買い残高が5万株、信用売り残高が20万株の場合の信用倍率は5万株÷20万株=0.25倍となります。

信用売り残高に比べて信用買い残高の方が多いほど信用倍率は上昇します。一方、信用倍率が1倍を切っている場合は、信用売り残高の方が信用買い残高より多い(このことを「売り長(うりなが)」といいます)ことを表します。

信用倍率は現時点での信用取引による需給動向を表すだけでなく、時系列的にその推移を追うことにより、信用取引に伴う需給が改善傾向にあるのか、それとも悪化傾向にあるのかを判断することができます。一般に、信用倍率が上昇傾向にあれば需給悪化、低下傾向にあれば需給改善となります。

なお、単に信用倍率の数値だけみても信用取引による需給を正確に知ることはできません。なぜなら、信用倍率は、信用買い残高と信用売り残高の「割合」を示すのみであり、それぞれの「残高」自体は考慮されていないからです。

信用倍率はそれ単独でみるのではなく、信用買い残高や信用売り残高と合わせてみるようにしましょう。

日々の売買高と信用買い残高との比較も重要

さらに言えば、信用買い残高や信用売り残高の絶対値だけをみてもあまり意味がありません。例えば、信用買い残高が同じ20万株のA株とB株があるとしましょう。A株の日々の平均売買高は200万株、B株の日々の平均売買高が2万株だとすると、この20万株の信用買い残高が与える影響はそれぞれどうなるでしょうか。

A株の信用買い残高は、日々の売買高の10分の1に過ぎませんから、信用買いの決済による将来の売り圧力は無視してよいレベルです。一方、B株の信用買い残高は日々の売買高の10倍に達していますから、信用買いの決済に伴う売り圧力により、将来かなり需給面での重石になることが想定されます。

一概にはいえませんが、信用買い残高が日々の平均売買高の3倍以上に積み上がってくると、かなり需給に悪影響を与えることになると思います。

なお、信用買い残高と売買高を比較する際は、信用買い残高から信用売り残高を差し引いたネットの信用買い残高を用いるのがよいでしょう。