米金融政策への警戒感が継続、日経平均は昨年来安値を大きく更新

*記事内の数値は掲載時2022/02/17のデータです。最新情報は楽天証券ホームページより必ずご確認ください。

 直近1カ月(2022年1月14日~2月10日)の日経平均株価は1.5%の下落となりました。1月25日には2021年8月20日に付けた昨年来安値2万6,954円を割り込み、1月27日には一時2万6,044円まで下落、2020年11月以来の安値水準まで調整しました。

 その後は短期的な突っ込み警戒感から押し目買いや買い戻しが優勢となり、2月10日には年初来高値から安値までの半値戻しを達成しています。

 より強烈な下げに見舞われているのはマザーズ市場で、マザーズ指数は年初からの下落率が一時27.2%にまで達し、その後の戻りも日経平均と比較して鈍い状況です。

 年初からのインフレ懸念の強まり、それに伴う金融引き締め策の強化に対する懸念が継続したことが、1月後半にかけての株価下落の背景となっています。とりわけ、1月25~26日のFOMC(米連邦公開市場委員会)を控えていたことで、こうした警戒感は強まった印象です。

 また、FOMC後の会見においても、パウエル議長の発言は想定以上にタカ派的なものとなり、株価下落が金融引き締めペースを緩和させるといった期待は後退する形にもなりました。

 ちなみに、このタイミングでは、ウクライナ情勢の緊迫化といった地政学リスクの高まりも表面化しました。

 安値示現後は、短期的な突っ込み警戒感も強まって、先行きの不透明感を伴いながらもリバウンドに転じています。ここに関しては特に、10-12月期の決算発表が本格化する中で、米主要企業の相次ぐ好決算発表が支えになった印象が強いです。

 この期間の下落率上位銘柄は、引き続きグロース株が占める状況となりました。グロース株の代表格であるレーザーテック(6920)は20%超の下落、ネガティブインパクトは限定的でしたが、決算発表後に下げが加速しました。

 また、決算がネガティブなサプライズとなったメルカリ(4385)の株価急落はマザーズ指数の下落に大きく影響しました。

 ほか、10-12月期決算発表が本格化する中で、日本電産(6594)オムロン(6645)太陽誘電(6976)などの大手テクノロジー株で大幅安となるものが多く見受けられました。

 一方、上昇が目立った銘柄は、アフターコロナ関連です。OLC(4661)HIS(9603)ラウンドワン(4680)空港ビル(9706)パーク24(4666)日本航空(9201)などが上昇率上位に名を連ねています。

 電源開発(9513)は決算低調な電力株の中にあっての際立った好業績が評価材料にされました。

米金融引き締め策は大方織り込む。3月配当権利取りの意識から高利回り銘柄に関心

 2月10日に発表された米国1月の消費者物価指数は、市場予想を上回る前年同月比7.5%の上昇となり、伸び率は約40年ぶりの大きさとなっています。

 これを受けて、米国の年内利上げ回数見通しの引き上げ、3月FOMCでの0.50%の利上げ実施などが織り込まれる状況になりつつあります。

 今しばらくは不安定な相場展開が続く可能性もありますが、米金融政策に関してはかなり悲観的なシナリオを織り込みつつあると考えられ、一段の過度な下落にはつながりにくいとみられます。

 一方、北京オリンピック後の国際情勢の変化などはリスク要因として残ります。ウクライナ情勢の緊迫化や米中の貿易摩擦再燃などが強まる可能性はあるでしょう。

 10-12月期の国内企業の決算はおおむね底堅いものであったと評価できますが、半導体など原材料の調達不足に加えて、原材料費の上昇、運送費の上昇などのコストアップが大いにクローズアップされる状況ともなっています。

 ただ、原材料費や運送費の上昇は、今後は製品価格への転嫁が進むことで、企業収益のマイナス要因としては解消されてくる企業が多くなりそうです。

 最終需要の多寡が価格転嫁の成否を決める企業も多くなることから、今後は選別の動きも重要となってきそうです。やはり、BtoC企業は相対的に十分な価格転嫁が進めにくくなる可能性があるでしょう。

