「24時間営業」のシステム売買が下げを増幅か

 よく聞く単語かと思いますが、「リスクパリティ」という運用手法が年金運用などに支持されています(リスク配分の偏りを排除でき、過去のトラックレコードも良いため)。ポートフォリオの中の株、債券など各資産の割合を、リスクが均等になるよう配分していく戦略です。

 今回のように株価急落で株のボラティリティが上がったら、株のウエイトを自動的に落とします(売却)。一方で、債券のウエイトを高めることで、それぞれの変動を相殺します。

 今は、何がすごいかといえば、それを「24時間体制」でやっていること。わかりやすいのが、9日の朝です。原油の急落を受け、時間外の米株指数先物は急落し、米債先物は急上昇(金利低下)。同時に、日本株の先物は急落し、米ドルは売られ、円は買われ……これが日本の朝の時間に短期間で済んでしまったことです。

 その動きが発生した結果として、人間(日本の個人投資家など)がロスカットなどをさせられ、それがさらに下げを増幅させるといった順番です。

 欧州の某著名ファンドが、日本の投資家向けに同様の戦略をとった投資信託を提供しています。その投資信託のHPには、こう記載されています。自社の戦略を支えているのは、「24時間世界中の市場データを分析する最新システム」であること。そのシステムを使って、「世界中の市場で生み出される大量のデータを瞬時に分析している」こと。

 これで何をしているか? については、こう記載されています。「株式先物と国債先物の価格変動を10分刻みでモニタリング」「高頻度データの分析で、異常値を察知した場合、瞬時にポートフォリオ全体の組入れ比率を削減」

 そう、24時間、常にマーケットを機械が監視し、自動でリバランスをしてしまう世界になった……これが今です。そして、この存在を熟知している投機勢は、短期的なボラティリティ上昇でひと儲けしようと、トレンドフォローで動きます。システム取引の発達と金融緩和で無駄に高まった投機勢の流動性が融合しているわけです。