今週のFOMC、今後の利下げ時期を探る会合に

 米国の商務省が25日(木)に発表した2023年10-12月期実質GDP(国内総生産)の成長率は市場予想(2.0%)を大きく上回る年率3.3%の好結果でした。しかし、同時に発表された10-12月期コアPCE物価指数が前期比2.0%の上昇と弱かったため、債券利回りは低下し、米国の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)が望む理想的な動きとなりました。

 ただ、ドル相場は1ドル=147円台、148円台と方向感のない動きが続いており、ややドルの上値が重たい状況となっています。

 今週は30-31日のFOMC(米連邦公開市場委員会)、2月2日の米雇用統計と注目材料が待ち構えていますが、これらを受けて1ドル=150円に向かって進むかどうか注目です。

 FOMCの判断材料となる今月発表された12月のインフレ指数はいずれも上昇幅が縮小しました。CPI(消費者物価指数)(4.0→3.9%)もPPI(生産者物価指数)(2.0→1.8%)も前年同月比のコア指数(除く食品・エネルギー)は前月から伸びが鈍化しており、12月PCEコアデフレーター(個人消費支出物価指数<PCE>のコア指数<除く食品・エネルギー>)も前年同月比3.2%から2.9%に鈍化し、2021年3月以来2年9カ月ぶりに3%を下回りました。

 また、ミシガン大学の12月調査の1年先インフレ期待は3.1%となり、11月調査の4.5%から低下し、2021年3月以来の低水準となりました(1月調査も低下3.1→2.9%)。ニューヨーク連邦準備銀行による12月調査の1年先のインフレ期待も3.0%となり、11月調査の3.4%から低下して、2021年1月以来の低水準でした。これら12月のインフレ指標が示すように米国の物価は鎮静化の方向に向かっています。

 今週のFOMCでは政策変更なしとの見方が大勢ですが、これらインフレの減速を受けて、政策金利や量的引き締めなどのインフレ抑制策についてどのような判断を示し、インフレ状況や金融引き締めを緩めるような声明文の変更や示唆をするのかどうか注目です。

 12月のFOMCでは、FRBのパウエル議長は「政策金利はピークの可能性」、「利下げのタイミングを協議した」とハト派姿勢を示しましたが、今回もパウエル議長はこの姿勢を維持するのかどうか、あるいは早期利下げをけん制する発言をするのかどうかポイントです。

 FOMC後、ハト派のパウエル議長の発言に対して、一部の理事たちから「追加利上げの可能性を排除しない」、「利下げについて議論していない」などタカ派発言が相次ぎました。FOMC内での政策選択肢として、タカ派理事らが挙げる追加利上げが後退するのかどうか、そして利下げの議論が活発になるのかどうかが焦点です。今後の利下げ時期を探る会合となりそうです。

FRB、ソフトランディングの見通しなら、ドル安は限定的に

 FRBは今後の景気をどのように判断しているのかも関心を集めそうです。昨年10-12月期実質GDPの好結果が今年の1-3月期、4-6月期も続くのかどうか、すなわち、経済がそれほど悪化せず、インフレも沈静化が続くソフトランディング(経済の軟着陸)になると判断するのかどうか注目です。

 そのように判断された場合、利下げ開始時期は市場の期待よりも後ろ倒しとなり、利下げペースは緩やかになるとの見方が強まり、インフレ沈静化にもかかわらず、ドル安はかなり限定的になりそうです。

 一方で、先行きの政策金利の織り込み度を示す米CME(シカゴ先物取引所)のフェドウオッチ(FedWatch)によると、FRBが3月のFOMC会合で早期利下げに踏み切る期待は後退したものの、5月、6月、7月の会合で利下げをするのではないかと強い期待は続いています。

 3月利下げ確率は40%に後退しましたが、5月利下げは54%、6月再利下げは53%、7月再利下げは49%となっており、5月、6月、7月の利下げ期待は続いています。今年に入って、1月や3月の早期利下げ期待が後退し、その材料による円安進行は市場ではかなり織り込まれました。

 しかし、30~31日のFOMC後に、5月、6月、7月の利下げ期待があまり後退しなければ、現状のドル高水準からあまり変わらなそうです。

1月雇用統計は堅調維持するか焦点、過去分の下方修正も注意

 米労働省が2月2日に発表する1月雇用統計では、昨年12月に続き、労働市場が堅調なのかどうか注目です。12月は農業部門以外の雇用者数(NFP, Nonfarm Payroll)や失業率は予想を上回る好内容でしたが、1月も好調が続くのかどうか、大事な点です。

 そして、NFPの過去2カ月分の修正内容にも注意したいです。昨年の11月までのNFPは7月を除き全て下方修正されています。今回の下方修正が大きければ、1月分が好結果でもドル売りに転じる可能性があるからです。しかし、下方修正の規模が小さければ、経済のソフトランディング期待が高まることが予想されるため、ドル売りも限定的になることにも留意しておく必要があります。

 ちなみに、NFPの前月からの下方修正幅は8月分が6.2万人、9月分が3.5万人、10月分が4.5万人、11月分が2.6万人となっています。4カ月平均の下方修正幅は4.2万人となります。今回の修正対象月は11月分(17.3万人)と12月分(21.6万人)です。そして2カ月分合計の修正幅に市場は反応するため注意が必要です。

米幅広い業種で人員削減の動きも、2月以降の労働市場に影響

 米労働省が30日に発表した12月雇用動態調査(JOLTS)求人件数は、902.6万件と市場予想を上回りました。労働市場の堅調さがうかがえる内容だったことから、1ドル=147円台前半から147円台後半に円安が進みました。この好結果が2月2日の雇用統計にも反映されるのかどうか注目です。

 一方で、今年に入って米大手ハイテク企業の人員削減が活発化しています。これらの動きはコロナ禍後に大きくなりすぎた経費を削減して収益性向上を目指す動きか、それとも先行きの景気動向を懸念した動きなのか見極めたいです。人員削減の動きはハイテク企業だけでなく、物流大手のUPSや百貨店のメーシーズ、金融のシティグループなど幅広い分野で人員削減の動きが広がっています。人員削減は2月以降に労働市場に影響してくると思われますが、他分野で吸収できるのかどうか鍵になります。

 投機家動向として注目される米国CFTCの円のネット・ショートポジションは(1月9日時点)、5万5,949枚(NY終値:144.48円)となっており、昨年11月14日の13万249枚(NY終値:150.37円)から12月の円高局面で大幅に減少しました。その後の1ドル=148円台への円安局面では、1月23日(NY終値:148.37円)時点で7万645枚となっており、ショートを増やしていますが、まだ円売り余地があるとみるのか、円ショートの増加ペースに勢いがないとみるのか見方が分かれるところです。