売上高も回復しつつあります。過去の約2年間を振り返ると低迷していましたが、下の図の通り、足元の2四半期では増収に転じています。

売上高の四半期推移(前年同期比伸び率)

単位:%
出所:会社資料より楽天証券作成

 なお、2017年12月期、2018年12月期の販売が減少した理由は、主に構造改革の影響によるものであり、実質の販売は緩やかに増加していました。下の図は、売上高の四半期増・減収率を要因分解したものですが、青色の「原料の販売」、水色の「価格/商品ミックス」から生じる部分はプラス基調で推移しています。

「コカ・コーラ」などの炭酸飲料は、世界的に健康志向が高まるなか向かい風が吹いている状況と言えますが、同社は砂糖を含まない炭酸飲料「コカ・コーラ ゼロシュガー」などを投入して、消費者の一定の需要を掴んできたと考えられます。

売上高の要因別増減収率

単位:%
出所:会社資料より楽天証券作成

3.コカ・コーラが実施した「構造改革」とは?

 コカ・コーラの「構造改革」とは、世界に広がるボトラーの効率化や再編を指します。同社は課題があると認めたエリアのボトラーの立て直しを積極的に進めてきました。具体的には、ボトラーとの資本関係を活かして事業構造の効率化を積極的に後押しし、場合によってはそのボトラーの持分を最終的に売却してきました。

 構造改革が大きく影響した2017年12月期、約10年にわたる改革を経て、米国内ボトラーの保有株式の放出をほぼ完了させました。また、ドイツ、中国、南アフリカにおけるボトラーの非連結化の影響も受けました。

 子会社のボトラーを手放すと、売上げの基準が小売店への出荷ベースから、ボトラーへの原料販売ベースに移行するため、売上自体の水準は減ります。しかし、ボトラーが子会社であり続けた場合に負担となる、販売関連費用や各種固定費等を支払う必要がなくなります。競争激化や人件費の高騰で読みにくくなっているコストの水準を押し下げることによって、着実に利益が出る質の高いビジネスモデルへの転換を図ったとみられます。

 なお、ボトラーとは、「コカ・コーラ」の原液をボトルに詰めて、そのエリアの小売店などに製品を販売する企業を指します。そのエリアの特性を熟知した企業が販売や配送を担う仕組みにより、コカ・コーラは世界中に製品を広げてきました。

 ボトラーと本社の資本関係はエリアによってさまざまです。参考までに、日本の場合は、上場しているコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(2579)の15%の株式を日本コカ・コーラ株式会社が保有しています(8月1日に同社ホームページより確認)。日本コカ・コーラ株式会社は、コカ・コーラの子会社から全額出資を受けている原液製造会社です。