 なお、部材調達不足や原材料費・運送費の上昇は新型コロナの感染拡大に起因しているものが多いとみられ、感染者数の沈静化に伴って、悪影響は軽減されてくると考えます。インフレ自体の落ち着きにもつながる公算もあるとみます。

 大幅な株価調整を強いられているグロース株は、今後も需給波乱の可能性が残り、本格的な反騰に入るには時間を要する可能性があります。

 相対的に株価上昇をけん引するのはバリュー株とみられ、なかでも、3月末の配当権利取りが意識されてくるタイミングであるため、高配当利回り銘柄には関心が向かいやすいとみられます。

 ほかでは、旅行関連を中心としたリオープニング関連銘柄にも期待したいところです。国内感染者数のピークアウト感が鮮明化してくれば、景気対策として即効性のあるGoTo政策への思惑が強まっていくでしょう。

 秋の参院選を控えるなかでの景気対策としては最も有効なものになり得ます。ピークアウトを織り込む局面は近いと判断されます。10-12月期決算が一巡すれば、来期業績の織り込みも進み始めるでしょう。

 その際には、半導体調達不足が想定以上に長期化している状況ですが、その後の挽回生産拡大の余地が大きい自動車関連が注目されるとみられます。

株価調整場面はNISA投資の好機。高配当利回り銘柄はNISAでの有望な投資候補に

 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)投資の特徴として主に考えたいこととして、(1)キャピタルゲイン課税が発生しない、(2)インカムゲイン課税が発生しない、(3)NISA以外の口座で発生した利益と損益通算ができないことなどが挙げられます。

(1)に主眼を置くのであれば、リスクをとったうえで、短期の値ざや稼ぎを狙うことも一考でしょうが、もともとは個人投資家の長期投資を促す政策であり、そもそも年間の投資上限が120万円でもあるため、大きなリスクを取らず、長期的に着実な運用を目指すべきものであると考えられます。

 着実な収益の獲得という意味では(2)も重要な要素となり、NISA投資では高配当利回り銘柄に優位性が高いといえるでしょう。

 また、最も重要なことは(3)から考えてみても、投資した銘柄のキャピタルロス(値下がり)を避けることといえます。この観点からいうと、2022年の初めから株式市場が大きな調整を余儀なくされた現局面は、NISA投資にとっては好機とも考えられるでしょう。

 なお、NISA投資の対象銘柄として、個人投資家が売却しにくい株主優待実施企業などが挙げられていますが、主要企業においては、株主優待の恩恵が少ない機関投資家の売買の影響が大きいこと、東証再編に伴い個人投資家数の拡大を目的とした株主優待は今後減少していくとみられることなどから、優待銘柄に投資対象を絞る必要性は低いと考えます。

 今回取り上げる5銘柄は、(1)東証1部上場企業で最低購入額が120万円以下、(2)時価総額が1,000億円以上、(3)今期予想を含めたここ5期間の年平均営業利益成長率が8%以上、(4)日経平均が直近の高値を付けた2021年9月14日から2022年2月10日までの株価下落率が10%以上の銘柄、(5)配当利回りが3%以上のものです。

(3)に関しては、相応の値上げ利益を期待するには、利益成長力の高さを考慮する必要があるためです。

(4)に関しては、株価調整が進んだ銘柄と考えることができ、(5)に関しては、インカムゲインの非課税メリットが大きいほか、割安感から株価の下値リスクが小さい銘柄と捉えることもできます。

NISA投資で妙味の大きい高配当銘柄

コード 銘柄名 配当
利回り
株価 時価
総額
株価
騰落率
年平均
営業利益
成長率
3003 ヒューリック 3.65 1,095.0 8,409 ▲ 22.0 13.9
3107 ダイワボウHD 3.41 1,759.0 1,695 ▲ 19.0 17.7
5741 UACJ 3.65 2,327.0 1,125 ▲ 24.2 14.1
8425 みずほリース 3.30 3,330.0 1,632 ▲ 13.3 10.8
9069 センコーグループHD 3.43 933.0 1,427 ▲ 12.8 8.1
注:配当利回り、株価騰落率、年平均営業利益成長率の単位は%、時価総額の単位は億円。
株価は2022年2月10日終値、単位は円。
注:株価騰落率は2021年9月14日から2022年2月10日まで
注:年平均営業利益成長率は今期予想を含めて5年間

