お金と投資をもっと身近に
facebook twitter
「金」は一時上昇するも横ばい、「原油」は大幅反発
江守 哲
コモディティ デイリーコメント
貴金属、原油を中心とした商品(コモディティ)マーケットの要点をまとめたデイリーコメント。コモディティマーケットに精通した江守氏の鋭い着眼点に注目。

「金」は一時上昇するも横ばい、「原油」は大幅反発

2017/8/21
・金は下値堅い状況続く ・非鉄は強気相場 ・ 在庫減少などにより、原油は大幅続伸
facebook twitter 印刷する

金は下値堅い状況続く

 金相場はほぼ横ばいでの推移。トランプ政権の先行き不透明感を背景としたドル安やスペインでのテロ事件が安全資産とされる金を買う動きにつながり、一時1,300ドルを超えて9カ月ぶりの高値に急伸する場面があった。ただし、トランプ大統領が保守強硬派のバノン大統領首席戦略官・上級顧問を解任したとの報道を受けて、市場に安心感が広がり、米国株やドルが下げ幅を縮小したことや、債券利回りが上昇したことで金相場は圧迫された。
 だが、北朝鮮情勢の不透明感もあり、下値は堅い状況が続くことになると思われる。米国はこれまで対話による問題解決の道を模索し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が米領グアム周辺への弾道ミサイル発射計画の実施を保留したことを受けて、ティラーソン米国務長官は「我々は対話に至る道を見つけることに関心を持ち続けている」と発言している。そのうえで「対話の実現は金委員長次第」と強調し、北朝鮮が歩み寄りを見せる必要があるとしている。
 しかし、21日からは米韓合同軍事演習が当初の予定通りの規模で行われる見通しであり、これを受けて北朝鮮リスクが再び高まることも予想される。
 金相場は北朝鮮情勢に直接的な影響を受けるため、状況を慎重に見守る必要がある。状況が悪化すれば、1,300ドルを大きく超える可能性は十分にある。
 一方、世界最大の金ETF(上場投資信託)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、8月11日の786.87トンから18日には799.29トンに増加した。久しぶりの増加となったが、株価の上値が重くなるなか、投資家のリスク回避姿勢が強まり、投資資金が金市場に戻りつつあることがうかがえる。
 COMEX(ニューヨーク商品取引所)金先物市場での大口投機筋のポジションは、8月15日時点で18万7,734枚の買い越しとなり、前週から3万8,897枚増加。買いポジションが3万1,353枚の大幅増となった一方、売りポジションが7,544枚減少した。金相場の上昇基調が続くなか、投機筋の新規の買いと売りポジションの買い戻しが継続しているが、その傾向がさらに顕著になっている。
 一方、16日公表されたFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨では、9月19日、20日開催の次回のFOMCでの資産圧縮決定がコンセンサスであることが示されたが、利上げはかなり先になると考えられる。追加利上げについては、複数のFOMC参加者が物価動向を見極める必要性を主張している。また、原油価格が戻らないなかでは、インフレ指標が高まらないことから、FRB(連邦準備制度理事会)が想定する、年内のあと1回の利上げに不透明感が強まり、これがドルの上値を押さえ、金相場を支えるだろう。
 ちなみに、今年の金相場の最終目標は1,370~1,375ドルである。

非鉄は強気相場 

 非鉄相場は総じて堅調に推移。LME(ロンドン金属取引所)在庫はアルミが増加したが、それ以外は減少した。
 アルミは反落したが、2,000ドルの大台を維持し、上昇基調も変わっていない。銅は反発。基調も変わっていない。6,400ドルを維持しており、堅調そのものである。ニッケルは急伸し、高値を更新した。これはきわめて強い動きである。亜鉛も大幅上昇して高値を更新した。鉛は高値から反落しているが、上昇基調は維持されている。このように、下値の堅さが目立つ一方で、堅調さも明白であり、非鉄相場はすでに強気相場に入っていると考えてよいだろう。
 ICSG(国際銅研究会)は最新月報で、5月の世界銅市場が4万5,000トンの供給不足だったとしている。4月は8万4,000トンの供給不足だった。1~5月は1万4,000トンの供給過剰で、前年同期は28万2,000トンの供給不足だった。5月の世界銅生産は196万トン、消費量は200万トンだった。
 一方、中国アルミ(チャルコ)は17年上半期のアルミ地金生産が25万トン増加したとしている。民営企業による減産が背景とみられている。さらに下半期は、増産に向けてさらに投資するとしている。チャルコのアルミ製錬能力は年間約500万トンとなっている。

