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ドル安で「金」は高値を維持、ハリケーン警戒で「原油」は大幅安
江守 哲
コモディティ デイリーコメント
貴金属、原油を中心とした商品(コモディティ)マーケットの要点をまとめたデイリーコメント。コモディティマーケットに精通した江守氏の鋭い着眼点に注目。

ドル安で「金」は高値を維持、ハリケーン警戒で「原油」は大幅安

2017/9/11
・ドル安影響で「金」は高値水準維持
・非鉄は高値から反落
・ハリケーン・イルマ警戒で原油は続落
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ドル安影響で「金」は高値水準維持

 金相場はほぼ横ばい。ただし、1年超ぶり高値水準は維持している。ドルの下落に加え、弱めの経済指標で12月の米利上げ観測がさらに後退したことが背景にある。

 米国で年内もう1回政策金利が引き上げられるとの見方が少なくなる中で、ドルは主要通貨に対して2年半超ぶりの安値をつけており、ユーロは対ドルで数年ぶり高値をつけている。

 ドラギECB(欧州中央銀行)総裁は今秋にも来年以降の量的緩和策の縮小を決定する可能性を示唆しており、これもユーロ高を誘っている。

 現在の金相場は北朝鮮情勢の不透明感が支えている一方で、根本的な上昇の背景にはドル安がある。ニューヨーク連邦準備銀行のダドリー総裁は7日の講演で、3週間前の年内追加利上げの主張を繰り返さなかったこともドル安を誘っている。

 8日は北朝鮮が9日の建国記念日に、再びミサイル発射実験を行う可能性があるとの見方もあり、大きく下げることはなかったが、週末に大きな動きがなく、週明けは下落から始まっている。もっとも、押し目では安全資産としての需要が高まる可能性があり、下値も限定的となるだろう。

 一方、中国人民銀行(中央銀行)は8月も自己勘定による金購入を行わなかったとの指摘がある。人民銀は10カ月連続で金準備を増やしていないことになる。押し目買いを基本とする中国勢が上昇基調に乗れていない可能性があるが、下げないと見ると高値でも買う傾向がある。この動きが出ると、上昇に勢いが付く可能性があり、注意が必要である。

 また、世界最大の金ETF(上場投資信託)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、9月1日の831.21トンから9月8日には834.5トンに小幅増加した。5日には840.08トンに増加したが、そこからは減少。高値での利食い売りが出ているといえるだろう。

 COMEX(ニューヨーク商品取引所)金先物市場での大口投機筋のポジションは、9月5日時点で24万5,298枚の買い越しとなり、前週から1万4,251枚増加した。買いポジションが1万7,190枚の大幅増となった一方、売りポジションも2,999枚の増加となり、前週と同じパターンだった。

 ただし、買いポジションの増加幅がやや縮小し、売りポジションが増えており、高値圏にあると見た一部の投機家が新規に売り始めていることがうかがえる。

非鉄は高値から反落

 非鉄相場は反落の動き。LME(ロンドン金属取引所)在庫はアルミ・銅・ニッケルが増加した。高値にあるため、余剰在庫を持つ向きが倉庫に搬入した可能性がある。

 アルミは下げたが、2,088ドルのサポートを維持している。銅は大幅反落。ただし、中期的なトレンドの6,680ドルで下げ止まっており、許容範囲だ。大きく下げても、6,250ドルを維持できていれば、基調は変わらない。買い遅れた向きの押し目買いが入りやすいため、下値も限定的だろう。この日の下げは中国の貿易統計で銅輸入が大きく伸びていないことが材料視されたようだが、あくまで目先の材料でしかない。

 ニッケルも同様に大きく下落したが、銅と同じように中期的なサポートである1万1,500ドルで見事に止まっている。下げても押し目買いが入り、下値は限定的だろう。亜鉛はトレンドを下回ったが、2,900ドルまでの調整は許容範囲である。

