75歳~:「高齢後期」の課題

 年齢に関する個人差は大きいが、認知機能の衰えの可能性を意識して資産運用の方法を考える必要があるのが、高齢後期の特徴だ。「○○歳以上の×人に一人は認知症になる」といった報道が頻繁に目に入るが、誰でも、認知症は自分に起こり得る状態の一つだという認識を持つ必要がある。

 

 一方、高齢であっても認知症であっても、資産運用が非効率的であっていい訳ではない。自分で使い切るにしても、遺産として次の世代に渡すとしても、お金が増えて困るということはないし、増やす機会を利用しないのはもったいない。

 職業後見人が行う成年後見にあっては、もっぱら被後見者の資産の「保全」ばかりに力点が置かれやすいが、適切なリスクの大きさで、かつ低コストな「効率的運用」を、もちろん年率0.5%以下のコストで続けて行くことが、この時期の課題だ。

 内外株式のインデックス・ファンドと個人向け国債で運用を続けて、安全なペースで計画的に資産を取り崩して使う必要があるのは高齢前期と同じだ。

 この時期の最重要課題は、自分の意思を汲んで代理人となって金融取引の判断をしてくれる「信頼できる人」を確保することだ。一般的には、自分よりも年齢の若い家族の誰かだろう。

 認知機能が衰えてきたら、こうした「信頼できる人」に金融取引の代理人になってもらう契約を結ぶと共に、いよいよ認知症と診断された場合には任意後見人に就いてもらう契約を作っておくといい。公証役場で正式な契約として成立させておく。こうした契約を「移行型の任意後見契約」などと呼ぶようだが、後日、後見の申し立てが行われた場合でも、本人の任意の契約が優先されるので、前もって予定した「信頼できる人」を後見人にすることができる。

 職業後見人が付く法定後見では、金融資産を使うことが不自由になるし、余計な費用(毎月2万円以上。預金額などに応じて家庭裁判所が決める)がかかるが、法定後見の予防措置として有効だ。本人の意思表示がはっきりしているうちに、手を打っておくべきだろう。

 なお、誰が代理人になって金融資産を管理するかについては、後に相続を巡って揉める可能性があるので、相続に関わる当事者間であらかじめ合意を形成しておくことが重要だろう。 移行型の任意後見契約は、任意後見に至らないまま、当該人物が本人の金融取引を代理する形で推移するケースが大多数のようだ。また、不動産のように活用したい対象資産がはっきりしている場合は、家族の間などで信託契約を結んで資産を活用していく方法もある。

 いずれの方法を取るにせよ、行うべき資産運用と資産取り崩しの方法は高齢前期と変わらない。単なる資産保全ではなく、資産の活用が大事だと強調しておく。