銘柄選定の要件

  1. 東証1部上場企業で最低購入額が120万円以下
  2. 時価総額が1,000億円以上
  3. 今期予想を含めたここ5期間の年平均営業利益成長率が8%以上
  4. 日経平均が直近の高値を付けた2021年9月14日から2022年2月10日までの株価下落率が10%以上の銘柄
  5. 配当利回りが3%以上

ヒューリック(3003・東証1部)

▼どんな銘柄?

 東京23区を中心としたオフィス・商業ビル・ホテル・老人ホームなどの「不動産賃貸」を中核事業としています。東証1部上場の不動産セクター内で、経常利益の水準はベスト5圏内にあります。

 銀座・有楽町エリアや渋谷・青山エリアなど、首都圏の駅近・好立地に多くの物件を保有しており、保有物件の空室率は1%以下になっていることが特徴です。都市型中規模コンパクト商業施設である「HULIC&New」シリーズの展開を積極的に行っています。

▼業績見通し

 2021年12月期営業利益は1,145億円で前期比13.8%増益となっています。賃貸事業、不動産売上ともに増加しています。賃貸など不動産の含み益は2021年12月期末で3,646億円、前期末比116億円の増加にもなっています。

 2022年12月期営業利益は1,230億円で同7.4%増益の見通しです。海外投資家などの旺盛な投資意欲と低金利などを背景に、安定した不動産市況が続くと見込んでいます。

▼ここがポイント

 上場後は連続しての増配を行っており、2022年12月期年間配当金も前期比1円増配の40円を計画、配当利回りは3.7%の水準となっています。

 また、2022年12月期営業利益の水準は、5年前の2017年12月期642億円から91.4%増加する水準です。この期間は連続増益基調が続く形になっています。

 なお、現在の株価1,095円は、昨年9月14日の高値から22.5%下落した水準にあります。公募増資を実施したことが株価下落の一因になっています。

ダイワボウHD(3107・東証1部)

▼どんな銘柄?

 ITインフラ流通事業が現在の主力となっています。独立系のマルチベンダーとして、PCをはじめ世界中のメーカー約1,300社の商品・サービスを販売しています。全国93拠点での地域密着型営業によるパートナー企業との協業体制が強みになっています。

 合繊・レーヨン、産業資材、衣料製品を扱う繊維事業、工作機械や自動機械を扱う産業機械事業なども展開しています。産業機械では、中・大型の立旋盤で国内シェアトップです。

▼業績見通し

 2022年3月期第3四半期累計営業利益は149億円で前年同期比29.8%減益となっています。

 ITインフラ流通事業において、半導体不足などにより一部の商品がひっ迫し複合提案が難航したこと、GIGAスクール構想に伴う端末出荷の反動減などが、減益決算の背景とみられます。

 通期は285億円で前期比18.6%減益の予想となっています。年間配当金は実質前期並みの水準を計画しています。なお、中期計画では、2023年3月期は横ばい程度の水準を見込んでいます。

▼ここがポイント

 2022年12月期年間配当金は、株式分割を考慮すると前期比横ばいの60円を計画で、配当利回りは3.4%の水準となっています。また、2022年3月期営業利益は、5年前の2017年3月期126億円から2.3倍となる水準です。

 前期までは着実な増収増益基調が継続する形になっていました。なお、現在の株価1,759円は、2021年8月の高値から24.5%下落した水準にあります。IT関連銘柄として、年初からのグロース株安にツレ安する状況にもあるようです。

UACJ(5741・東証1部)

▼どんな銘柄?