 鉛はさらに大きく調整しているが、2,265ドルで下げ止まっており、これ以上の下げがなければ何も問題ない。最近は強い上昇基調が続いたが、過熱感から利食い売りが優勢になりやすい地合いにある。当面は上値を買う動きは限定的となりそうだが、米追加利上げ観測の後退や北朝鮮情勢などの地政学リスクの後退があれば、再び買い戻されるだろう。

 14日には中国の8月の鉱工業生産、小売売上高、1~8月の都市部固定資産投資などが発表される。これらの材料にも注目しておきたい。

 一方、中国の8月の輸出は前年同月比5.5%増の1,992億ドル、輸入は13.3%増の1,572億ドルだった。10月の共産党大会に向けて、好調な結果となっており、経済の安定を重視する習近平国家主席にとって好ましい状況にある。

 ただし、人民元高の影響もあり、輸出の伸びは7月に比べて鈍化しており、輸出依存度の高い製造業者から不満の声が上がる可能性もある。そのため、元高を演出する必要のある党大会が終われば、元安誘導に転換する可能性もあるだろう。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は420億ドルの黒字で、対米黒字は262億ドル(7月は252億ドル)だった。これは2015年9月以来の高水準。トランプ政権の不満が高まる可能性がある。

 中国の8月の乗用車販売台数は、前年同月比4.7%増の188万631台だった。今年から小型車減税の減税幅が縮小されたことを受けて、販売低迷が長期化していたが、前年比の伸び率は、6月以降はプラスが続いている。1~8月累計は前年同期比2.4%増の1,479万2,931台。

ハリケーン警戒で「原油」は大幅安

 原油は続落。ここ百年で有数の強い勢力のハリケーン「イルマ」が米フロリダ州と南東部に接近し、需要が大きな打撃を受けるとの懸念が売りにつながった。

 8月25日にテキサス州に上陸したハリケーン「ハービー」の影響で、7日時点で米国内の製油所の約20%が依然として停止しているもようだ。米国の石油産業が完全に復旧するまで数週間かかる見込みで、この影響が今後の在庫統計で確認されることになる。

 また、イルマが襲来した場合、壊滅的な被害によって原油需要が一段と落ち込むと懸念が強まっている。ただし、イルマはメキシコ湾の産油エリアを通過しないと見られ、原油供給への影響はないと予想されている。

 ロイヤル・ダッチ・シェル社はイルマ接近に対する予防策として、メキシコ湾東部の石油施設の操業を一部停止し、稼働人員を減らしたもよう。今のところ生産への影響はないという。

 エクソンモービル社のテキサス州ボーモントにある製油所(処理能力=日量36万2,300バレル)は10月第1週まで操業停止を続ける可能性があるという。ボーモント製油所は、ハービーがテキサス州南東部を襲った影響で、8月30日に操業停止した。同社によると、同製油所は豪雨で浸水したという。ハービーの影響で、米国の製油能力の約4分の1にあたる日量440万バレル分の処理が停止したとされている。

 一方、8日までの週の米国内の石油掘削リグ(石油掘削装置)稼働数は前週比3基減の756基となった。これは6月以来の低水準。過去4週で減少したのは3週目となる。

 また、8月は1年3カ月ぶりに稼働数が減少したことになる。最近の原油安を受けて、支出を削減したことが背景とみられている。

 一方、サウジアラムコ社は、10月の顧客向けの原油供給量を日量35万バレル削減する見通し。原油輸出首位のサウジは日量48万600バレルの生産削減を求められており、同社の供給削減はOPEC(石油輸出国機構)主導の協調減産に合わせた措置と見られ、アジア向けで日量180万バレルの供給を削減する見通し。9月にはすでに少なくとも日量52万バレルの供給削減を行ったと見られている。

 中国の8月の原油輸入は3,398万トン(日量800万バレル)で、前年同月比3.4%増加。ただし、1月以来の低水準だった。政府の環境調査で安全上の問題を指摘された一部の独立系製油所がメンテナンス作業のため、想定以上に稼働を停止したことが背景と見られている。7月の輸入は日量818万バレルだった。1~8月の原油輸入は前年同期比12.2%増の2億8,105万トン(日量844万バレル)となっている。

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