地政学的リスク再燃により金は反発

 金相場は反発。北朝鮮による日本と米国への威嚇やドル安が支援材料となった。北朝鮮の朝鮮アジア太平洋平和委員会は、核実験に対する国連安保理の制裁決議を支持したとして、「日本列島を核兵器で沈め、米国を破壊して廃虚と暗黒にする」と威嚇した。これを受けて、地政学的リスクが再燃しており、安全資産としての金が再び買われやすい地合いになっている。

 一方、8月のCPI(米消費者物価指数)は市場予想を上回る内容となり、米利上げ観測が高まったことで、一時的にドルが上昇し、これが金相場の上値を抑える場面もあった。

 中国の仮想通貨「ビットコイン」を扱う取引所「ビットコイン中国」が今月末で取引を全面停止すると発表したことも支援材料となった可能性がある。実態がないビットコインに対し、金は現物であり、一般的に安全資産として認識されている。この違いは実はきわめて大きく、今後もこの立ち位置は変わりようがないだろう。朝方の時間外取引では、北朝鮮に関する報道もあり、買いが優勢になっている。

 

中国の動きに注目。非鉄相場は続落

 非鉄相場は続落の動き。LME(ロンドン金属取引所)在庫は銅とニッケルが急増。特に銅はここ最近で在庫の持ち込みは多い。市場では、中国の8月の非鉄金属の生産量が1年ぶりの低水準に落ち込んだことに注目。中国政府は大気汚染対策を理由に、生産施設への取り締まりを強めているが、これが生産減少につながったとみられている。

 銅、アルミ、鉛、亜鉛、ニッケルなど10種類の非鉄金属の8月の生産量は前年同月比2.2%減の442万トンだった。15年12月以降で初めて前年同月比で減少。1~8月では前年同期比4.9%増の3,640万トンだった。

 個別では、8月のアルミ新地金生産量は前年同月比3.7%減の264万トンと、2カ月連続で減少。16年4月以来の低水準となった。生産能力の削減による影響がはっきりと出ている。7月は269万トン。1~8月累計では2,217万トンで、前年同期比では6.1%増加だった。

 中国政府の環境対策の影響は、鉱工業生産などにも表れている。中国政府は北部地域などを対象に、大々的な大気汚染対策を開始し、工場の閉鎖や排出削減の強化を約束した。また目標の達成具合を確認するため、生産施設などに対して無作為の検査を実施するとしている。

 このような中国政府による厳しい取り締まりの結果、非鉄金属の生産施設は閉鎖に直面しているという。特に鉛の生産者への影響が大きいもようで、政府系調査会社の安泰科によると、違法な二次製錬所の80%が昨年下半期以来閉鎖されているとされている。

 8月の鉄鋼生産は前年比8.7%増の7,459万トンで、前月に続いて過去最高を更新した。当局は環境保護を目的に生産施設の査察を実施しているが、鉄筋先物が8月に8.5%上昇するなど、価格上昇を背景に生産拡大が続いているようである。

 1~8月累計は5億6,641万トンで、前年比5.6%増だった。中国の製鋼所は利益率の高さを受けて、フル稼働で生産を増やしている。そのため、一部には予定されていたメンテナンスを延期する製鋼所もあるという。しかし、当局が環境対策として一部地域で鉄鋼生産量を大幅に抑制する姿勢を見せており、冬季に向けて需給がひっ迫するとの懸念もある。これもまた鉄鋼価格を押し上げる要因になっているようである。

 中国の8月の鉱工業生産は前年比6.0%増と、昨年12月以来の低い伸びだった。1~8月期の固定資産投資は前年比7.8%増で、市場予想を大幅に下回った。これは18年ぶりの低い伸びで、インフラ整備向けなど公共投資の勢いが弱まりつつあり、今年下半期に経済成長率が減速する可能性がさらに高まったといえる。

 地方政府が債務抑制のため、公共投資を控えている可能性が指摘されている。公共事業の恩恵を受けてきた国有企業だけでなく、民間の投資も鈍化。政府の住宅バブル抑制策の影響で、民間企業の資金調達が難しくなったことが背景にあるとみられている。

 8月の小売売上高は前年比10.1%増加。7月の同10.4%増から伸びが鈍化している。鈍化は2カ月連続。1~8月の民間投資は6.4%増で、1~7月の6.9%から鈍化した。

 民間投資は中国の投資全体の約60%を占めているもようだが、中小の民間企業が資金調達に苦労しているもようである。住宅バブル抑制策が景気の先行き不透明感につながっているようだが、習近平指導部は最重要政治イベントである共産党大会を来月に控えており、経済政策運営で難しいかじ取りを余儀なくされることになりそうである。

 

世界の石油需要は伸びる見通し。石油相場続伸

 原油は続伸。ブレント原油は一時55.99ドルまで上昇している。明確な上昇基調に入っており、基調は変わりつつある。これで直近高値の56.65ドルを超えると、本格的な上昇に入ることになるだろう。問題はWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油である。米国のシェールオイルの増産観測で、ブレント原油に対して出遅れ感が強い。一時50ドルを上回ったが、本格的な上昇に転じるには、51ドル超が不可欠である。

 市場では、前日にIEA(国際エネルギー機関)が17年の世界の石油需要の伸び見通しを上方修正したことが材料視されているようである。OPEC(石油輸出国機構)も協調減産の再延長を検討しているもようであり、需給バランスの再均衡のペースが速まる可能性がある。繰り返すように、原油相場は需給要因以外においても、依然として相当割安である。それは、金や銅、ユーロと比較すれば容易に理解できる。これらの市場から見たWTI原油の適正レベルは65ドルから75ドル水準である。