信用取引のメリットの一つに、「売り建てによって、株価の下落局面でも収益のチャンス!」があります。株価の上昇局面でしか利益がねらえない現物株取引と最も異なる点ですし、信用取引について説明した書籍やウェブサイトでも、ほぼ間違いなく掲載されている特徴なのですが、そのわりには売り建てに対して距離を置いている投資家も多いようです。

 これまで現物株オンリーだった方にとっては「株券を借りて売った後、安く買い戻すことで利益を得る」という仕組みがイメージしにくい面があるほか、古くから「信用売りの損失は青天井」と言われていることも影響しているのかもしれません。

 買い建ての場合、どんなに株価が下がっても0円までですので、建玉金額以上の損失は発生しませんが、売り建ての場合は株価に上限がない分、損失も無限大になってしまうという考え方です。こうしてみると、信用取引の売り建ては買い建てに比べて不利に見えてしまうのかもしれません。

 確かに「損失額に上限があるかないか」でみれば売り建ては不利です。ただし、買いが買いを呼ぶ展開と、売りが売りを呼ぶ展開とでは、「ライブドア・ショック」、「リーマン・ショック」、「チャイナ・ショック」などの言葉があるように、直近10年間だけでも売りが加速して急落する展開が多く、むしろ買い建ての方が痛手を被った場面が少なくありません。そのため、損失額上限の有無で有利・不利を判断しない方が良いと言えそうです。

 また「天井三日、底百日」という相場格言にもある通り、一般的には相場の上昇局面の期間は短い傾向にありますので、売り建ての損失が青天井になるまで株価が上昇し続ける可能性は、相場が急落する可能性よりも低いと考えられ、必ずしも売り建ての方が不利ではないと思われます。