※この記事は2018年3月30日に掲載されたものです。

 

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第2章 資本主義に飲み込まれるか、味方にするか?

<第3話>投資で儲けたカネは汚い?ハイブリッド社員とは

 今度は、「稼ぐ」という言葉が隆一の頭の中でグルグル回り始めた。自分も、もっと稼がなきゃいけないのかなと思う半面、稼ぐばかりが人生じゃないとも思う。

 週末にはゆっくり寝たいし、家族とショッピングモールにも行きたい。妻は週末も資格の勉強などをして、もっと私に稼いでもらいたいと思っているかもしれないが…。

「稼ぐというと、『もっと、働け!』と言われているように聞こえるかもしれません。特に長時間労働が習慣のようになっている日本人にしてみれば、『たくさん、長時間働け!』となりそうで抵抗があるでしょう。もちろん私は、そんなことを言っているのではありませんよ」

 それを聞いて、隆一は少し安心したが、<副業するようなパワーはないな>とも思っていた。

「資本主義では確かに『稼ぐことは善』ですが、でも、資本主義での稼ぎ方は、勤労ばかりではありません。所得を生み出す生産には、店舗や工場などの生産設備を調達したり従業員を雇ったりするために資本が必要です。そこから生み出された利益は、資本の提供者である株主とそこで働く労働者とに分配されます。しかし、投資を通じて株主になれば資本の提供者にもなるわけですから、資本の対価と労働の対価の両方を受け取れます。つまり、<ハイブリッド社員>になるのです」

「ハイブリッド社員?はじめて聞きました」

「そう、ハイブリッド車がガソリンと電気の2つで動くように、あなたも給与と投資の両方で資産を増やすのです」

 隆一は、そのハイブリッドという言葉の持つ、自分にはどこか縁遠いと思っていた響きが気になった。