在庫減少などにより、原油は大幅続伸

 原油は大幅続伸。ドル安と米国の石油掘削リグ稼働数の減少が材料視された。
 米国内の石油掘削リグ稼働数は前週比5基減の763基となり、過去3週間で2週目のマイナスだった。生産者が原油価格の下落に対応して設備投資を縮小したとみられている。
 米国では供給抑制の兆候が見られ始めている。産油量は2016年中盤から13%増加したが、原油在庫は過去最高だった3月から13%減少しており、昨年の水準を下回っている。この事実に目を向ける必要があるだろう。
 米国の原油在庫の減少傾向は顕著だが、その背景には製油所の稼働率の堅調さがある。原油需要も高まっており、弱気筋からすれば、意外な状況といえるだろう。米国内の産油量は増えているが、これ以上の増加はかなり難しくなってくるだろう。
 いまのシェールオイル生産は、かなり高い確率で低いコストの油田での生産になっている。これは、将来の高コストにつながる。このロジックを理解できていない市場関係者が多いようだが、それもいずれわかることである。
 また、原油先物市場でのヘッジもしづらくなっている。直近の生産に関しては、多くのシェール企業は売値を先物市場でヘッジ済みとみられているが、将来の生産については、50ドルを確保できない状況にある。これでは価格は上がらざるを得ないだろう。また、OPEC(石油輸出国機構)加盟国・非加盟国の減産で、需給バランスが改善し始めており、世界的な需給は着実に調整が進んでいる。
 米国での原油在庫の減少もあり、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は順ザヤの幅が徐々に狭くなってきている。こうなると、逆ザヤへの動きが進むことになり、期近の価格が上昇する一方、将来のヘッジを行うための先物が上昇せず、ますますシェール企業はヘッジができなくなる。
 結果的に、原油相場は期近から上昇することになる。いずれにしても、需給動向が最終的には価格に反映され、コモディティは投機筋ががんばって価格を動かしても、最終的には需給バランスで価格が決まることになる。
 さらに決定的なのは、生産者の生産コストである。これを下回った状態は長続きしないだろう。多くの産油国の財政、あるいは経常収支のバランスを維持するための原油価格の水準は、50ドルなどの低い水準ではなく、70ドルや80ドルの国が多いのが実態である。
 このようなポイントまで考慮すれば、いまの原油価格が産油国にとってあまりに安すぎることがわかる。さらに付け加えるとすれば、ドル安基調がドル建て原油価格にまったく反映されていない。これも材料視されれば、原油相場の方向性は決まったようなものであろう。
 直近では、売られすぎ感が強いため、戻しやすい地合いにある。重要なチャートポイントの47ドルでサポートされており、反発の素地はできている。48.50ドルのレジスタンスを超えて、さらに49.95ドルにあるさらに重要なポイントを超えると、51ドルを目指す動きになろう。明確な上昇基調に入るには、51ドルを超える必要があるが、それも時間の問題であろう。

【この記事に対するアンケート回答はこちらから】

トウシルのオススメ記事

はじめよう株主優待
人気記事ランキングTOP
トウシル TOP
このレポートについてご意見・ご感想をお聞かせください「金」は一時上昇するも横ばい、「原油」は大幅反発

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。

記事についてのアンケート回答確認

「金」は一時上昇するも横ばい、「原油」は大幅反発

今回のレポートはいかがでしたか?
コメント
 
 
 

 

 

メールマガジン

直近1日の記事を配信します

配信:平日毎営業日配信
祝日・GW・夏季/冬季休暇 を除く

公式SNS

タイムリーな情報を
ゲットできます

配信:記事配信時 随時
facebookおよびTwitterには一部配信しない記事もあります

TOP
×
トウシル メールマガジン および SNSについて
メールマガジン 申込み

トウシルメールマガジンではレポートやコンテンツ等、直近1日の記事をお知らせします。
本メールは配信希望のお客様に平日毎日お届けしております。
リアルタイムでの情報取得は、公式SNS(facebook、twitter)もあわせてご利用ください。

  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。
メールマガジン サンプル
メールマガジンサンプル
  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。