「実質PBR」で割安企業を見つける

「買収価値と比べて割安」と言えるのは、どのような企業でしょうか? 「収益基盤がしっかりしていて、かつ、1株当たり純資産(資本)の価値よりも株価が小さい企業が、買収価値対比で割安ということができます。

 そこで見るべきは、PBR(株価純資産倍率)という指標です。PBRとは、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを示す指標です。PBRは1倍以上になるのが普通ですが、財務や収益力に問題のある銘柄では、1倍を割り込むものもあります。もし、財務や収益力が良好なのに、PBRが解散価値と言われる1倍を大きく下回っている銘柄があれば、買収価値から割安と言えます。図で示すと、以下のような銘柄です。

PBR 0.5倍:イメージ図

注:筆者作成

 今日、注目するのは、見かけ上のPBRではなく、含み益を考慮した実質PBRです。保有不動産の含み益の70%を自己資本に加えた上で、計算し直したPBRを、実質PBRと呼んでいます。

賃貸不動産の含み益上位4社のPBRと実質PBR:12月4日時点

出所:各社有価証券報告書(住友不動産のみ決算短信)から楽天証券経済研究所が作成。
実質PBRは、実効税率を30%として含み益の70%を自己資本に加えて計算。
(注)含み益のある不動産を売却すると、含み益が売却益となり、自己資本が増加します。ただし、売却益に税金がかかります。実効税率を30%と仮定すると、含み益の70%が自己資本に加わることになります。実質PBRは、売却した場合に増える自己資本を、含み益の70%と仮定して、計算しているPBRです。

 ここで注目していただきたいのは、実質PBRです。4社とも、今期(2020年3月期)純利益(会社予想)は、最高益を更新する見通しです。財務内容は良好で、巨額の含み益を有します。にもかかわらず、解散価値といわれる実質PBR 1倍を大きく下回っていますので、買収価値から割安と判断することができます。

 業績・財務とも良好なのに、実質PBRが0.7倍を下回ると、欧米ならば、敵対的買収が入ってもおかしくないところです。ただし、日本からは買収ファンドがほとんど出て行ってしまったために、そのような狙いで投資する主体はほとんどありません。