 古河スカイと住友軽金属が2013年10月に経営統合して誕生しました。アルミニウム圧延品の生産能力は年間100万トン超の規模で、世界トップクラスの規模となっています。

 アルミ板の品種別では缶材が主力で自動車材なども多くなっています。自動車材では、高温成形用アルミニウム合金を開発したほか、国内トップシェアを誇る熱交換器材、世界でも数社しか生産できないコンプレッサホイールなどを提供しています。

▼業績見通し

 2022年3月期第3四半期累計経常利益は360億円で前年同期比366億円の損益改善となっています。在庫評価益の影響が大きく寄与しましたが、それを除いたベースでも、156億円で同7倍近い増益率となっています。

 タイや米国の缶材が引き続き増加しているほか、自動車などの輸送用機械向けも需要が回復しています。通期では400億円で前期比6.7倍の見通し、従来予想の250億円から大幅に上方修正しています。

 在庫評価益の影響を除いたベースでは、180億円で前期比2.9倍の水準となります。

▼ここがポイント

 2022年3月期年間配当金は85円の計画で、前期無配からの復配となります。配当利回りは3.7%の水準となります。会社側では長期的な総還元性向は30%以上を目標としています。

 また、2022年3月期営業利益の水準は、5年前の2017年3月期259億円から65.5%増加する水準です。2022年3月期は在庫評価益で押し上げられる面も大きいですが、中長期的には自動車軽量化の流れが収益拡大を後押しする公算です。

 なお、現在の株価2,327円は、昨年9月14日の高値から25.3%下落した水準にあります。足元では第3四半期決算がマイナス視される形で、やや調整する状況になっています。

みずほリース(8425・東証1部)

▼どんな銘柄?

 みずほフィナンシャルグループの持分法適用会社となるリース大手企業です。2021年3月期末営業資産残高は2兆3,224億円、バランスの取れた資産ポートフォリオとなっています。

 丸紅ともリース・ファイナンス事業における提携関係にあります。設備投資に対する財務ソリューションに強みを持ち、船舶・鉄道車両のリースや建設機械のベンダーファイナンスプログラムなど、他社に先駆けた取り組みなども多く行っています。

▼業績見通し

 2022年3月期第3四半期累計営業利益は177億円で前年同期比0.3%減益となりました。航空機関係の案件に係る信用コスト計上などもありましたが、不動産分野の好調などで契約実行高が第3四半期に入って急速に改善、前年並み水準に落ち着いています。

 通期計画は300億円で前期比15.5%増を据え置いています。年間配当金も前期比18円増配となる110円を維持しています。

▼ここがポイント

 2022年3月期で17期連続での増配となります。配当利回りは3.3%の水準であり、連続増配企業にあって利回りは高水準といえます。

 また、2022年3月期営業利益の水準は、5年前の2017年3月期180億円から67.0%増加する水準です。コロナ禍における航空機分野の悪影響を吸収し、足元でも底堅い推移といえるでしょう。

 なお、現在の株価3,330円は、昨年9月14日の高値から13.4%下落した水準にあります。上半期決算発表後に下落し、その後の戻りも鈍い状況です。

センコーグループHD(9069・東証1部)

▼どんな銘柄?

 物流業界大手の一角です。総合スーパー・ドラッグストア・ホームセンター・アパレルなどの流通業界に強みを持っているほか、住宅・建材業界、化学製品などケミカル業界の顧客を中心に物流事業を展開しています。

 全国規模で低温物流のネットワークを構築していることも特徴になります。石油販売、商事販売、貿易などの商事事業、情報システムや人材派遣などビジネスサポート事業も行っています。

▼業績見通し

 2022年3月期第3四半期累計営業利益は204億円で前年同期比17.0%の増益となっています。燃料単価上昇のマイナス影響はありましたが、食品物流やケミカル物流を中心にコロナ禍からの売上回復がみられ、コスト改善・生産性向上効果なども増益に寄与しました。

 通期予想は252億円で前期比17.1%増益を据え置いています。年間配当金計画も前期比4円増の32円を維持しています。

▼ここがポイント

 配当利回りは3.4%の水準となっています。また、2022年3月期営業利益の水準は、5年前の2017年3月期171億円から47.5%増加する水準です。

 安定した増益基調が続いている状況ですが、今期はこれまでのトレンドと比較して増益率は高まる見込みになっています。

 なお、現在の株価933円は、昨年9月14日の戻り高値1,074円から13.1%下落した水準にあります。上半期決算時には上方修正を行っていますが、出尽くし感が優勢となり、その後の戻りも鈍い状況です。