iDeCoの常識を疑う

 2017年から加入対象者が広がったiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は、着実に加入者が増えているようです。2019年9月末時点では138万人ですから、企業型加入者の720万人には、まだ遠く及ばないものの、2016年末時点で30万人程度の加入者がその後の3年あまりで5倍近く増えているというのは驚くべきペースと言って良いでしょう。

 しかしながら、iDeCoに関しては、まだまだ多くの人が誤解している部分がたくさんあります。素人の人であればともかく、お金のプロと言ってもよいFP(ファイナンシャル・プランナー)の人の中にも間違った常識を持っている人がいます。これらの間違った常識について、今後の法律改正の動きも踏まえてお話したいと思います。

1.50代でも加入するのは決して遅くない

 最初は加入年齢についてです。iDeCoは現時点では加入できる上限年齢が60歳です。したがって、50代に入ってしまったら加入できる期間がとても短いために、あまり積み立てることができず、メリットは小さいと考えられています。加えて、加入期間が10年以上ないと、60歳から引き出すことができない、ということからもう50代は手遅れで入ることができないという人もいます。しかし、これは必ずしも正しくないと私は考えています。

 理由の一つ目は、現在加入年齢の上限を65歳まで引き上げるということが昨年末の「税制改正大綱」に盛り込まれ、実施に向けて法制化が進みつつあるからです。

 自営業の場合は、国民年金の加入年齢引き上げとセットになっているため、実現に向けたハードルは少し高いように思いますが、サラリーマンの場合は企業型も規約によっては65歳まで加入可能。

 つまり、iDeCoについても65歳までの加入が実現する可能性は高いと言えます。さらに、60歳から受け取れないということについても、多くの企業では65歳までの再雇用で働く人が増えていることを考えた場合、今後は60歳で引き出す人ばかりとはならないだろうと思います。したがって、必ずしも50代だからiDeCoに加入するのは意味がないとは、言えません。